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第百五話 ギルド実装


「今日、ギルド実装だって!」


 速報を持ったクラスメイトが、教室に飛び込んでくる。


「ギルド来たか!」


「どうする?」


 一気に教室が騒がしくなった。


 アップデート告知は学園内でもされるので、トイレの帰りとかに、たまたま聞いたのかも知れない。


 いつも通り、アップデート告知とかは無しで、いきなりの実装だ。


「砂緒ちゃん、ギルドだって」


「蒼天騎士団に行く?」


「うーん、どうしよう」


 優が悩んでいる。


 わたしも、正直悩ましい。


 おそらく、ゲーム内で最大手のギルドになるだろう。


 ギルド間戦争とかあるなら、心強い。


 でも、その分、変な悪目立ちはしそうだった。


 知っている人だけで、ゆったりとしたギルドが、本当はいいんだけど……。


「でも、他のギルドに入ったら、蒼天騎士団の団長はどうなっちゃうの?」


「わ、わたしに聞かれても……お飾りだし……」


「でも、砂緒ちゃんが蒼天騎士団の団長だって、知ってる人も多いよ?」


「ま、まぁ、そうなのかもしれないけど……」


「そうしたら、蒼天騎士団に入るしかないよね?」


「そ、そうなるかも」


 優は、わたしに蒼天騎士団を勧めているようだ。


 とても断りにくい感じではあるんだけど……。


 優と同じギルドなら、どこでもいいかな。


 そんな風に考えていた。






 昼休みになった。


「ご飯に行こうか」


 そこに、優の携帯が音を鳴らす。


 すぐに電話に出た優は、なにやら慌てた様子で話していた。


「ごめんね、砂緒ちゃん、家族から連絡が来ちゃった」


「どうしたの?」


「家に帰って来いって、お昼休み終わるまでには帰ってくるから」


「ふーん、気をつけてね」


「うん、お昼ゴメンネ」


「いいよ、じゃあ」


「じゃあね」


 優が教室を出て行った。


 すると、その直後に、名塚さんが教室の後ろから顔を出す。


 うーん、なんてタイミング。


 用件は、もちろんわかっている。


 答えは用意してないけど……。


「優は、用事があって出かけちゃった」


「そうなんですね、本当は、一緒の方が良かったんですけど……」


 うんうん、そうだろうとも。


「あの、一橋さんと小島さんは、蒼天騎士団に入ってくれますよね?」


 ちょっと上目遣いで、名塚さんがそう聞いてきた。


 一応、確認でみたいな感じだ。


 もちろん、わたしが代表というか、団長になっている組織だ。


 気にはなっているけど……。


「た、多分、お世話になると思う……」


「多分!? どうしてですか!」


 名塚さんは、もう本当に泣き出しそうな声で訴えてきた。


「た、多分というか、ほぼ……?」


「同じじゃないですか!」


 もう、名塚さんは目にうっすらと涙を浮かべていた。


 だって、コミュ障には大きな組織なんて辛いんだよ……。


「な、泣かないで、どうすればいいのか困るよ」


「ギルドはボクが設立しますけど、ギルド長は一橋さんにしてもらいたいです」


「わ、わかった、わかったから……」


 断ったら、ここで自害でもしそうな勢いだった。


 思い込んだら一直線。


 さすが、ヒーローたるもの、そうでなくちゃね……。


「約束ですよ」


「はい……」


 半ば脅迫みたいな感じで合意させられた。


 まぁ、蒼天騎士団に入るとは思うんだけど……。


 ちょっと、目立たない小さなギルドで、波風のないプレイをしているところを、想像してしまっていた。


「今日は学食はやめよう……」


 学食には、中学から大学まで色々な人が来る。


 蒼天騎士団の人も来るから、声をかけられるかも知れない。


 わたしは、ワックに行くと、ランチセットを食べて時間を潰した。






 午後の授業が始まる。


「ん? 小島はどうした?」


 昼休みが終わっても、優は帰ってこなかった。


 遅れているんだろうか。


「い、家の人から連絡があって、昼休みに帰りました」


「そうなのか?」


「昼休み中には戻って来るって言ってましたけど……」


「そうか、それなら先生も家に連絡してみよう」


 そして、そのまま授業になった。


 十分くらい料理の味の再現について勉強をすると、自習になる。


「じゃあ、先生はちょっと教室を出るので、各自で考えてみてください」


 世界で料理コンテストをするとして、どういう形式なら、オンラインで実行できるかというものだった。


 やっぱり、料理のジャンルで分けなくちゃ駄目だと思う。


 納豆選手権をしても、日本人にしかわからないし、世界で参加する人もいないはずだ。


 中華なら中華、パスタならパスタでジャンル分けをして、その上で、オリジナリティを争わないと、成立しないと思う。


「ん……?」


 そこで、誰かからささやきが来た。


 誰だろう?


「小島優の身柄は預かった、返して欲しければ、ひとりで学校裏の廃屋に来い」


「……!!」


「誰かに伝えたら、小島優の命はないと思え」


 男か女かもわからない、加工された声だった。


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