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第57話 山間の牧草地帯

 山間の村に到着した。

 馬車でのんびり移動する行程だったが、ジェダは退屈だったらしい。

 ようやく狭い馬車から開放されて、伸びをしたり柔軟運動をしている。


「移動は常にあれか。閉口するな」


 顔をしかめている。


「フリッカ、ジェダ、王都までの移動は、もしや徒歩だったのか?」


「そうやで。あとはジェダが走れる獣に変身して、それにうちが乗ってきた」


「なるほど、そういう手があったか」


 俺はポンと手を叩く。

 様々なものに変身できるジャバウォック族のジェダだからこそ、そういう移動が可能になるのだ。


「だが待て。フリッカがちびで軽いから乗せられるだけだ。あっちのでかい女と丸い女は、乗せたが最後、とても戦える状態じゃなくなる」


 真剣な面持ちで訴えてくるジェダ。

 何か危機感を感じたのだろうか。

 ああ、イングリドが目をキラキラさせてジェダを見ていた。


 野生の勘で危機を回避したな。


「だそうだ、イングリド。君を乗せてはくれないようだぞ」


「残念……」


 心底残念そうである。


「冗談じゃない」


 ジェダはまた顔をしかめた。

 話を聞いてみると、彼は身軽さを身上とする戦闘スタイルなのだそうだ。

 だから、フリッカくらい小柄で軽くないと、身のこなしの邪魔になる。


 フリッカは体格に加えて、獣使いでもあるから、ジェダの御し方を知っているというのもありそうだ。


「では諸君、依頼主の元に行こう。しばらくはここでゆっくりしながら、ワイバーン退治だぞ」


 山間の村……とは言うが、ここは見渡す限りの緑。

 周囲の山々も背が低く、やはり緑色だ。


「やや、来てくれましたか、冒険者さん!」


 馬車の到着を見ていたらしく、緑の向こうに連なる家々から、数人の村人が駆けてきた。

 何匹かの犬を連れている。


「いや、到着が早くて助かりました。お陰で、家畜の被害もまだ少ないです。どうにか、営巣しているワイバーンの群れを追い払っていただきたい」


 村長は、恰幅のいいヒゲの男性だった。

 腰が低い。


 そして彼が連れている犬だが、牧羊犬みたいなものらしい。

 村では牛と羊を飼っており、牧草地帯の横では大きな畑で麦を育てているのだとか。


 牛を労働力として畑を耕し、乳を絞り、羊の毛を生産する。

 一般的な農村だが、穀倉地帯の村よりも牧畜に力を割いているようなところだ。


 見渡す限りの緑は牧草であり、放牧にとても向いている土地なのだとか。

 辺りには、牛や羊の姿が点々としている。

 確かに、放牧していたらワイバーンにさらわれてしまいそうだな。


「その通りなのです。子羊や子牛がワイバーンに何頭かさらわれて……。恐ろしくて、放牧することができません。家畜もストレスが溜まって……」


「それは大問題だ。長引くと、家畜が病気になってしまうかも知れないな」


「はい。なんとか早期の解決をお願いします……!!」


 報酬の額が、一つの村が出すものとしてはそれなりに高かったのも納得が行く。

 この状況が解決しないと、この牧畜の村は、全財産とも言える家畜を失ってしまうからなのである。


「了解した。今日から行動に移させてもらう。それで、あちこちに牛や羊を放しているようだが」


「はい。閉じ込めておくのは可哀そうなので……。ワイバーンが襲ってきたら、我々が死ぬ気で追い払おうと」


 わんっ、と牧羊犬が元気に鳴いた。

 なるほど、家畜を守るため、決死の覚悟というわけだ。


「ということだ。聞いたかな諸君。事は一刻を争う」


「ああ、これは由々しき事態だな。早く解決して、皆には安心をしてもらわないと!」


 イングリドの瞳が、決意に燃えている。

 ギスカはいつも通り。


「せやな。うちも、可愛い子牛や子羊ちゃんがさらわれるのは見てられんわ! 頑張る!」


「ワイバーンが襲ってくるのか? 早速戦えるわけだな」


 頑張りの決意表明をするフリッカと、戦えるなら何でもいいらしいジェダ。

 利害は一致しているわけだ。


「では、我々はめいめいこの辺りをぶらつき、ワイバーンが出現したら遊撃することにする。ワイバーンは昼行性で、夜間は眠る。夕方には襲撃が収まるだろう。彼らの巣を攻略するならば、夜だ」


 予定としては、昼間はワイバーンを撃退。

 夕方から休息し、夜半すぎに出発。

 ワイバーンの巣を攻撃する。


 このパーティでは、俺とギスカ、ジェダが夜目が利く。

 明かりはワイバーンの巣に到着したら点ければいい。

 イングリドとフリッカの視界は、ギスカの魔法でなんとかしてもらおう。


 こうして、日暮れまでの間、家畜たちの護衛をすることになる。

 しばらくすると、ワイバーンがやって来た。


 ワイバーンとは飛竜。

 ドラゴンの亜種だが、より小さくて獣に近い。

 前足が無く、大きく広がった翼になっている。


 翼長は牛二頭を縦に並べたほどの大きさがあるが、その身体は飛翔能力を担保するために痩身。

 成長した牛を運べるほどのパワーはない。


 それ故に、狙われるのは子牛や子羊なのだろう。

 ちなみに攻撃能力は高く、尻尾には毒針がある。

 これで標的を麻痺させるから要注意だ。


 村の人間が追い払いに来なければ、その場で牛を刺して食ってしまうこともするだろう。

 運べないなら、殺してから運べるように解体してしまうだけの話だ。


 まさしく、ワイバーンは害獣である。

 おっと、上空から甲高い泣き声が聞こえてきた。


 害獣討伐の開始と行こう。


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