ゲーム開始とマッピング
さて、今度は短剣を使って狩りをすることにしよう。
これでも俺は家がそれなりに古いところだという事もあって、古武術から何から小さいころから色々と仕込まれている。
だから、武器で倒しきれなくてもそれほどは問題がないのだ。
あとはダメージを貰う感覚も知っておきたいよな・・・・・
流石にHP全損のは必要ないけど、ちょっとダメージを受けただけで焦っていたら早々に魔獣に負けてしまうし、魔の国で生きていけないだろう。
まずは獲物を探すとこからだな。
確かノノがここに出るのは『角突き兎』と『スライム』だけだと言っていた。
確かに初心者相手だったら丁度いい相手なのではないのだろうか?
角突き兎は攻撃からの回避の練習、スライム相手には狙ったところを攻撃する練習だ。
意外とこれが難しく、回避するときは相手の行動を先読みしておかなければならない。
自分が相手よりも圧倒的に早い、あるいは強いというのであれば先読みする必要もなく、カウンタを狙うことができるだろう。
俺の場合は相手の攻撃を回避しつつ、そこに攻撃を合わせていくか、手数の多さで押す戦法を取っているが基本的にはどんな戦術でも出来る(はずだ)!
「さ~て、兎ちゃんは何処かな~」
この時に周りを警戒するのを忘れてはいけない。
常に自然体でいつつも、周りを警戒し続けること。確かに難しいことではあるが、慣れれば楽にできるようになる。
そうして俺は森に沿うように歩いていった。
数十分過ぎたのだが、いまだに兎の一匹とも出会っていない。
まさかとは思うけど、このだだっ広いフィールドの中に兎とスライムが一匹ずつとか言わないよな?
ま、まさかな・・・・あの天然AIでもそんな簡単なミスはしてないだろう・・・・
その頃ノノは暢気に鼻歌を歌ってグリヴの様子を見て「一匹ずつしか発生しないけど、グリヴなら見つけられるよね!」と、呟いていたとかなんとか・・・・
がぁー!!!!
マジで見つからん!
ステルス性能搭載だったとしても、攻撃してこないなんてことはありえないだろうし、そもそも全く気配が感じられない。
音も全然聞こえないところを見るとマジでさっきの考えが当たっている可能性が出てきた。
それから30分・・・・・
グリヴはようやく見つけた角突き兎を追い詰めていた。
「まてや、兎!さっさと捕まらんかい!」
数分前に見つけた兎を全力疾走の状態で追いかける。
現実でもそれなりに運動していたグリヴにとってはそれ程きつい事ではなかったのだが、いかせん此処は森の中。慣れてない場所で全力疾走を続けるのはいくら何でも厳しすぎた。
「はぁ・・・・はぁ・・・・・くそ!もう、物理攻撃で倒そうとか考えるのはやめよう・・・・・
一点に集中・・・・・ふぅ~・・・・・・しっ!」
手に持っていた短剣を投げナイフのごとく、兎に向かって投げつけた。
投げられた短剣は上手い事兎の頭へと刺さり、兎を倒すことができた。
え、ちょっと待って・・・
一匹の魔物を倒すのにこんなに時間がかかるものなの?
