第百十七話 領地を広げていく
接収した砦から、真っ直ぐ南に行く道を進んでいく。
「ギルドアジトから砦まで、真っ直ぐ歩いたら5分くらい?」
「そうですね、そのくらいだと思います」
「じゃあ、走ったら2分?」
「そう考えると、近いね」
先の話だろうけど、ギルド間戦争とかあるんだろう。
そのときに、この砦が役に立ってくれるのかも知れない。
「あっ!」
先に見えている砦に、敵が現れた。
防壁を攻撃している。
あのクモみたいな大型ではない。
中型? って言うのも変だけど、サメみたいな魚型のモンスターが空に浮いている。
「よし、やろウ!」
「一橋さん、4人しかいないので、全力でやってください!」
「そ、そう言われても……」
名塚さんが、ウキウキとした目でわたしを見ている。
ヒーローに見えているのかな……ちょっと不安な瞳だ。
ど、どうしよう。
砦に、闇の精霊がいるからフォールダウンは使えるみたいだ。
武器を、ティタニススタッフに持ち替える。
「行ってくるよ!」
わたしは、走ってサメの近くに行く。
「<エレメンタルポテンシャル>」
「<分身>」
「<フォールダウン>」
「ヒギイィィィィン!」
なんか変な断末魔の絶叫を残して、サメが倒れた。
そんなに強くないモンスターだったんだろう。
「やりました! さすがはギルドマスターです!」
みんなも追いついてくる。
「わたし、なんかもらっちゃった!」
「なニ?」
「えーとね、☆5の兜だよ」
現物のドロップはレアだ。
大体ガチャ券の方が多い。
「おめでとうございます!」
「おめでとう!」
「おめでとウ!」
「ありがとー」
サメは宝箱を落とさなかった。
やっぱり、弱いモンスターなんだ。
それにしては、☆5装備を落とすなんて気前がいい。
やっぱり、イベントは戦力アップの基本なのかも知れない。
「フォールダウンは、自分の周りにしか使えないノ?」
「うん、わたしの真上から降ってくるみたいな感じ」
「ホー」
そして、砦の門を見てみる。
この砦も、紋章が入っていない砦だった。
「ここも傘下に収めましょう」
「そうだネ、さっきの砦から東西南にある砦をゲットしておこウ」
結晶が置いてある部屋を探して、この地域を治めると返事をする。
ギルマス以外でもできるのか試すために、エミリーがやったけれども、問題なく接収することができた。
「またモンスターが襲ってくるかも知れません、100人くらい率いて、アンドレアさんに来てもらいましょう」
「そうだネ、最終的な人数をどうするかは後で決めるとして、100人いれば守れるでショ」
わたしと優は、頷いているだけだ。
どうして100人いれば守れるのかは、わからない。
あの大きなクモが現れたら、かなりヤバイと思うけど、守るだけなら100いれば守れるのかな?
名塚さんがアンドレアさんに連絡する。
5分くらい待つと、アンドレアさんが来てくれた。
「おいオマエら! ギルドアジトがまたモンスターに襲われてるぞ!」
走ってきてくれたんだろう、5分は早い。
「説明しますね、考えを聞いて下さい」
名塚さんが、アンドレアさんに説明する。
アンドレアさんは、割と思慮深げに話を聞くと、大きく頷いた。
「じゃあ、東西の砦も手に入れた方がいいな、早い者勝ちだ」
わたし達と、同じ考えのようだ。
「いいんですかね?」
でも、一応念押ししておく。
ギルド員10000人のうち、今6000人くらいログインしている。
人のやりくりは大丈夫なんだろうか?
「イベント期間中ならログイン率は高いだろうから、五ヶ所くらいは守れるだろうよ」
「そうだネ、今後のことは、今後に考えよウ」
エミリーは、旅行に行くときに計画を立てない人だ。
A型の血が騒ぐ。
「ギルマス、あんたは取りあえず、ギルドアジトに戻って、でかいのを倒して来てくれ」
「わかりましたけど、みんなは行かないの?」
アンドレアさんは、ここに残るんだとして、みんなは?
「スナオ速いでショ?」
「う、うん……少しだけね」
「だから、スナオだけ戻って倒して来テ」
「…………」
なんか、それって駄目な感じがするんだけど……。
「ギルドアジトから見て、西側の砦に行っているからネ」
「うん……わかったよ」
「砂緒ちゃん、私も一緒に行こうか?」
心配してくれるのは、心の友だけだよ。
「ううん、大丈夫、砦の方はよろしくね」
「うん、わかった」
「ヤキニクおいで」
ヤキニクオン、じゃなくても、おいでとかで呼べることに気が付いた。
まぁ、システムの賢さは人間よりも上なんだから、オンというのは、マギウスじゃなくて、開発の人間が考えたやり方なんだろう。
「やっとオレ様の出番か!」
ヤキニクは移動速度が上がる。
ウイングブーツと合わせて、結構速くなるはずだった。
「じゃあ、行ってくるよ」
「頑張ってね、砂緒ちゃん!」
「砦にモンスターが居たら、無理しないでね?」
「砦にはオレも行く、心配してないで早く行け」
「じゃあ、お願いします」
わたしは、全速力で走って行った。




