後悔と謝罪
全てを思い出した私は、
「あ…あるじぃぃい!許してくださいぃい!!」
と涙ながらに謝罪していた。
暗闇から赤い眼が近づいて来る。
「思い出したようだな。今後は俺がお前の目付け役として見守ることになった。」
そう声を掛けられたが、私はそれどころではなかった。
「ソルティ!私はいつ主様の元に帰れるのですか!」
声を荒げながら、赤い眼もとい灰色猫に扮するソルティへと詰め寄った。
「最初に主様に言われている通りだ。人として生き、学べ。その体が寿命を迎えるまで。」
と淡々と言われ、私は崩れ落ち更に泣いた。
しばらくその場で泣いていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。
翌日、私はベッドで目が覚めた。すごく頭がぼーっとしているし、目も開け辛い。
嫌な夢だったのかと思いたかったが、枕の横に居るソルを見てそうでなかった事に朝から落ち込んだ。
数回のノックが響き「失礼します。」の声の後、メイドのミリアが部屋へと入ってきた。
カーテンを開け、私の方へと近づいて来た。
「おはようございますアシュレイ様。今日はお目覚めがお早い…」
とまで話したところで私の顔を見たミリアが
「ア…アシュレイ様!いかがなさったのですか!!…誰か!!」
と声を上げながら部屋から出て行った。
数分後、ドタバタと大きな音を立てながら大人達がなだれ込んできた。
「アシュレイ!どうしたんだ!」
「私達の可愛いアーシュ!どうしたのその顔は!」
この二人は私こと、アシュレイ・エルゴートの両親のエヴァンとサシャだ。
いわゆる親ばかで、過保護な二人だ。
「落ち着いてください。今は平気です。」
そう答えたところ、両親は誰かに何かされたのではないかと問うてくる。
それに対し、私は昨日思い出したことを話そうとした。
すると不思議と声が出ない。何事かと思い、ソルに目をやると
「お前の過去である前世については今はまだ話せない。そういう制約がかかっている。だから今はその体の記憶のまま、思い出す前と同じように振る舞え。」
そう頭の中に返事が来た。
私はまた泣きたくなるのを抑え
「悲しい夢を見たのです。」
と伝えるので精一杯だった。
その後、両親はまだ心配しているようだったが、何とかごまかし朝食へと向かった。
朝食中にソルの事はただの猫と伝え、家での飼育許可を貰った。