これって所謂チュートリアルってやつだよね?チュートリアルで初っ端から挫いてるやつが、いちばん強い魔獣が出るところでやっていけんのか・・・・・
実際にはノノがグリヴは『フルースに行くのですから、魔獣のレベルは10に設定しておくのです!』と、兎とスライムのレベルを上げていたせいであった。
それから一時間後、グリヴは未だにスライムを見つけられずにいた。
と、言うのも、その後の時間で、兎は数体倒すことに成功していた。とは言っても一度目と同じく短剣の投擲で倒しただけなのだが、これは置いておく。
(スライム・・・・・スライムは~・・・・・・・マジでいねぇ・・・・どうすっかな~・・・・)
「よし!いっそスライムは諦めるか!じゃあ、兎を狩りまくるぞ~!」
そのまま兎を狩り続け、四時間が過ぎた。
「もうこんな時間か・・・・そろそろ、ログアウトすっかな」
グリヴは扉へ向かい歩き出した。
十分後、グリヴは未だに扉に辿り着けていなかった。
スライムや角突き兎を探して右往左往しているうちに、方向が分からなくなってしまっていたのだ。
「このフィールドって範囲が決まってたよな?だったら、フィールドの壁に沿って進めばいいのか?」
思いついたらまず行動。
さっさと帰らないと、夕飯を作る時間が無くなっちまう。
二十分ほどかけ、グリヴは扉の前まで辿り着いた。
「お邪魔しまーす・・・・いやただいま、か?」
「どっちでもいいのですよ
とりあえず、お帰りなのです」
「なあ、ノノ。帰りが大変なんだけど、マッピング機能とかないの?」
「?ありますよ。スキルですけど」
「スキルか・・・・・何か紙に書いていけば取得できるかな?」
「私も取得条件までは知らされてないのです
一度取得したものならば見ることもできるのです
だから、誰かに教えるときぐらいしか意味がないのですよ」
「そうかぁ~・・・・仕方ないよな・・・・
おし、明日はマッピングの練習をしようかな
明日は紙とペンを用意してもらえるかな?」
「分かったのです
用意しておくのですよ
あ、言い忘れていたことがあったのです
ゲームが始まったら、ゲーム内の時間加速が6倍になるのです
それには気を付けるのですよ
いきなり起き上がろうとすると眩暈を起こすこともあるのです
他にも脱水症状や尿意などにも注意するのです
漏らしそうになっていたら、強制的に現実に戻されるのですよ
また、連続ログイン可能な時間は12時間なのです
一応11時間で注意されるのです
12時間を過ぎたら強制ログアウト、並びに1日のログイン不可なのです」
「分かった。気を付けることにするよ
じゃあ、また明日な」
「はい!なのです」
グリヴはメニューを開くと、ログアウトを選んだ。
「ふぅ~
結構体固まってるな・・・・・えっと~確か、ここら辺に・・・あった」
ゲームを始める前に用意していた水を取り出し、一気に飲み干した。
「さてと、食材は何が残っていたかな~
よし!あれを作っかな」
冷凍庫から凍らせた卵を取り出し、殻をむくと卵に小麦粉をまぶし片栗粉と薄力粉を混ぜたもので卵を包む。
そして、衣をつけた卵を表面の衣をカラッと揚げる。
つゆは鰹出汁に醤油、味醂、砂糖を混ぜたものだ。
あとは大葉を揚げて、盛り付けたら完成だ!
「うん!うまくいったな!アニメで見てからやってみたかったんだよな~・・・・
家じゃ絶対やらせてもらえないからな・・・・・」
ご飯と鶏卵の天ぷらと大葉につゆをかけて・・・・
「いただきます!」
「ふぅ・・・・・ごちそうさまでした」
アニメで見た通り作ったのだが、とても美味しかった。
甘辛のつゆとご飯にしみ込んだつゆ、そして濃厚な卵!
お椀の中で完成された料理だった。予想以上に上手くて、一気に食べ終えてしまった。
これからは一人暮らしだし、いろいろと料理を試してみるのもいいかもな・・・・・
風呂に入り歯磨きなども終え、寝る準備も完璧に終わらせた浅深はVDOにログインした。
「リンクオン!」
「おかえりなさいなのですよ!
グリヴ、明日まで来ないのでなかったのです?」
「ああ、ちょっと寝る前にやろうかと思ってな。調合するだけだから、紙は明日でいいぞ」
「分かったのです
グリヴ頑張るのですよ!」
「ああ、ありがとな
行ってきます!」
「行ってらっしゃいなのです!」
先程と同じく扉をくぐり、フィールドへと出た。
永遠と調合を続け一時間ほどが過ぎた。
「そろそろログアウトするから」
「分かったのです!
