第百三話 次の階層へ
「…………」
みんな頑張っている。
ボスは3体いて、レイド前提の強さになっているらしい。
でも……宇宙船の雑魚の方が圧倒的に強かった。
なんか、少し拍子抜けしてしまう。
でも、それは仕方が無いことだ。
ここはまだ、17階層なんだから。
「どうしたノ?」
「え、な、なんでも……」
わたしは、視線を逸らすけれど、エミリーは見抜いてきた。
「弱イ?」
ちょっと笑っている。
エミリーも人が悪いなぁ。
「うん……弱くてびっくりした」
「あはは、倒しちゃエ!」
今なら、ライドストライクのバフがかかっている。
やろう。
「<分身>」
「<グランディア>」
この一撃の乱数上の最大値が出るというスキルは、妙に強かった。
極低確率で出せるすごいダメージがあるっぽい。
カッと巨人が光る。
ダメージ反応だろう。
すると、空中に100丁くらいの銃が現れた。
数え切れないほどのマスケット銃だ。
「すごい! 早いぞ!」
王子様が、手を叩いて喜んでいる。
あれで撃たれたらすごいダメージなんだろう。
わたしは、すぐに攻撃に移る。
「<エアリアルレイブ>」
巨人が空中に浮いて攻撃不可になった。
攻撃とスカウトの阻害スキルを足したようなスキルだ。
その隙に6連撃を入れる
二回攻撃が入るから12連撃だ。
まだまだ!
「<クアドラブルエアブレード>」
それで……巨人はカッと光って膝をつくと、消えていった。
「すごい! はははっ! 痛快だ!」
王子様が喜んでいる。
リサのお兄さんは、次のボスに行かずに成り行きを見守っていた。
状態異常になってる?
どれを攻撃すればいいのかわからない。
まぁ、いいや。
蛇にしよう。
わたしは、武器をティタニススタッフに持ち代えた。
他のパーティーがいるからフォールダウンは使えない。
「<インフィニティワールド>」
無属性の空間切り取り魔法だ。
蛇が、キシャァと声を上げた。
利いてる。
ダメージ反応の雷は来ない。
一気に詰めていく。
「<ディバインコロナ>」
「<ジャッジメントレイ>」
次々に呪文を唱えて、蛇を追い詰める。
みんな、ぽかんとそれを見ていた。
ティタニススタッフを使うなら、固有スキルがある。
狩りで一度使っただけだけど、これだけ離れているなら、他の人を巻き込まないだろう。
「<アトミックエクスプロージョン>」
いつかの宇宙船の悪魔が使ってきたみたいな核撃魔法だった。
凄まじい熱波と衝撃が襲ってくる。
それで……蛇も、カッと光ると、崩れるように消えていった。
「ははははは、あはははははっ!」
王子様だけが、陽気に喜んでいる。
最後の鳥は、魔眼とユニットで倒す。
「開眼の魔眼オン」
鳥が、ビクッとなって動きが止まった。
魂が抜けているのかな?
ダメージも与えていそうだ。
とどめは……。
「<ユニットオン>」
わたしは、パワードスーツを着る。
色々バフがかかっているから、火力がとんでもないことになっているだろう。
攻撃力何倍という効果が、どこで計算されているのかわからないけど、最後だったらすごいことになる。
「<全弾発射>」
ビームとミサイルの乱れ撃ちだ。
そして……鳥も、カッと光って消えていった。
宝箱が落ちる。
『ユニークスキル、レイジングテンペストを取得しました』
「…………」
シンとしているボス部屋に、王子様の笑い声だけが響き渡る。
「お前、最高だ! この私がお前を覚えておいてやろう、名前は何という?」
「え……一橋砂緒です……」
「よし、砂緒、今日から私たちは友人だ!」
なんか、変な縁ができてしまった。
アラブの王子様?
あんまり、得意な人じゃないんだけど……。
「良かったネ、人脈は作っておいて損はないヨ」
「むぅ……」
なんか、この場の空気的に居づらさを感じる。
コミュ障の予感だけど、良く思われていない……。
「あ……そ、ユニークスキルはゲットしたかい?」
リサのお兄さんが話し掛けてくる。
我に返ったのか、少し声が裏返っている。
「ふふっ」
リサがそれを聞いて笑った。
みんなも、クスッと笑う。
それで、この場の雰囲気が、少し和らいだ。
「あ、はい……」
「さあ、宝箱は君たちのものだ」
宝箱には、罠も鍵はかかってない。
開けると、メタリックなオーブが3つ入っていた。
わたしが倒したから、パーティーの3人分なんだろう。
「じゃあ、遠慮無くもらうヨ」
「じゃあ、私も」
わたしも、オーブを取る。
エミリーは、ここの領主になりたいみたいだったから、丁度いいだろう。
「ああ、最高だった、だが、共闘はここまでだな」
王子様が、リサのお兄さんにそう言う。
ライバルなのかな?
「じゃあ、私たちは次のフロアに行くよ」
「待て、もちろん僕たちも行く」
ホッと一息吐くように、みんなが動き出した。
「私達は帰ろうか?」
「そうだね、なんか居づらいし……」
好奇の視線に晒されている。
興味はあるけど、詮索はしない方針なんだろうか。
さすがは、立場のある人達だ。
「じゃあ、ワタシ達は帰るヨ」
「助かったよ、次のボスもレイドボスじゃないことを祈っておいてくれ」
そう言って、わたし達以外は、次のフロアに行ってしまった。




