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第九話 言いがかり

ここまで飛んで来て頂いてありがとうございます。


ポイントもブクマも嬉しいですが、正直読んで下さる方がいるということが幸福です。



……ポイントやブクマがいらないという訳ではありませんよ?(笑) 

 次の日の朝、優が日課となりつつあるトワとの訓練の準備をしていると呼び鈴がなった。


「マスター、昨日の子達ですが、どういたしますか?」

「例の部屋に通してくれ」


 例の部屋とは、トワの助言を受けて用意した獣人達との面会室だ。そこは獣人達を怯えさせないように彼らから買い取ったものをあれこれと置いてある場所だった。


「領主様、これを……」


 キースとシルクは緊張した面持ちでキョロキョロと周りを見回しながら、席に着くと持ってきた包みを優に差しだした。


「これはサンドウルフの牙……か? 他の物もサンドウルフから取れた素材っぽいけど」


 包みに入っていたものを見ながら優が呟くと、キースとシルクが頷いた。


「どうぞお納め下さい」


「キース、昨日もいったけど、これは君達で好きにしてくれて良い」


「でも、倒したのは領主様です。人間の社会では獲物は狩った者のものでしょう?」


「だけど、解体したのは君達だ。……そうだな。じゃあ、俺はこれを貰おう」


 そう言うと、優は一番大きな牙を手に取った。


「俺は記念にこれを貰うよ。後は君達で分けてくれ」

「そ、そんな……」


 優は知らないことだが、目の前にある素材は数家族が一ヶ月以上暮らせる金額になるのだ。キース達は破格の扱いに一瞬呆気にとられたが、すぐに優に向き直った。


「領主様、どうか私達をお側で働かせて下さい!」


「え?」


「何でもやります。このご恩、返さないわけには行きません」


「いや、子どもに働かせるわけには……」


「マスター。帝国には児童労働を禁じる決まりはありません。というより、アールディアでは子どもも働くことの方が多いです」


 優が困っていると、そうトワが説明した。そうした事情は言われずとも優の頭の中に浮かんでくるのだが、優にはどうも抵抗がある考え方だということをトワは察したのだろう。


「彼らはたまたま適した仕事がないだけです。むしろ、雇って給料を与えた方が彼らのためになると思います」


「「き、給料!?」」


 キースとシルクは慌てだしたが、優はトワの考えになるほどと頷いた。


「でも、適した仕事ってあったかな?」


 優がそう問うと、トワはにっこりと頷いた。


「彼らなら最適です」


 そう言うと、トワはキースとシルクを連れて屋敷の北にある採掘場へ向かった。


 優は自分よりも明らかに小柄なキース達に何をさせるのか、疑問に思っていたが、彼らの働きをみるなり目の色を変えた。


「凄いな、二人とも!」


 優が褒めるとキースとシルクは“めっそうもない”と言って恐縮した。彼らの目の前にあるのは鉱石を含んだ大量の岩。トワの提案した仕事とは鉱物資源の採掘だったのだ。


「マスター、彼らは子どもとはいえ獣人です。これくらいは当然です」


 トワが冷静にそう言うと、キースとシルクは凄い勢いで首を縦に振る。だが、二人は優が半日かかって掘り出す量を一~二時間で掘り出すのだから驚かざるを得ない。


(凄まじい身体能力だな)


 再び働き始める二人を見て、優はアールディアの常識(当たり前)に冷や汗をかいた。



※※



 ちょうどその頃、仁と透も冷や汗をかいていた。


「……というわけです」

「ほぅ。なるほど」


 仁と透が話す相手はファルス帝国三代騎士の一人、ドレック。リンガイア共和国との戦いでも最前線に立っている騎士でファルス帝国の主力と言って良い存在だ。


「不遇民がだまし討ちとはいえリスパを退ける、か。なかなか不愉快な話だ」


 仁と透が話していたのは勿論優の話だ。だが、彼らにも見栄もあれば、プライドもある。手も足も出ずに負けたなどとは言えず、自分達は優がだまし討ちをしたせいで遅れをとったと説明していた。


「本来ならば我々が身の程を教えてやるべきなのですが、高速詠唱機スペルランナーは修理中で」


「ロウ賢者から奪ったトラップならそうだろうな。不遇民の上に卑怯者とは! 許せん」


 ドレックの言葉に仁と透は内心で喝采かっさいを上げていた。


「そういう事情なら仕方がないな。不遇民の相手などしたくはないが、出来損ないを増長させるわけにもいかんからな」


「では!」


「うむ。このドレック、帝国三大騎士として、さらに帝国に三人しかいない高位者ハイランダーとしてその者を成敗しよう!」



※※



 次の日も採掘は順調だった。もはや優やトワが手を出す必要もないくらいだ。したがって、優は採掘はキース達に任せ、午後もトワと訓練をすることにした。


「これ、ここからどうするんだ?」


 休憩中、優は昨日よりも大分高くなった岩石の山を見てそう尋ねた。ちなみにキース達は休憩などいらないと言ったが、優はそれを許さなかった。したがって、キース達はうずうずしながら優達のそばで座っている。


「魔法で金属を抽出した後、加工します。トワには付与魔術師としての機能もあります」 


「付与魔術……ああ、魔道具を作る技術ってことか」


 浮かんできた知識をそのまま口にすると、トワは頷いた。


固有武装ユニークアームも魔道具の一種。魔法の発動に必要な詠唱を代行するための呪文が刻まれた武具か)


 考えて見れば当たり前の話だが、今まで固有武装ユニークアームズと縁がなかった優には初めて知る話だ。


(ようやくここまで来たってことか)


 アールディアに来て二日目には高速詠唱機スペルランナー固有武装ユニークアームズを持たせていた仁や透に比べて歩みが遅いのは悔しいが、同時に追いつくことが出来た喜びも強く感じる。


「マスター、ここからは早いですよ」

「ああ」


 優は再び岩石の山を見上げ、笑みを浮かべる。


 が、次の瞬間、岩石の山が爆発した! 


