第百二十三話 ギルマスの士気効果
レッドプレイヤーが、砦に攻めてきた。
どうする?
もちろん、戦うしかないんだけど……。
「今、ギルドアジトには2000人程いると思います」
近くの砦4つに500人ずつ。
遠くの砦7つに100人ずつだから、残っているのはそのくらいだろう。
在駐するプレイヤーが少なければ、襲ってくるモンスターも弱くなるんだから、守備は大丈夫だ。
「2000人で行こウ、行きたい人に声をかけて」
わたしだったら、1500人で行こうとか言いそうだけど、最大戦力を投入するのが正しい気がする。
それで、すぐに戻って来ればいいんだ。
「ヤニックさん」
「わかったよ、すぐにみんなに声をかけてくる」
「レッドプレイヤーが、蒼天騎士団の砦に攻めてくるなんて! 燃えますね!」
「まぁ、相手からすれば、戦力が整う前に叩きに来たって感じかナ」
そう考えると、こっちから仕掛けたとも考えられる。
「じゃあ、行こう!」
「はい!」
そして、希望者2000人ちょっとの人間で、襲われている砦にポータルした。
「巨人には20人で当たれー!」
「レッドの奴らに門を突破されるなよ!」
砦は喧噪に満ちていた。
レッドプレイヤーだけじゃなくて、モンスターも襲ってきているみたいだ。
「急ぎましょう」
「うん」
急いで建物の中から出る。
「救援に来ました! もう安心して下さい!」
「援軍だ! 援軍が来たぞー!」
「うおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!」
なんか、もう戦争みたいだなぁ。
千人単位で斬り合うんだから、もうほとんど戦争だけど。
「砦は狭いので、門を開けて突撃しましょう!」
「門を開けろー!」
門がゴリゴリと開いていく。
その向こうには、赤いオーラを身に纏った怖い人達が大勢いた。
1000人のレッドプレイヤーなんて、少数ギルドだったら怖いだろうなぁ。
「行くゾー!」
「おおおおおおおぉぉぉぉっ!」
なぜかエミリーが指揮を執るみたいに先陣に立っている。
「後衛は壁の上から戦いましょう!」
こっちもこっちで、優が声をかけていた。
そして、わたしは何もしていない……。
門が開くと、エミリーが突撃していく。
「突撃ィー!」
「つづけー!」
魔法使いの名塚さんも、なぜか一緒に突撃していった。
大丈夫かなぁ。
わたしは、壁に上がって全体を見てみる。
砦をぐるっと一週、レッドプレイヤーが取り囲んでいて、その一角に毛がもさもさの巨人が居た。
これがイベントのモンスターだろう。
エミリー達は、数的有利を作りつつ、レッドプレイヤーに攻撃を仕掛けていた。
突然の援軍に、レッドプレイヤーは戸惑っているようだ。
そして、壁の上からも攻撃が開始される。
こっちは大丈夫そうかな?
わたしは、まず、モンスターを倒そう。
壁の上を走ると、巨人の前まで行く。
顔がものすごくでっかい巨人だった。
どれくらい強いのか、全くわからない。
100人いた砦だから、そんなに弱くないはずだけど、17階層のボスよりは弱いだろう。
もしかしたら、これを20人で倒すのは、難しかったかも知れない。
「おぉぉりゃぁぁぁっ!」
でも、なぜかレッドプレイヤーも、巨人と戦っている。
これは、横殴りかな?
他のプレイヤーがタゲを取っているときに、横から安全に攻撃して経験値とドロップを得るやり方だ。
さすがはレッドプレイヤ-、なんでもありだぜ。
よし、一気に倒そう。
ティタニススタッフに装備を持ち替える。
「<エレメンタルポテンシャル>」
「<分身>」
「<アトミックエクスプロージョン>」
これは、ティタニススタッフのユニークスキルだ。
相当高レベルの魔法だと思う。
爆発の熱と衝撃で視界が揺らぐ。
そして、巨人と、周りにいたレッドプレイヤーは消し飛んでいた。
加護がパワーアップして、強くなってるかな?
「ギルマスだー!」
「え?」
突然の声に驚く。
ギルマスって、わたしのこと?
アトミックエクスプロージョンで、わたしが居るってわかったの?
「ギルマスが来たぞー!」
「もう何も怖くねぇー!」
なんか、みんなの士気が上がっている気がする。
「うおおおぉぉぉっ! ギルマスだぁぁぁ!」
いや、ちょっと怖いんですけど……。
そこに、更にモンスターが沸いてきた。
滅茶苦茶強そうなドラゴンだ。
この砦に、3000人から集まってしまっているから、強いのが現れたんだろう。
もしかして、レッドプレイヤーはこれが狙いだった?
だから、先に現れていた100人分の巨人を倒そうとしていた?
まぁ、いいや。
わたしは、次の手を考えていた。




