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高速詠唱機とかいうロボのいる異世界に召喚されたら不遇民呼ばわりされ、馬鹿にされるが、超高性能な機体を手に入れたのでやり返す!  作者: 赤羽ロビン


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第二十七話 これから

いつもありがとうございます!


この第二十七話で完結です! 

「終わったと思うか?」


 皇帝がそう言った時、優は素直に驚いた。


「まだ動くのか、それ?」


「舐めるなよ。言ったはずだ! この機体は第零世代型高速詠唱機(スペルランナー)クロザリル、ファルス帝国最後にして最強の機体だと!」


 皇帝の言葉と共に壊れたクロザリルの巨体がはじけ飛ぶ。そして、その中からは無傷のクロザリルが現れた。


「まるで脱皮だな」


「マスター、高速詠唱機(スペルランナー)は脱皮しません」


「分かってる……いや、待てよ」


 優はトワの言葉で何かを閃いた。


「そうか、第零世代型高速詠唱機(スペルランナー)とはそう言うことか!」


「む?」


「その機体、()()()()()()()()んだな! おそらく詠唱機創造陣マザーランナーと繋がったままなんだろ」


「何っ!」


 見抜かれるとは思っていなかったクロザリルの機能を言い当てられて皇帝は一瞬慌てたが、すぐに冷静さを取り戻した。


「その通りだ。クロザリルは未だ生産中の機体、したがって破壊したところでまた新たな体が製造される。まさか気づくとは思っていなかったが……」


 皇帝はここで言葉を切ると、得意げな笑みを口元に浮かべた。


「しかし、分かったところでどうするつもりだ? 無限に生産されるクロザリルは破壊不能だ。打つ手はあるまい!」 


 皇帝がそう叫ぶと共にクロザリルの攻撃が始まった。クロザリルの体から剣が生えると、それはそのままハルシオンへと飛んでくる。威力や速度は高いが、それ以上に厄介なのがその数だ。


「どうしようかな」


 無数に迫る剣を避けながら優が悩んだのはやはり勝ち方だ。


(皇帝は無限に生産されると言ったが、そんなはずはない)


 優の考えた通り、クロザリルの生産は無限ではない。詠唱機創造陣マザーランナーを動かすためには誰かがマナを供給しなくてはいけないからだ。今、アルカサス城では城の人間が代わる代わるマナを詠唱機創造陣マザーランナーに与えているが、それが尽きればクロザリルの生産は止まる。


(ハルシオンが使うマナは大気から集めたもの。力押しならこっちの方が有利なはず。だけど、そんな勝ち方で皇帝は心の底から負けを認めるのか?)


 優は最初に出会った時から自分の都合を押し付けるばかりの皇帝が嫌になっていた。


(弱いくせに欲を出して戦争をするから負けそうになる。すると今度は力のある俺に代わりに戦えとか言ってくる……バカか!)


 優を便利屋か何かと勘違いしている皇帝にその思い違いを分からせるには力を見せつける必要がある。


「マスター、広域破壊術式の使用を提案します」


 トワがそう言うと、優の頭の中にトワの言う広域破壊術式の知識が広がった。


(広域破壊術式とは文字通り広い範囲を一瞬で破壊する戦略魔法。ハルシオンは元々この広域破壊術式を使うために作られた機体の一つ)


(広域破壊術式は最低レベルのものでも、高位者ハイランダー百人分のマナが必要。とてもランナーが供給することは不可能なため、ハルシオンはマナドライブで大気からマナを吸収するように設計されている、か)


 が、その威力がえげつない。使えばクロザリルのエンゲージゾーンを破壊した上でファルス帝国の三割強が焦土と化してしまう。


「いや、駄目だろ。ショウコが巻き込まれる!」


「ショウコは大丈夫です。放つ前に相手のエンゲージゾーンを包み込む形でハルシオンのエンゲージゾーンを展開します」


「なるほど。なら、食らうのはあいつらだけか」


 優はトワの説明を聞き、ニンマリと頷いた。



※※



「何故当たらんのだ!」


 皇帝は防戦一方のハルシオンを見ながら苛立っていた。何故ならクロザリルの攻撃が一発も当たらないからだ。


「クロザリルは最強! ファルス帝国、いや皇帝の権力の象徴。敵は勿論、臣下さえも立ち向かえない絶対の存在でなければいかんのだっ!」


 皇帝が目の前の計器を力任せに叩く。その瞬間、外の様子を映すモニターが乱れ、一瞬映像が消えた。


「ええいっ! 今は戦闘中だぞ!」


 まるでかんしゃくを起こす子どものように皇帝がモニターを叩くと、映像がすぐに復旧する。だが、それが映し出す光景は皇帝の思っていたものとは全く違った。


「な、何だ。これは!」


 モニターが映し出したのは、球体状の観覧席に座る貴族達だ。いや、明らかに平民のような服装をしているものがいるのを見ると帝都の平民もいるのだろう。何にせよ、クロザリルの展開するエンゲージゾーン、『オンリーグローリー』とは別の空間だ。


「何だ! 何が起こった!」



※※



「あ、壊れた」


 ハルシオンが広域破壊術式に必要なマナを吸収すると、クロザリルのエンゲージゾーンはあっさりと壊れてしまった。ハルシオンが吸い尽くしたせいで、クロザリルのエンゲージゾーンを構成するマナがなくなったからだ。


(エンゲージゾーンはマナを材料として魔法で作られた空間、それが無くなればこうなる、か)


 だが、恐るべきはハルシオンがマナを吸う力の強さだ。大気に漂うマナではなく、魔法で固定されたマナまで吸ってしまうのだ。もはやマナの吸収ではなく、マナの強奪という言葉の方がしっくりくる。


「術式発動に必要なマナは確保出来ました」


「よし。じゃあ、やるか!」


「了解です、マスター! 広域破壊術式、【破滅の光輪(ライトオブフォール)】を発動します」


 その瞬間、ハルシオンの前に∞の形をした光が現れる。真夏の太陽のように何もかも焼き尽くそうとする光を放つ光輪に観覧席の誰もが圧倒された。


「な、ななななんだ、それは!」


 そして、圧倒されたのは皇帝も同じだ。他者のエンゲージゾーンの破壊、そして得体の知れない魔法の発動、優のしていることは皇帝が想像さえしえないことばかりなのだ。


「これでクロザリルを破壊する」


「待て! 待て待て待て待て! まさか詠唱機創造陣マザーランナーまで破壊する気ではないだろうな」


「俺の知ったことか」


 【破滅の光輪(ライトオブフォール)】の影響を受けるかどうかは詠唱機創造陣マザーランナーとエンゲージゾーンがどう繋がっているかによるので、優には分からないのは事実だ。だが、分かったところで行動を変えるかどうかはまた、微妙な問題だが。


「分かった! 独立でも何でも許可する! だからもう止めろ!」


 皇帝の言葉を聞いた貴族と民衆は目をむいた。横暴な君主──考えなしに思いつきを口にして相手の話を聞かないところがそう見えるのだ──である皇帝が誰かに謝る姿など見たことがないのだ。


「この期に及んで何で上から目線なんだよ。お前は性根を叩き直した方がいいな」


「全詠唱機創造陣(マザーランナー)、フル稼働! クロザリルに限界以上の力をっ!」


 見る見るうちにクロザリルの巨体が膨らむ。クロザリルはほんの数秒で元の三倍のサイズになった。


「あ~、もういいか?」

「おのれっ!」


 クロザリルはハルシオンを押しつぶそうと迫りしながら、剣や槍を雨のように浴びせる。だが、今となっては何をしても手遅れなのだ。


「じゃあな」


 優は【破滅の光輪(ライトオブフォール)】をクロザリルに向けて放った!


「うわわわっ!」


 皇帝の悲鳴と共に光が爆発する。光が消えた時、その場にいた者が見たのは、皇帝とポルトロン、ヒルダが情けない格好で気絶しているところだった。



※※



 その後、やりたい放題だった皇帝の権限は大幅に縮小。議会や宰相が置かれ、皇帝の政治を監視するようになった。


 ちなみにその宰相や議会を構成する貴族達はしきりと優の意向を聞きたがったり、何とか関わりを持ちたがるようになった。その理由は、優の武力に加え、平民、貴族を問わず優の人気が圧倒的に高かったからだ。


 また、優のクラスメイト達もおこぼれに預かっていたが、それ以上にドレックやクローネの人気が過熱した。理由は勿論、優とのパイプ役になり得るからだ。


 皇帝が敗れたことで、皆は(ごく少数の例外を除き)概ね自由になっていたが、残る問題はリンガイア共和国との戦争だ。これを続けるべきか、降伏すべきかでファルス帝国はめていた。


「あ~ 事情は分かったけど、意見って言ってもなあ」


 ファルス帝国の宰相及び議会の使いとして屋敷に訪れたドレックとクローネに対し、優は何とも歯切れの悪い解答を返した。


「そこを何とか! 指針だけでも!」


 ドレックがそう言って迫ると、クローネも続いた。


「もはやユウ様の意見がなければまとまらないのです!」


 二人は必死だった。彼らは自分よりもはるかに身分の高い貴族から泣きつかれ、拝み倒されて優の元に来ているのだ。手ぶらで帰ることになれば、一体どんな顔で会えばいいか分からない。


「指針って言っても、残ってる高速詠唱機スペルランナーはごく僅か。詠唱機創造陣マザーランナーは無事でももう戦いようがないんじゃないか?」


「では降伏せよと?」


「いや、そういうわけじゃないけどさ」


 と、会話はずっとこんな調子だった。優にしてみれば、ファルス帝国がリンガイア共和国との戦争を続けようと続けまいとどうでもいい話だ。したがって、どうしろと言うような立場ではない。


(だけど、“俺の知ったことか!”とか言ってはねつけるのもなあ……)


 優がそう思うのは、ドレックとクローネは優のためによく働いてくれているからだ。彼らの協力で、重鋼などの金属の交易は産業レベルになっているし、高速詠唱機スペルランナーの整備や固有武装ユニークアームズを製造する工房に至っては帝国随一の設備を誇るまでになっているのだ。


(新しい固有武装ユニークアームズの製造も始められているし、獣人達の生活も凄く良くなった。そういう意味では、二人には世話になってるしなあ)


 優がそんなことを考えていると、トワから衝撃的な発言が飛び出した。


「マスター、リンガイア共和国にはいわゆる“借り”があるのではないでしょうか?」


「何っ!」


「そもそもショウコを召喚したのもリンガイア共和国です。リンガイア共和国は彼女の意思とは関係なく召喚した上、【洗脳支配マインドバインド】かけて戦いを無理強いしました」


「確かに……それはいわゆる“借り”だな」


 トワの言葉で優は方針を決めた。


「俺は尚子に【洗脳支配マインドバインド】をかけた赤いローブの奴を探すためにリンガイア共和国と戦う!」


 彼らは知らない。この瞬間、優が史上初めてアールディア全土を支配する大帝国を築き、未知の脅威からアールディアを救う救世主となる最初の一歩を歩んだことを。


 とはいっても、それはまだ始まりに過ぎない。彼らのやられたらやり返す日々はこれからも続く。

読んで頂きありがとうございました。


この感謝をどうお伝えしたらいいのか、なやんでいたのですが、結局上手く文章に出来ませんでした(笑) ゆっくり気持ちを整理して活動報告とかで書かせて頂くかもしれませんが、とりあえず今はこう言わせていただきます!


お付き合い頂きありがとうございました!


PS

ロボものに大量破壊兵器はつきものだと思うのですが、あれって主人公が使っていいもんでしたっけ?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結おめでとうございます! 私としては、「だってあなたが」辺りの洗脳設定がとても響きました。 妄想が膨らむ良き……ですね(すみません) [一言] 新たなる目標を立てつつ、爽やかな終わり方で…
[良い点] 面白かったです
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