また明日なのですよ!」
グリヴはログアウトすると、自分の部屋に戻りベットでぐっすりと寝た。
「ふぁ~・・・・・今何時だ?」
浅深はスマホを手に取り時間を確認した。
「もう9時!?確か昨日の食パンが一枚残ってたはずだ
昼食の仕込みを終えたらログインしないと」
食パンを温めバターを塗りたくり一気に食べ進める。
新聞を見ながらなのでどっかのおっさんの画のようだ。
朝食を食べ終え歯磨きや着替えを終えた浅深はVDOにログインする。
その前に毎日の運動を忘れずにする。毎日運動はしておかないと、体が鈍ってしまうからな。
「ふぅ、終わったな
汗を流したらログインしよう」
シャワーを浴びた後浅深は今度こそVDOにログインした。
「リンクオン!」
「いらっ・・・・お帰りなのですよ!」
「?ただいま
紙とペンはあるか?」
「あるのですよ
これなのですよ
どうぞなのです」
「ありがとな。じゃあ、俺は行ってくるから」
「あと一時間でお昼なのです!
ゲーム開始に間に合わせたいのなら、その頃にはログアウトした方が良いのですよ」
「分かった。忠告ありがとな」
「はい、なのです!」
グリヴはフィールドを回り、手作業でマッピングをしていった。
その成果は十二時前ギリギリに現れ、【自動地図作成】となった。
効果は自分で通った道のマッピングなのだが、半径1㎞しかないので何かと不便だ。レベルが上がった後に期待をしたい。
「ただいま」
「お帰りなのです!
ログアウトするのです?」
「ああ。一時間もしないで帰ってくるけどな」
「待っているのですよ!
また後で、なのです!」
「すぐに戻るよ」
ログアウトした浅深はすぐに昼食の準備へと取り掛かった。
作るのは・・・・と言うよりは作ってあるのは角煮だ。
俺の好みの味付けとなっているが、特に濃すぎず薄すぎずで丁度いい味付けになっているはずだ。
味付けに失敗したなら次に作るときになおせばいい。
|挑戦と失敗《Try and Error》、料理は失敗無しに成功することは無い・・・・と言いたいとこだが、食材との対話がシッカリと出来ていれば失敗することはそうそうない。
まあ、大体がそれが出来ないから失敗しているのだろう。
皿から自分を消しきらず、かと言って強すぎず。
その見極めが大事だ。
と、まあ色々語ったが、内容を要約すると失敗の上に成功はある、が、挑戦無き者に成功は無い、という事だ。
挑戦をしなければ成功することも失敗することもないが、挑戦をしたものは失敗の先に成功がある。どんなものにでもそう言えるだろう。
浅深は家でそう習い続けてきたので、その意識が他の人間に比べて高すぎるのだ。
「いただきます」
うん。上手くできたな。俺の好きな味付けだ。
そう作ったのだから当たり前だ、と言われればそこまでなのだが、大体の目分量で調味料を混ぜているため時々分量を間違えることがあるのだ。
だから、成功した事は非常に喜ばしいことだ。
「御馳走様」
角煮は口の中に入れるとほろほろと崩れていくほど柔らかかった。
ともかく美味しかったとだけ言っておこう。
「リンクオン」
「ただいま」
「お帰りなのです!
あと3分で送られるのです
酔う人もいるので気を付けてもしょうがないけど、気を付けるといいのですよ」
「ああ、気持ちだけでも覚悟しておくよ」
「じゃあ、最後に一言なのですよ!
ようこそグリヴ!VDOの世界は何をするのにも自由な世界なのです!
英雄、勇者、魔王、商人、悪人、孤児、迷子、養子、貴族、王族
何にでもなれるこの世界でグリヴがどのように過ごすのか楽しみにしているのですよ!」
ノノが語りだしたのはVDOのキャッチフレーズ。
自由で何者にでもなれる世界。
「では、あと5秒で時間なのです!
3!2!1!
行ってらっしゃいなのです!」
「ああ、行ってくるよ」
グリヴの身体は光に包まれていき、瞬く間に目の前が真っ白になった。
====================
ここからはお願いとなります。
ブックマークと評価(下の方にある【☆☆☆☆☆】のことです)をよろしくお願いします。
評価基準は大雑把に・・・
つまらない、興味がない、と思った方は☆2以下のクリックを
面白い、また読みたい、続きが気になる、と思ってくれた方は☆3以上でお願いします。
====================