第百十四話 第四回イベント開始
イベントの日がやってきた。
金曜日の17時からということで、ギルドマスターの部屋に、優とエミリーと一緒にいる。
学校の授業はもう終わっているので、後はイベントに集中だ。
「どんなイベントなんだろうね?」
優はいつも通りかわいい。
そして優しいから、学園中に勘違いした男子が発生していた。
「多分、ギルドに関連したイベントだと思うけど……」
わたしはいつも通りだ。
あまりクラスの人とも話さないから、勘違いした人とかは発生しない。
「それだと、ギルドに入っていない人がかわいそうじゃなイ?」
エミリーは、金髪碧眼の幼女だ。
いや、歳は同じだけど、このくらいの白人の女の子は、独特の幼さがある。
ちなみに、基本陽キャだし、天才様だから話もわかりやすい。
「それもそうだね」
うーん、じゃあ、イベントはどうするんだろうか?
この期に及んでギルド関係無しのイベントなの?
それはないと思うけど……。
そんなことを話していると、日本時間で17時になった。
「レディースエンドジェントルメン!」
どこか天の彼方から声が聞こえる。
緊急メンテの時とか、イベントの時に聞こえることが多い。
「栄えある第4回、『WORLD IN ABYSS』公式イベントを開始致します! みんな準備はいいか!?」
「声優の牧田一郎さんだ」
優は、この人が好きみたいだ。
第一回イベントの時も、すぐにわかっていた。
「運営は、この人が気に入っているんだネ」
「前も、この人の合図でイベントが開始されたよね」
「牧田一郎さんは、ベテランで、自分で声優事務所をやっているんだよ」
「へぇー、詳しいんだネ」
「いよいよイベントも第4回だが、今回は少し趣向を変えて、ギルドイベントを開催するぜ」
ギルドなんだ。
じゃあエミリーが言ってた問題はどうするんだろうか?
「おっと、オレはギルドに入ってないから関係ない、私はギルドに興味ないから今回はパス、そう思っているそこの君、安心してくれよな!」
安心できるらしい。
なにかあるようだ。
「第4回イベントは、ギルドに入っていない君たちを臨時ギルドに招待した。年齢も性別も国籍も関係なく、ただ強さの近いプレイヤーで決めたギルドだ」
違うんだよなー。
そんなことされても、迷惑なだけなんだよなー。
「ギルドに入っている諸君は、団結して頑張ってくれ! そして、ギルドに入っていないそこの君は、ソロで遊ぶつもりでイベントに参加してくれ!」
考えただけで辛いなー。
絶対に参加しないだろうなー。
「友達とギルドが別れちゃった? それもOK、大丈夫だ。プロフを交換している友達は、臨時ギルドに招待できる。だから、友達と遊ぶのもOKだ!」
「どうしてスナオは、辛そうな顔をしているノ?」
「なんとなくです……はい……」
「面倒くさいしがらみは無し! イベントの報酬を目指して頑張ってくれ! それじゃあ、イベントスタートだ!」
「…………」
え? それだけ?
何をするのか、何もわからない。
何かが起こるってことかな?
「きゃっ!」
そこに、建物を揺るがすような地震が来た。
「これ地震!?」
「違ウ! 攻撃を受けているんだヨ!」
慌てて窓から外を見ると、巨大なクモのようなモンスターが、ギルドアジトを襲っていた。
「えええええっ!?」
「きっとレイドボスだヨ! みんなで戦おう!」
「私も頑張るよ!」
急いで外に出ると、みんなが集まっている。
でも、門が開いていないので、誰かの指示を待っているみたいだった。
「初戦です! 手探りなので、各自自由に戦って下さい! 同じギルドなら、範囲攻撃は当たりません!」
名塚さんの声だ。
わたしよりも、ずっとリーダーをしている。
「行くぞオマエら! 門を開けろーっ!」
サブギルドマスターのアンドレアさんが、仲間を率いて外壁の外に突撃していく。
それを見た前衛系の人達は、みんな、後に続くように突撃していった。
「ワタシ達は、壁の上から攻撃しよウ!」
壁の上には、防御用の装備があった。
面白いかも知れない。
「じゃあ、後衛の人は階段を上ろう!」
優が大きな声を上げている。
残っていた後衛の人達は、みんな外壁の階段を上り始めた。
いつの間にか、優が人望を得ている。
「ギルドダンジョンで仲良くなったのかな?」
そこで、エミリーがわたしの肩を叩いた。
「ギルドマスターは、いざというときだけ、頼りになればいいんだヨ」
「気を使わないで!」
エミリーも笑いながら階段を上っていく。
でも、まぁ、そうだよね。
持って生まれたものが違うんだから、同じにはできない。
気にしないのが一番だ。
そう考えながら、わたしも階段を上っていった。




