第百十九話 交番を作る
イベント二日目になった。
朝から何度も戦って、今は一息吐いているところだ。
ギルドマスターの部屋で、優とエミリーとおしゃべりしている。
すると、そこに名塚さんがやって来た。
「ギルドマスター、報告があります!」
「え、普通に名前で呼んでよ……」
「ギルドマスターですから、そう呼びますよ」
いつもは一橋さんって呼んでくれるのに……。
なんか、ヒーローごっこ的な、ものがゆさを感じる。
「ギルドレベルが2になりましたので、新たに1000人の団員を受け入れました」
イベント前には、もうギルドレベルが2になっていた。
それで、朝から団員の募集をしていたんだろう。
「速攻だね」
「もちろんです!」
「というか、イベントで敵を倒しているから、明日にはギルドレベルが3になりそうだよ」
「そうしたら、また受付ですね! どんどん組織が広がっていくこの感覚、うーん、充実しています!」
「ハヅキは、いい経営者になれそうだネ」
「でも、葉月ちゃんは、頑張り過ぎるところがあるかなぁ……」
それは、わたしも思う。
思い込んだら一直線だ。
「今頑張りたいんです! 今を逃してなるものかという気持ちですよ!」
わたしは、会社経営に向いてないのか、ピンと来ない。
まぁ、蒼天騎士団が大きくなって困る人は居ないから、いいんだけど。
「ギルドアジトや砦に出現するモンスターは、在駐している人数によって、強さが変わるということがわかりました」
「ホー、そうなんだネ」
「じゃあ、砦の方に強いモンスターが現れることはないんだ」
それなら、少人数ギルドで大変なことになることもなさそうだ。
逆に、蒼天騎士団のギルドに、あまり弱いのが来ても仕方が無いし。
「それじゃあ一点集中する? それとも分散?」
「分散する方向で行こうと思います、今、各砦に500人くらいを配置しています」
「500人で、強いモンスターが出るということ?」
「はい、対応出来ないくらい強かったら、連携を取って、援軍を回す仕組みです」
砦と砦にはポータルがあって、同じギルド内なら行き来できることがわかった。
すぐに対応出来るだろう。
「レッドプレイヤーが出ているらしいけど、なにか相談とか来てる?」
「はい、助けて欲しいという要望はあるのですが、ギルドの位置関係などがわかっていないので、駆けつけることができない状態です……」
「そうだよねぇ、このフィールドがどこまで広いのかもわからないし」
SOSが来ても、走って1時間の場所にギルドアジトがあるんだったら、間に合わない。
うーん、それなら……。
「じゃあさ、交番を作ってみない?」
「交番……ですか?」
名塚さんは、首をかしげている。
ちょっと伝わらなかったか。
「砦と砦はポータルできることがわかったでしょ?」
そこで、ピンと閃いたのか、顔が明るくなる。
「砦を、ものすごく増やすということですか!?」
「求めるギルドがあるなら、その近くの砦をもらって、すぐに駆けつけられるようにしてもいいんじゃないかな」
「大きなレッドプレイヤーのギルドは、どこにあるのかわかってきています、その近くの砦をもらってもいいかも知れませんね」
まぁ、そんな立地なら、引っ越した方がいいとは思うけど。
「レッドプレイヤーは、範囲を広げられないけど、わたし達は広げられるから、人数で負けなければ、対応出来そうかな」
「至急、アンドレアさんと打ち合わせてみます!」
そう言って名塚さんが部屋から出ていった。
アシステルさんと話ができるから、余程困ったら相談してみよう。
でも、レッドプレイヤーも色々いるから、少人数で集まっているギルドとかは、アシステルさんでも抑えられないだろう。
まぁ、なるようになれだ。
「多分だけど、戦うのは、イベント期間だけだろうからネ」
「そうなの?」
「イベントが終わったら、このフィールドは、多分pvp禁止エリアになると思うヨ」
「そうだよねぇ、ギルドアジトにいたら、レッドプレイヤーに襲われるなんて、安心して遊べないもんねぇ」
全くその通りだ。
ギルドダンジョンとかファームとか、企画倒れになってしまう。
「全部、pvp禁止エリアにしちゃえばいいのにね」
「多様性だよ、スナオ。運営のビジョンの中に、こういう遊び方も想定されていたんでショ」
「何でも自由にできるとか、キャッチコピーがあったけど、そんな自由度は、私も要らなかったかなぁ」
「いい人も悪い人も受け入れてくれる、懐の深いゲームだよネ」
洋ゲーだと、割と無茶苦茶をするゲームがある。
あのノリなのかー。
まぁ、いいや。
「そろそろ、敵が出て来るかな?」
昨日から結構戦ってきたけれど、いつもの戦闘じゃなくて、拠点を守る戦いというのも面白かった。
「じゃあ、また行ってみル?」
「よし、行こう!」
大きなボスが色々出て来て、わたし達は、それをたくさん倒した。




