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セロの旅路 12


 朝目が覚めると、俺はすぐに違和感に気づいた。

 それは、そう。いわゆるベッドの中に何かいる!現象だ。

 いや、何かではなく、確実にインフェルノちゃんだろう。そして昨日の経験則から、おそらく全裸だ。


「これから俺は毎朝この展開なのか?」


 そう思ってうんざりしながら起き上がろうとすると、テントに何者かが入ってきた。


「誰だ!?」


 慌てて入口に目を向けると、そこにはインフェルノちゃんが呆けた顔をして立っていた。


「なんじゃ?わしじゃが?」

「……は?」


 一瞬何が起こっているのか理解が追いつかなかった。目の前にいるのがインフェルノちゃんだとしたら、布団の中にはいったい……?


「んんっ……おはよー……」

「うおおおおい!!!」


 突然ベッドの中から響いた声にびっくりして、ベッドから飛び落ちてしまう。

 本当に誰だよと思ってベッドの方を確認すると、インフェルノちゃんとは別の全裸の幼女がいた。……なぜ全裸?


「おぬし、拉致はいかんぞ?」


 インフェルノちゃんから白い目線を向けられる。


「いや、俺じゃないけど。ていうか、君は……?」


 一応弁明しておいたが、この状況では信ぴょう性の欠片もないだろう。


「おにーさん、わたしのことおぼえてないの?」


 全裸の幼女が泣きそうな目でこちらを見てくる。

 え?面識あるの、俺。この幼女と?マジで記憶にないのだが。

 答えあぐねていると、全裸の幼女は───全裸の幼女ってなんかアレだな。青色の髪だから青髪の幼女にしよう。うん。青色の幼女はポロポロと泣き出してしまった。


「ちょ!待って!覚えてる覚えてる!えっと……」


 そこで言葉が止まると、青髪の幼女から嗚咽が漏れてきた。


「おぬし最低じゃな」


 インフェルノちゃんから非難の声を浴びる。

 これ、俺が悪いのか……?というか、本当に誰だ?

 そう考えていると、青髪の幼女がそれに答えるように話を始めた。


「わだじっ……おにーざんにしょうがんされでっ……うれしぐでっ……でも、でもなぜかしょうがんされだときに……にくたいがなぐなっちゃっだがらっ……」


 うん?召喚?肉体がなくなる?どこかで聞き覚えが……


「しかたなぐおにーざんにひょういじでっ……まりょくがもどってぎだからっ……ひとがたのすがたでっ……」

「えっと……もしかしてウンディーネの……?」


 俺がそう言うと、青髪の幼女───ウンディーネちゃんはパァっと笑顔になって抱き着いてきた。


「うんっ!よがっだぁ……おぼえてぐれでて……!」


 あれ死んだんじゃなかったのか。いや、生きててよかったし嬉しいけど……

 ていうか精霊の生態がよくわからん。

 なんとなくウンディーネちゃんを抱き返していると、後ろからとても冷めた視線を感じた。

 恐る恐る振り返ると、インフェルノちゃんが汚物を見るような目でこちらを見ていた。

 ……はい。完全に俺が悪かったです。大変申し訳ございませんでした。




 ということで、ウンディーネちゃんに改めて経緯を全て話して全力土下座をキメた俺は、女神の如き深い慈悲の心をお持ちのウンディーネ様から条件付きでお許しを得て、この件は一件落着となった。……ウンディーネ様を持ち上げすぎだって?不敬だぞ貴様ッ!!

 とまあ冗談はこのくらいにしておいて、条件とはウンディーネちゃんを旅に連れていくということだった。なんでまた。



 ちなみに、ウンディーネちゃんは昔水の都・イルガーナというところで出会った魔物だ。

 簡単に説明すると、その昔マジックナイツで水の都の地下水源を汚す魔物の討伐に乗り出たのだが、その時にこのウンディーネちゃんと出会い、契約を結ぶに至ったのだ。


 しかし、昔はこんなにベッタリされるほど信頼度があった訳ではなかったはずだが……合わないうちに評価が上がったのだろうか?非常に謎である。

 こんなにベッタリというのは、あれから気を取り直してヤヒムの街を目指して歩き始めたところ、やたらとウンディーネちゃんが手を繋ぎたがるのだ。渋々了承すると、まるで最大魔力量が一気に伸びたかのように喜んだのだ。


 ……え?例えがわかりづらい?冗談はよせやい!


 とにかく、正直好かれすぎていて逆に困惑するレベルで、なんかウンディーネちゃんに関する記憶が抜け落ちているのか?と疑いまでした。

 ウンディーネちゃんに聞いたところ最初からずっと好き!というので、余計にわからない。まあ、これ以上考えても仕方がないし好意を向けられるのが嫌なわけでもないので、俺は考えるのをやめた。ウンディーネちゃん可愛いね!


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