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セロの旅路 14


 そんなことを話し合いながら進んでいくと、もう街は目の前のところまで来ていた。

 ヤヒムの街は田舎というわけでもないが都会というわけでもないくらいの街で、一応形としてはちゃんとした門番がいる。しかし、入街のために門の前に人だかりが出来ているなんてことは無かった。


「ヤヒムの街へようこそ。身分を示せるものを提示してください」


 俺のことを知らないやつだった。

 しかしここまで来たらなるようになるしかないので、堂々としておこう。


「俺はギルドカードがあるんだが、この二人は拾い子で身分証明が出来ないんだ」


 俺がそう言うと、門番は先程とは態度が一変した。


「はぁ。ギルドカードですか。貴方はいいですけど、そちらの二人は街に入れることは出来ませんよ?」


 おお、久々の感覚だ。

 俺もまだ駆け出しだったころはよくこんな対応をされた記憶がある。ギルドカードというとだいたいこんな感じの反応をされるのだ。


 なぜかというと、冒険者になるためには戦闘力の試験と常識を問う筆記テストがあるのだが、これに合格すれば前科持ちでも釈放されていればギルドメンバーになることが出来るのだ。

 つまり、冒険者にはならず者や貧困層の人間も多くいる。そういった点から、ギルドカードを身分証明書として使うとこういう態度が取られがちなのである。


 しかし、俺の持つS級ギルドカードとなると訳が違う。S級冒険者というのはどんな街でも敵に回したくないものだ。むしろ正直忖度されまくる。普段はあまり忖度されるのは好きではないのだが、今回はその恩恵にあやかるとしよう。


「これが俺のギルドカードなんだが、それでもダメか?」


 そう言って俺はギルドカードを見せる。

 要約すれば、入れてくれないのなら相応の対応をさせてもらうぞ?という事である。


「こ、これは……大変申し訳ございませんでした。そちらの二人はお連れということで、未成年なので料金もいりません。それではごゆっくり……」


 門番の人は、慌てながら門を開けてくれた。

 なんか心が少し痛いな。ていうか魔物だってバレたら俺も犯罪者か?


「やったー!はいれたー!」


 ウンディーネちゃんがテンションを上げながら街へと駆け込んでいく。俺にも子供ができたらこんな……いかんいかん。


「まずは宿探しかのう?わしはゴミみたいな宿には泊まらんぞ?」


 対するインフェルノちゃんはこんな生意気なことを言っている。

 うん。俺が子供を持つならやっぱりウンディーネちゃんみたいな……痛い痛い!インフェルノちゃん俺の脇腹つねらないで!


「ま、まあ宿探しっていうのはその通りだな。金は無駄にあるし好きなところ選んでいいぞ」


 気を取り直して話を続ける。

 俺は特に宿にこだわりはないので、判断は二人に任せることにした。

 パンフレットを眺めながら、ああでもないこうでもないと言い合う二人を眺める。

 ほどなくすると、二人はパンフレットを閉じた。


「ミーシャの宿という所にしたのじゃが、問題ないかの?」


 一応どんな宿かを確認してみたが、特に問題は無さそうなので了承する。

 しかし、ぱっと見普通の小さな宿だったのだが、いったい何が決め手となったのだろうか。


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