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仲間というもの

 目が覚めて真っ先に見えたのは白い天井だった。

「ここは・・・」

 そうだ、俺は刺された後気を失ったんだ。

「ウィル、気がついたか。マシューだよ、ここは治療室。」


 ウィルが気を失った後、シャルトファミリア達は街中の細々したモンスターを一掃した。そしてマシューはウィルのフードが脱げ落ちない様にしっかり押さえながら、仰向けにし大声でヒーラーを呼ぶのだった。しかし、そのフードはシャルトファミリア団長のレナによって力尽くで脱がされた。そして初めてフードの男が眼帯の未登録冒険者だと知ったのだ。


 マシューはその後の出来事を一通り説明した。


「なぜ俺だとわかった?」

 そうだ、顔は誰にも見られていないし、移動速度や攻撃速度もレベルEの冒険者では把握しきれないだろう。


「君は困っている人がいれば、何も考えないですぐに飛び出す様な優しい人だ。あんな状況でモンスターと上級冒険者の真ん中に立とうとする人なんてウィルしかいないと思った。」


 ”優しい”生まれて初めて言われた。優しいとは何なのかずっとわからなかった。多分今もわかっていない。だが、俺を尊敬する様な認める様な言葉なのはわかった。




「隊長、あの眼帯冒険者が目を覚ました様です。」

「わかった。」

 レナは報告書の作成を切り上げて、都市最大の治療所に向かった。刺してしまった謝罪と、あと幾つか聞きたい事があったのだ。


 ()()()の青い風、フード、あの眼帯・・・。闇一派だとしたら、あの様な真似はしない、況してや私の命を狙う絶好のチャンス。


 レナは心に引っかかる物を直接あって確かめようとしていた。



「ウィル、俺たちもう仲間なんだからさ・・君が昨日みたいに動けなくなったら僕が助けてあげるから。」


 仲間・・・、みんなとシチューを食べている姿が脳裏に浮かぶ、そして絶望の音と共に掻き消える。


「仲間?君と仲間になった覚えはない。仲間なんていらない、仲間はただの足かせだ!!仲間など・・弱者の集合体に過ぎない。」


 全身に力が入り熱くなる。我を忘れて、最悪を言葉知る。

 

「ウィル・・君は・・・。」

 はっと我に返り大変な事を言ってしまったと認識した。俺にも仲間がいた、一生大切にしようと決めた仲間が。だが、俺は疫病神の様な者、匿った仲間はあっけなく死に行き、俺はまた独りになる。

 俺は悪魔だ、死神だ、俺と仲間になるという事は死を意味する。



 心を許した者が死に行くのが怖い・・・


「悪い、変な事を言った。気にしないでくれ・・」

「君は、君は今までに辛いことがあったんじゃないのか?だって君、今怖がっている顔をしている・・」


 そうだ、怖いんだ・・だから仲間になろうとする者を遠ざけてきた。それが彼らの助かる道だから。


「僕は、君の仲間になりたいよ。今は弱いけどいつか必ず君と同じ様に強くなる。君がどんな事情を抱えているのか分からないけど、僕は君の前からいなくなったりしないから。」


 昔に帰った様な錯覚がした。


「マシュー、君は・・君はアルテッ」

「失礼する。シャルトファミリア隊長のレナだ。」


 取り返しのつかない事を言い出してしまいそうになった時、彼女はやってきた。


「あ、レナさん・・・僕は失礼するよ。ウィル、また後で話の続きをしようね。」

 マシューは珍しく空気を読んで退室した。


「昨日は本当に申し訳なかった、体の制御ができなくてそのまま刺してしまった。」

 レナは決まり悪そうになりながらもしっかりとお詫びをする。


「あのまま突っ込んでしまえば、爪の餌食になった。君の加速を止める為にもそうせざるを得なかった。まさかモンスターがフェイントを使うなんてな。こうして生きてる事だし大丈夫だ。」


「あなたは、私に刺される事を覚悟の上でっ・・・、なぜ?正直助けてもらう義理などない。況してや身を挺して・・」

 レナの黄色の瞳が揺れ動く。


(俺は昔君のその瞳に救われた。真っ直ぐに正義を見る瞳に、絶望の縁を生きる俺は何か見えた様な気がした。)


 そう言ってしましたい。 


 あの時の彼女は大剣士である父がアルテイナを討伐したという大成果を上げたというのに、ちっとも笑っていなかった。何を考えていたのか聞きたい。


 でもやっぱり。

「都市重要ファミリアの隊長を見殺しには出来ないだろう。」


「・・・」

 少し赤面するレナだったが、すぐに真顔に切り替えた。

「礼を言う。今回の件と、そして先日の件・・・」


「・・・」

  ()()()()について俺は何も言わない事にした。


「聞きたい事がある。あなたは何者か、私は何処かであなたに会った事がある様な気がする。だが思い出せない。」

 

「人違いだ、俺は君にあった事がない。」


 決して正体を知られる訳にはいかない。それは決まり事だ。


「あなたは闇一派の人間なのか?」

 レナは緊張した面持ちで、今日一番聞きたかった事を口にした。


「闇一派とは?ガウルゥーの反対勢力なのか?」


「違うみたいだな、知らない方がいい。それと、早く冒険者登録をしてくれないか?クエストの裏取引をしていたと聞いたが、今回が見逃す、だが次は必ず捕まえて拘束所に入れるからな。」


 言いたい事を全て言った後、勝手に会話を終わらせて出て行ってしまった。


 目が点になるウィル。



 雲ひとつない晴天、穏やかな風が吹いていて心地良い。

「おお!来た来た、退院おめでとう。」

 治療所の前でマシューが待っていてくれた。

「ご飯でも食べに行こうよ!んで、アルテってやつ聞かせてくれよ。レナさんが途中で入ってきて聞けなかったからさ。」


「別に何でもないから、もう言わないでくれないか。」

「言おうとしたのって、僕を仲間として認めてくれたから?」

 ニヤニヤしながらウィルをイジっている、ウィルをイジれるのはもしかしたらマシューしかいないのかも知れない。


笑いながら俺の前を歩いているマシュー。


君はアレン達と同じ”ばか”なやつだ。純粋で、真っ直ぐ、心の広いやつだ。


ここはガウルゥーだ、世界の中心だ、もう怖がらなくても良いのかも知れない。

 




 

次回ウィルは、彼の正体を知る者と接触します。そこでウィルはまた小さな決意をします。これからはウィル自身が自分の意志で一歩一歩前へ進む成長を垣間見る事ができるので楽しみにしていて下さい。

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