第百二十四話 敵の援軍
砦の裏側に現れたドラゴンは、遠くからブレスを吐いてくる。
「ぎゃあぁぁぁっ!」
砦を取り囲んでいたレッドプレイヤーが焼かれていた。
うーん、ナイス。
でも、砦が壊されてしまうのは困る。
なんとかしないと。
「今がチャンスですよ! ドラゴンに砦を攻撃させなさい!」
レッドプレイヤーの指揮官だろうか。
割と歳のいったおじさんが叫んでいた。
どっかで聞いた声だけど……。
あ。
カタコンベでギルド員を勧誘していたおじさんだ。
独裁国家のエージェントが、なんで砦を襲っているんだろう?
経験値稼ぎ?
まぁ、イベントに参加しておいた方が後々まで考えて、お得だろうけど。
それにしても、最終的に、1000人も人を集めることができたみたいだ。
おじさんとしては、大成功なんじゃないだろうか?
リサのお兄さんも、アラブの王子様も、1000人は集められていないだろう。
それとも、お金の力で、1000人くらい社員や家来を参加させてるかな?
滅茶苦茶な話だよね。
「援軍を要請します!」
おじさんがどこかに援軍を頼んでいる。
2000人対1000人だから、倍の戦力差がある。
砦から攻撃できるのも、こちらが有利な点だった。
「アシステルさんのところだとまずいかな?」
何千人って来ちゃうだろう。
わたしは、壁から飛び下りて、戦っている名塚さんのところに行った。
「名塚さん、レッドプレイヤーが援軍を呼んでるよ」
「本当ですか!? なら、蒼天騎士団も全力で行くしかありませんね!」
今日は日曜日だから、プレイできる人は多いだろう。
他の砦4つに、2000人以上いるはずだ。
「砦に出ているメンバーを全員集めます!」
六ヶ所の交番に100人ずついるから、その人達もいれると2600人だ。
相手がどれくらいの規模なのかわからないけど、総力戦になる。
「スナオ! ドラゴン倒して! 保たないヨ!」
突撃していたエミリーが帰ってきた。
割とズタボロだ。
最前線で戦っていたら、危ないと思う。
「今、援軍を呼んでいます!」
「どうしたノ?」
「カタコンベでギルド員を集めていたおじさんが、援軍を呼んでるみたい」
「アシステルのところかな? ヤバイネ」
10000人とかは来ないと思うけど……。
「取りあえずはドラゴンだね、やってみるよ」
「頼むヨ!」
なるべく目立たないように、門の内側に入ってから壁を上る。
そこに、ずしーんと重く砦が響いた。
ドラゴンが壁に突撃してきているんだ。
わたしは壁を登り切ると、そっちの壁まで走っていった。
「…………」
ドラゴン、大きいなぁ。
目つきも狂暴だ。
黒いドラゴンだから、光属性に弱いかな?
「砂緒ちゃん!」
みんながドラゴンから離れていく中、こっちに走ってくる人がいた。
「優!」
「私も手伝うよ!」
「お願い!」
持つべきものは友だというけど……ちょっと身に染みた。
コミュ障を治すのを、二十歳までの目標にしよう。
「<ブレス>」
一気に強くなるのを感じる。
やっぱり、優のブレスは特別感があった。
「<インサイト>」
そして、ドラゴンに弱点倍化をかけてくれた。
よし、やれるぞ。
「<ファナティシズム>」
「<分身>」
「<グランディア>」
わたしは壁から飛び降りながら、ドラゴンに一撃を食らわせた。
分身して二回攻撃の大剣で、グランディア×4だ。
ドラゴンに当たった剣に、ガシッと手応えがある。
これは、かなりダメージが乗った手応えだ。
グランディアの威力が、加護のパワーアップで更に増している!
「ガアアァァァァァァァァァァッ!」
ドラゴンは、カッと光ると、そのまま消えていった。
ドロップをゲットする。
3000人くらいだから、初めに戦ったクモの方が強かったのかも。
宝箱は他の人に任せよう。
そこに、声が響き渡る。
「敵の援軍だー!」
早い。
もう来たの!?
あらかじめ、約束を取り交わしていたのかも知れない。
砦を渡しておいて、すぐに来られるように……。
わたしは、ウイングブーツの効果で空中を歩く。
「…………」
すごい数の援軍だった。
5000人くらいはいると思う。
アシステルさんで間違いないだろう。
でも、蒼天騎士団の援軍も集まってきていた。
数は、こちらがやや不利くらいだろうか?
砦を盾に戦えるから、その分で互角かな?
どちらにせよ、苛烈な戦いが始まることは、間違いなかった。




