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セロの旅路 15


 実際にミーシャの宿に来てみたが、やはり一見ただの小さな宿だった。


「いらっしゃいませー」

「三人だ。広めの一部屋で頼みたいんだが」

「大人一人に子供二人ですね。かしこまりました。大部屋となりますと、一日金貨一枚と銀貨五十枚になりますがよろしいでしょうか?」

「ああ。四日分頼む」


 そう言って金貨六枚を渡す。


「それでは二階の203号室となりますので、ごゆっくりどうぞ」


 受付の人から鍵を受け取って部屋へ向かおうとすると、二人はなにやらそわそわしているようだった。

 ───絶対何かあるわこれ。なんか二人に任せるべきじゃなかった気がしてきた……と若干後悔しながらも、二人を引き連れて部屋へと向かっていった。


 案内された部屋は、なんともまあ普通の部屋だった。

 それが逆に新鮮に感じてしまったことに、若干の寂しさを覚える。俺も成金野郎だったってわけか。


「お風呂いこー!」


 ウンディーネちゃんは旅中水浴び程度しかできなかったことが不満だったようで、着くや否やいきなりせがんできた。


「わしも賛成じゃ!一番楽しみにしておったのじゃ!」


 インフェルノちゃんも今までお風呂に入ったことがなかったようで、ウンディーネちゃんと共にはしゃぎだす。

 二人がここにした理由は風呂だったのか?


「じゃあ二人で行って来いよ。俺はギルドに寄るから」

「ダメーーー!」


 俺が部屋を出ていこうとすると、ウンディーネちゃんに止められた。なんでだよ。


「そりゃあわしらにはおぬしが付いておらねばならぬじゃろ」

「俺は保護者か?」


 ドラゴンの保護者なんぞになった覚えはねえ。むしろ保護される側だろ。


「わしらは魔物じゃぞ?誰かが見ておらんといけないのではないかの?」

「理性があったら魔物じゃねえ。お前らは人間だ。自信持てよ」

「暴論すぎるじゃろ!というか人間になぞされたらランクダウンじゃわ!」

「つーか俺いても意味ないだろ。お前ら女湯だろ?」

「混浴じゃぞ」


 ん?今なんて?


「一緒にお風呂―!」

「よーしウンディーネちゃん俺が体洗ってあげるからね~一緒にお風呂いこっか~」

「わーい!」


 仕方ねえなあ全く。世話の焼けるやつらだ。


「……どうやら犯罪者はおぬしの方だったようじゃな」


 インフェルノちゃんの鋭い視線が背中に刺さる。

 違うよ?


「はんざいしゃー?」

「そうじゃ」


 違うよ?


「はんざいしゃー!」

「違えよ!」


 自分の娘の体を洗うのは普通だろうが。ちょっと違うとこがあるとしたら自分の娘じゃないってだけだ。


「犯罪者と一緒にお風呂に入らねばならぬとは……」

「いやインフェルノちゃんも乗り気だったよな?」

「はて?」


 ヒューヒューと炎を吐きながらとぼけるインフェルノちゃ───


「いや危ねえよ!口笛にしろ!」

「くちぶえ~」


 マネするようにヒューヒューと口笛を吹くウンディーネちゃん。天使。


「おーうまいうまい」

「口笛くらいわしも吹けるわ!」

「知ってるわ!」


 張り合うなよ!っつーかお前が撒いたタネだろうが!


「はて?」


 ヒューヒューと炎を───


「吹けてねえじゃねえか!」


 そんなこんなで結局、まずは風呂に入ることになったのだった。


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