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第二話 キスと復讐

来て頂いてありがとうございます。予定を変更して早めに投稿しました。



赤字警告が怖い!


でも、次話の方が赤字警告方が来そう。

 詠唱機創造陣マザーランナーは突如破裂した。それと同時にその破片は辺りに飛び散り、あちらこちらに突き刺さる。


「爆発?」

「何だ、何が起こったんだ?」


 爆発が引き起こしたスモッグのせいで視界を奪われ、人々は慌てふためく。そんな混乱の中、優の後ろで大きな影が立ち上がった。


「失敗か、優! 残念だったな」


 優の後ろに立つ何かの高さは七~八メートルほど。そしてその何かからは先程から優を嫌というほど虚仮こけにしていた仁の声がした。


「失敗?」


 優は仁の方を向く。仁の声がした方にある無骨なシルエットのそれが、高速詠唱機(スペルランナー)というものなのだろう。


「だっと高速詠唱機(スペルランナー)は出来て……ん?」


 視界を遮っていたスモッグが少しずつ晴れてきたことで仁も気づいたのだろう。残骸となった詠唱機創造陣マザーランナーの中に何か大きなものがあることに。


高速詠唱機(スペルランナー)? 完成してたのか……ってオイオイ!」


 仁の言葉の後半部分ははっきりと馬鹿にした響きが混じっていた。


「何だよ、その小さい高速詠唱機(スペルランナー)は! 何だ、出来損ないか」


 優の目の前にある高速詠唱機(スペルランナー)は仁のものよりも一回り小さく、精々五~六メートルと言ったところだ。シルエットも全体的に細身で、やはり仁のものとは違う。


高速詠唱機(スペルランナー)は呪文を刻んで作った魔道具とそれを守る装甲を合わせたもの。当然、大きいほど強い。ロウ賢者も言ってたろ」


 ロウ賢者とは高速詠唱機(スペルランナー)の説明をしていた老人のことだろう。


(僕……いや、俺のことを不遇民と馬鹿にしていたあいつか)


 優の中に新たな怒りが湧き起こる。が、先程のようにそれに飲み込まれるようなことはない。何故なら、自分には既にそれを晴らす手段があることに気づいていたからだ。 


「その通りです、仁様! 仁様の高速詠唱機(スペルランナー)は第三世代型高速詠唱機(スペルランナー)、リスパ。我が国で確認できる最新モデルです」


 ロウ賢者が何やら手元に青い光で出来たボードを出しながらそう言った。おそらく高速詠唱機(スペルランナー)の性能が確認できる魔法を使っているのだろう。


「それに比べて不遇民様は……ん?」


 優の高速詠唱機(スペルランナー)に杖を向け、二枚目のボードを出したロウ賢者は顔をしかめた。


「よ、読めない。バクですかな? 第★■世代型……●¶詠唱機、ハルシオン。ハルシオン? 聞いたことがない名ですな。我が国では確認されたことがないものです」


「聞いたか、優! どうやらお前のは高速詠唱機(スペルランナー)じゃないみたいだぜ!」


 勝ち誇ったように仁はそう言い放つ。が、優はそんな仁を見て口元に笑みを浮かべた。


「何だ、お前、笑ってるのか!」


 優の様子は仁のカンに触ったらしい。


「お前はさっきみたいに半泣きの顔をしていればいいんだよっ!」


 言うが早いか、仁のリスパは優のハルシオンに殴りかかる。次の瞬間、轟音と共に悲鳴が辺りに鳴り響いた。


「て、手が!」


 仁は優のハルシオンを叩き潰すつもりだったのだろう。だが、実際には潰れたのは仁のリスパの手だった。


「お前、何てことを!」

「自業自得だろ」


 そう言いながら、優は目の前の自分の機体、ハルシオンに近づくとその表面に手をかけた。


「それより仁、俺からも一発殴らせて貰うぜ」


 優の体が機体に吸い込まれるように消える。が、優の視界はすