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第六話 決着

来て頂きありがとうございますっ!


今日も飛ばしていきます!


 ……


 ……………


 …………………



 いつまで待っても何も起きないことで、中にいた透のドヤ顔も次第に引きつっていく。


「あれ?」


「んなもんとっくにトワが気付いたよ。てっきり知ってるかと思ったんだが」


「う、嘘だろ……」


「じゃあな、透!」


 うめき声を上げる透に優のハルシオンは右手を突き出す。それと同時に指先から発せられた光弾が透達の機体を襲う。光が消えた時、そこに立っていたのは優のハルシオンだけだった。


「「………」」


 観覧席でそれを目の当たりにした仁とロウ賢者は言葉を失った。十三体もの高速詠唱機スペルランナーがたった一発の魔法で全滅するなんてことは目にした後でさえ信じられない異常事態だ。


「おい、仁!」

「あ、ああ。何だ?」


 仁は優に声をかけられてようやく我に返る。


「早く降りて来いよ。次はお前だろ?」

「ひっ!」


 仁はリスパの中で小さく悲鳴を上げた。


「ま、待て。これから準備を……」


 あれやこれやと見苦しい言い訳を始める仁に優は小さくため息をつく。


「じゃあ、もうそこでいいよ。始めるぞ」

「いや、だから……」


 ハルシオンの右の人差し指を仁のリスパに向け、親指を立てる。いわゆる指鉄砲の構えだ。


「じゃあな、【灯火スモールレイ】!」


 言うが早いか、指の指先から一条の光線が飛んだ。それは仁のリスパの頭部へ向かって伸び、貫いた。


「あ、しまった。あいつに食らったのは蹴りだった」


 頭部に大穴が空き、崩れるように倒れていく仁のリスパを見ながら優は己の失敗に気づく。


「ま、いいか。多分結果はさほどかわらんだろ」


 優はすぐに思い直した。大体仁は今更さほど大きな問題ではないのだ。


「じゃ、ロウ賢者。さっさとやろうぜ。魔法使いならあんたにも高速詠唱機スペルランナーがあるんだろ?」


「仕方ありませんな」


 ロウ賢者の背後に突如大きなものが現れる。それは先程見たルーランという名の高速詠唱機スペルランナーに似ていたが、手にした武器や背につけた装備が異なっていた。


「第三世代型高速詠唱機(スペルランナー)ルーランは本来砲撃タイプ。それをあのように使うとは勇者様方もまだまだ学んで頂かないといけないことが多そうですな」


 確かになと優は思った。仁や透が使っていたリスパは近接攻撃を含めたどの間合いも得意とするオールラウンダータイプだが、ルーランは中~遠距離に特化した機体だ。それを優のハルシオンの手の届く場所に置いておく時点でナンセンスなのだ。


(まあ、俺に止めを刺してトワを手に入れたかったんだろうか)


 優はそんなことを考えたが、すぐに忘れた。彼らのことよりもまだやり返していない相手の方が重要だ。


「自分は違う、といいたそうだな」


 優の指摘にロウ賢者はニヤリと笑った。


「優様の機体、素晴らしい性能です。しかし、この距離は完全に私のルーラン改の間合い。しかも、機体は完璧な調整を加えた上、特性を生かす固有武装ユニークアームズまで持たせています」


 ロウ賢者は自分の背後にあるルーラン改が持つ大きな杖のような武器と羽織っているマントのようなものを指した。


「あっそ」


 ロウ賢者の熱弁とは対照的に優の返事をは極めてそっけないものだ。ぶっちゃけ他人の自慢話なんて聞いて面白いものではない。


「感謝しますぞ、優様。これで他の勇者様に邪魔されずにあなたの魔道人形ゴーレムを調べられる!」


 ロウ賢者がルーラン改に乗り込んだ。


「まずは衣服を剥がして体の隅から隅まで確認しましょう。おっと、これはどこまで人間を再現出来ているかを確認するためですよ? それが終われば検査の続きですっ! 生憎、優様が杖を折ってしまわれたので、今は太く硬いものしかありません。痛がるかもしれませんが、それは仕方ありませんなっ!!!」


「結局、あんたもあいつらと一緒かよ! 賢者の名が泣くな」


 ルーラン改がハルシオンに杖を向けるのと同時にハルシオンも指鉄砲をルーラン改に向ける。両者はほぼ同時に魔法を放った。


「【爆炎弾フレイムボム】!」「【灯火スモールレイ】!」


 ハルシオンとルーラン改の魔法は正面からぶつかり、拮抗し、やがて消え去った。


「フフフ、アーッハッハ! 行ける! 行けるぞ!」


「相打ちみたいだが?」


「私の最強魔法と相打ちとは恐れ入りましたが、私のルーラン改はまだ全力ではありません」


「へえ~」


 優はあからさまに馬鹿にした声を出す。が、ロウ賢者は気にした様子もなく、ルーラン改の左手を右肩に当てた。


「これがルーラン改の真の姿です!」


 ルーラン改が右肩にあったマント状の装備の留め具を外す。するとそれはあっという間に翼のように広がった。


「どうです? これでルーラン改の攻撃力は五倍です!」


 広げられたルーラン改のマントの下には右手に持っているものと同じような杖がいくつも備え付けられていたのだ!


「本当に全力じゃなかったのか」

「問題なのはそこではありません、マスター」


 コックピットで優が妙なことに感心すると、傍にいたトワが冷静に突っ込んだ。


「さあ、どうします? 今なら降参するなら今ですよ」


「いや、いい。早くやろう」


「へ?」


 恐らくロウ賢者は優が降参すると思っていたのだろう。優があっさりと自らの寛大な提案を断ったことが信じられない様子だ。


「は、はったりなどどはないですよ! 五倍ですよ、五倍! 下手をすれば機体ごと消し炭ですよ」


「そんなこと、お前が気にする必要はない」


 優はハルシオンにクラウチングスタートの構えを取らせた。勝つ方法は幾らでもあるが、シンプルな方が精神的なダメージが大きいだろうという考えだ。


「合図がないと踏ん切りがつかないか? じゃあ……」

「図に乗るなよ、不遇民がぁっ!」


 ロウ賢者が激高すると同時にルーラン改から複数の【爆炎弾フレイムボム】が発射された。


「じゃあ、行くぞっ!」


 なんと優は真っ正面から【爆炎弾フレイムボム】の弾幕の中に突っ込んだ! 


「馬鹿な!」


 ロウ賢者がそう言うのも無理はない。【爆炎弾フレイムボム】の一発一発は岩をも溶かすような熱量を持っているのだ。


 だが……


「こんなもん、何てことねーんだよっ!」


 優のハルシオンは無傷で【爆炎弾フレイムボム】の中を突っ切った。ハルシオンは優の炎のような怒りと憎悪を受けて生まれた機体。岩を溶かす程度の熱では何の影響も受けないのだ。


「はあああ!?」


 ハルシオンが拳を突き出しながら、ルーラン改の眼の前に現れるとロウ賢者はパニックに陥った。


「じゃあな!」


 優は自分に当たった【爆炎弾フレイムボム】の数だけルーラン改を打ちすえようとする。が、残念ながら二発目のパンチでルーラン改は完全に大敗してしまった。


「後三発残ってるけど、またの機会にするか」


 大穴が空いたコックピットからはブリーフパンツをはいたロウ賢者がのびているのが見える。どうやらロウ賢者は完全に気を失っているらしい。


「マスター、術者が気絶したので間もなくこの空間は消滅します。彼らへの命令は今行うとスムーズです」


「そうか。じゃあ……」


 優は自分の考えをトワに告げた後、情けない姿で横たわる元クラスメイトとロウ賢者を放置して自分の領地へと戻った。

読んで頂きありがとうございました。


次話は三時くらいに投稿予定です。

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