「なっ!」


 それが起こって数秒間経って、優に理解できたのは二つだけだ。一つは自分達が何者かの攻撃を受けたということ。そして、残るもう一つは、自分達が助かったのはトワが張った光の壁のおかげだということだ。


(誰だ、一体!)


 優が答えの出ない疑問を考えている間に空から爆炎が降ってくる。それは彼らが試掘していた場所に直撃した。  


「くそっ! せっかくキースとシルクが掘ったのに!」


 優はそう叫びながら空を見上げる。そこには一体の高速詠唱機スペルランナーがいた。


「青い……高速詠唱機スペルランナー! まさか、帝国三大騎士、ドレックの機体!?」


 キースが怯えの混じった声でそう叫ぶ。


「何にしろ敵だ。トワ、行くぞ!」

「はい、マスター!」


 優は二人に離れているように言うと、近くに停めてあるハルシオンへと急ぐ。その間に敵の機体は下降し、優がハルシオンを起動させた時には地面に降りていた。


「誰かは知らんが、俺はやられたらやり返す。覚悟しな!」


 優は目の前の機体に向かってそう叫ぶ。これからという期待を砕かれた失望や苦労しながらコツコツ積み上げたものを台無しにされた悔しさ。優の心は怒りに燃えていた。


「それはこちらの台詞だ。不遇民よ」


「何にぃ?」


「卑怯な手で同胞に勝とうとするだけでなく、利用したロウ賢者の高速詠唱機スペルランナーまで破壊するとは! 貴様の所業、目に余る!」


「お前、何言ってるんだ?」


 優は会ったこともない人間から突如訳の分からない言いがかりをつけられ、呆れた声を出す。すると、コックピットの中でトワが優に自身の仮説を提示した。


「おそらくマスターが倒した勇者かロウ賢者がウソをつき、マスターと敵対するようにしむけたのでしょう」


「仁か透じゃないかな。暇な奴らだ」


「いかがいたしましょう。経緯を説明しますか? ハルシオンの交戦記録を映像として見せれば誤解が解けるかもしれませんが」


 トワの提案は非常に合理的だ。だが、優はすでに自身の行動を決めていた。


「誤解だろうとなんだろうと、やられたらやり返す! 他のことはその後だ!」


「了解です、マスター!」


 そう言うトワに頷くと、優は青い高速詠唱機スペルランナーに向かって怒鳴った。


「帝国三大騎士だかなんだか知らないが、馬鹿の口車に乗るとはな」


「何だと!? 私を愚弄する気か? 許さんぞ!」


 青い高速詠唱機スペルランナーが腰につけた長剣を右手で握り、戦闘態勢を取る。それに合わせて優もハルシオンの拳を握り締めた。


「同じことを二度言わせるつもりか? 許さないのはこっちだ!」


 青い高速詠唱機スペルランナーがハルシオンめがけて飛びかかる。まるで閃光のような攻撃だったが、優は簡単に見切り、敵の長剣を魔法でハルシオンの右手に作り出した光の剣で防いだ。


「ほう。いい反応だ」


 ドレックは驚いた声を出した。ドレックは優に近接戦闘の技術はないのではないかと思っていたのだ。


高速詠唱機スペルランナーは魔法を使うための魔道具。必然的に遠距離攻撃が多くなる。故に近接戦闘でボロを出す者が多いのだがな」


「なんか自分は別だといいたげだが……お前もそのクチだぜ!」


 優がそう叫ぶと同時にハルシオンが腕の力を緩め、足を半歩後ろに送る。すると、青い高速詠唱機スペルランナーはバランスを崩した。


「なっ!」


 驚くドレックの機体にハルシオンの蹴りが襲う。ドレックは体勢を戻すことも出来ず、それをもろにくらって宙を飛んだ。


「くそ、足を出すとは卑怯な!」


「すまんな、足癖が悪くて」


「足癖だと!? お前、ふざけてるのか!」


 土で汚れた青い高速詠唱機スペルランナーの中からドレックが怒りの声を上げる。


(思わぬ反撃を食らって焦ってるな……)


 一週間程度の訓練しか受けていない優がドレックにまさっているわけではない。ただ、トワが優に教えた戦闘術、ライトアーツがこの時代のものより優れているため、意表をつけただけだ。


(このまま崩れたら楽だが……)  


 そんなことを考えていると、急に青い高速詠唱機スペルランナーの装甲が開き始めた。おそらくロウ賢者と同じく全身を覆うタイプの固有武装ユニークアームズなのだろう。腕、脚、肩と様々な場所の装甲が開いた中には小さな砲塔が敷き詰められていた。


「だが、この距離、本来の高速詠唱機スペルランナーの間合いだ。我が絶技、【火線乱舞ミーティアレイン】を見せてやる!」


 ドレックは既に気持ちを立て直したらしく、余裕たっぷりにそう宣言する。優としては目論見が外れた形になるが、彼は落胆するどころか、口元に笑みを浮かべた。


(そうこなきゃな。俺はおまえのプライドをへし折らないと気がすまねーよ!)


 この程度ではまだまだやり返したとは言えないのだ。


「ならこっちも見せてやるよ、ハルシオンの力をな!」

読んで頂きありがとうございます!


次話は昼頃に投稿します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 因みに普通はブックマークを略す場合、"ブックマ"ではなく"ブクマ"です
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