第百二十六話 チャージエレメント
「うわあぁぁぁぁっ!」
「おおおおぉぉぉぉっ!」
神様が尻餅をついたところのプレイヤーが消える。
死んだんだろう。
でも、そこにこぞって攻撃が集中していた。
「今がチャンスです!」
「やれーっ!」
確かにチャンスだ。
あれをやってみようかな。
わたしは、装備をティタニススタッフに持ち替える。
「<ヘイスト>」
「<チャージエレメント>」
これは、最大10段階溜められる魔法スキルだ。
それで威力が10倍になるみたいだけど、今まで使ったことがなかった。
上級職であるドルイドの魔法なのに、10回溜めて、10倍というのは弱すぎる。
多分だけど、10倍というのがダメージ計算式のどこにかかるのかとか、元の威力がどうなのかとか、使い難いけど強い魔法なはずだった。
魔法の威力が、どんどんたまっていく。
「チャージエレメント2」
みんなは、怯まずに、一斉に襲いかかっていた。
蒼天騎士団も、レッドプレイヤーも関係なく襲いかかっている。
ボスも、ただやられているだけではなくて、尻餅をついた状態から、手足でプレイヤーを潰していた。
ただ、それで攻撃が止むことはなく、波状攻撃を仕掛けている。
「チャージエレメント3」
ボスが起き上がった。
わたしを、赤い眼で睨んでくる。
ヘイトは、まだわたしに向いているようだった。
もしかして、チャージエレメントがすごいヘイトを稼ぐのかも知れない。
それはそれで、今後の使い方も変わってくるというものだ。
「チャージエレメント4」
ヘイストが良く利いている。
チャージエレメントと、すこぶる相性のいい魔法だった。
神様は、地上から、数え切れないほどの攻撃を受けているのに、ずっとわたしを睨んでいる。
向こうも、なにか溜め攻撃をしているのかな?
そんな風には見えないけど、予備動作を見せるような難易度のボスじゃないのかも知れない。
そう思っていたら、ボスの周りに雷の波が発生した。
周りが1000人単位で吹っ飛んでいく。
「チャージエレメント5」
しかし、そこはすぐに代わりの前衛で埋められた。
士気は全く落ちていない。
バードの歌が、勇猛さを上げているようだった。
確かに、ちょっと異常なくらい士気が高い。
戦いの興奮もあるんだろうけど、バードの歌の効果もありそうだった。
「チャージエレメント6」
やはり、チャージエレメントは、すごくヘイトをもらうようだ。
神様が、わたしに向かって突っ込んでくる。
走る衝撃に稲妻が乗って、一直線にプレイヤーが倒れていた。
防御力が弱いと、一撃でやられてしまうようだ。
でも、わたしは、それを高く飛ぶことによって回避した。
「チャージエレメント7」
上空高く、真上から見てみると、レッドプレイヤーの赤のオーラがあんまり見えない。
蒼天騎士団と混ざってしまうと、余計にわからなかった。
地球は青かったと、偉い人が言ったとか言わないとか聞いた事あるけれど、そういうことなのかもしれない。
いや、レッドプレイヤーに殺された人とか、アイテムを奪われた人の無念は別問題だけど。
「チャージエレメント8」
神様が、周りを踏みつぶして走っている。
その度に雷が発生して、二次被害が出ていた。
どうにかして、わたしに近づこうとしているんだけど、空高くにいるプレイヤーを攻撃はできないみたいだ。
星を掴もうとした童話があったような気もするけど、正にそんな感じだった。
「チャージエレメント9」
わたしに向かって、神様が杖を投げてくる。
なんて人間くさい動きなんだろうか。
わたしは、それを難なく避ける。
そして……。
「チャージエレメント10」
わたしの周りに、ものすごい圧力の精霊が集まってきていた。
風も火も土も水も光も闇も、色々な精霊達だ。
これは、10倍じゃ済まないだろう。
闘技場で、どれくらいダメージが出ているのか、検証しても面白いかも知れない。
「じゃあ、やるよ <チャージエレメント>」
静かに発したわたしの言葉に、凝縮された精霊達が飛び出していく。
ぱんぱんの水が、小さな口から飛び出るような勢いで。
真上から、神様に向かってそれがぶつかった。
神様の頭が身体にめり込み、潰れていく。
グロ……。
そう思った瞬間に、ボスが電子の藻屑と消えていた。
なにか、ドロップをゲットする。
宝箱が、ふたつ落ちた。
わたしは、そのまま地上に下りていく。
そこで、わっと歓声が鳴り響いた。
「うおおおぉぉぉぉぉっ! 勝ったぞぉぉぉぉぉっ!」
「やりやがったぁぁぁぁぁぁあっ!」
そこに、アシステルさんが走って来る。
そして、わたしに抱きついてきた。
「すごいよ砂緒! 最高だ!」
前に見たときよりも素直な感じかな。
これも、バードの歌のおかげだろうか?
でも、レッドプレイヤーにこうされるのは、なんだか変な感じだった。
「さあ、宝箱を開けましょう」
アシステルさんと同時に宝箱を開ける。
すると、中には、ギルド金貨が1000枚入っていた。
「ギルド金貨1000枚きたぞー!」
「うおおおおぉぉぉぉぉっ!」
なんか、変な盛り上がりをしている。
まだ、ギルド金貨の使い道もわからないのに。
わたしは、居心地の悪さを覚えながらも、不器用に笑って、手を振っていた。
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