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第百七話 拘束された戦い


「んんーっ!」


「騒ぐな」


 男が、優にナイフを見せる。


 優は、口をテープで覆われていた。


 怪我をしている様子はない。


 男は、パーカーを目深に着込んでいて、顔がわからなかった。


 手には、ナイフを持っている。


「…………」


 銃だったら、どうにもならなかったけどナイフなら……。


 いや、油断しない。


 何を隠し持っているか、わかったものじゃないから。


「その棒は捨てろ」


 わたしは、棒を床に置く。


「こっちに蹴れ」


 勢いよく蹴って、男に当てようかとも思ったけど、優に当たるかも知れないからやめておく。


 そっと、棒を蹴って男の方に渡した。


「そうだ、大人しくいうことを聞け」


「なにが目的ですか?」


「さてな、足を縛れ」


 男が、大きめの結束バンドを投げてくる。


 これで足を縛るのか……。


 わたしを殺すことが目的ではないようだ。


 まぁ、それはそうだろうけど。


 大人しく、座り込んで足を縛る。


「後ろ手に自分を拘束しろ」


 そう言って、男は手錠を投げてきた。


 足を縛られて、手錠をされたら厳しい。


 わたしの葛藤を見て取ったのか、男が優にナイフを当てる。


「わかったよ」


 大人しく言うことを聞く。


 でも、後ろ手に手錠をするのはちょっと難しい。


 それでも、カチリと音を鳴らして、手錠がはまった。


「後ろを向け」


 後ろを向くと、相手が見えなくなる。


 ちゃんと手錠をしているのか確認したのか、男が歩いてくる足音が聞こえた。


「さて、お昼寝の時間だぜ」


「んああああっ!」


 首筋に、殴られるような衝撃と、痺れる熱さが襲ってきた。


 電流を流されたんだ。


 スタンガンか。


 わたしは、ぐったりとする。


「初めから、こうしてりゃ良かったんだ」


「んんんんんーっ!」


 優が何か叫んでいるのが聞こえる。


 すると、わたしの身体がふわっと浮いた。


 持ち上げられたんだ。


「ガキと言っても、ふたり運ぶのは疲れそうだぜ」


 ふたり?


 優も連れて行くつもりなんだ。


 人質だけじゃなくて、優にも用があるということだ。


 カッと身体が熱くなる。


 今なら優は安全だ!


 わたしは、身体を捻って男の腕に噛みついた。


「ぐわああっ! こいつ、なんで!」


 身体が床に落ちる。


 これくらいの電撃、イベントのナマズくらいだ。


 床に落とされたわたしは、身体を上手く回して、男の足を払う。


 男は、尻餅をつくように倒れた。


「くそっ!」


 男の目が血走っていた。


 怒っているようだ。


「殺されねえと思ってるな! 甘いんだよ!」


 男がナイフを振り下ろしてくる。


 転がって……。


「優っ!?」


 そこに、優がしばられたままタックルをしてきた。


 男が押されるように、扉の方に倒れ込む。


「くそっ!」


 その拍子に、優の首の辺りにナイフが当たる。


 でも、切れ味の悪いナイフなのか、優に傷は付かなかった。


 その隙に、わたしは飛び起きてドロップキックをする。


「ぐわっ!」


 男は、たたらを踏んで廃屋の外に転げ出た。


「クソガキが!」


 この体勢なら戦えるかも知れない。


「そこまでだ」


「うっ……」


 男に、ワイヤーが当たると、ビクッとなって気絶する。


 映画とかで見るテーザー銃だ。


 どこに隠れていたのか、男が3人現れた。


 敵だったらまずい。


 とても、抵抗できるとは思えない。


「この男は、我々が保護する、良くやったな」


 特殊部隊の軍人のように、顔を隠した男が3人だ。


 わたしが聞いていた足音は、こっちの3人だったみたいだ。


 どうも、口ぶりからすると敵ではないようだ。


 足の結束バンドが切られて、手錠の鍵を男のポケットから取り出すと、解放してくれる。


 わたしはナイフを受け取ると、すぐに、優の拘束を解いていった。


「ありがとう、砂緒ちゃん」


「お礼は、この人達に言わないと……ありがとうございます」


 でも、この人達は誰なのか。


 正直に言って怪しい。


「この男は、とある独裁国家のエージェントだ」


「レッドプレイヤーへの資金提供も行っている」


 レッドプレイヤー?


 ゲーム内のことも詳しいんだ。


 そういえば、最前線に独裁国家のチームがいたと思う。


「こいつらは、レッドプレイヤーをギルドに組み込もうとしている」


「それは阻止して欲しい」


 ゲームの中のことなのに?


 このプロっぽい人達が?


「そっちの方は、君に任せたよ」


「我々は、この男から辿れるところを辿る」


「それじゃあな」


 男たちは、男を拘束して運んでいく。


「待って下さい、どうしてわたしや優は狙われたんですか?」


 3人は、お互いに目配せをする。


 そして……。


「それは、オレ達の口からは言えない、すまんな」


「教師には、MIだと伝えてくれ」


 MI? なんのことだろう?


 でも、日本人じゃない。


 発音は、エミリーよりしっかりしているけど、少し英語なまりがあるように思えた。


 3人は、男を抱えて行ってしまう。


 すると、優がその場にへたり込んだ。


「優、大丈夫だった!?」


「砂緒ちゃん!」


 少し震える手で、わたしのことをしっかりと抱きしめる。


「大丈夫だけど、こわかったよー」


「よしよし、もう大丈夫だからね」


 落ち着いた後、ゆっくりと教室に戻った。


 独裁国家のエージョントが、わたし達になんの用事だったのか。


 怪我をさせるくらいは気にしない感じだった。


 そして、3人に言われた通り、先生にMIだと伝えると、わかりましたと言って、それ以上は何も追求されなかった。


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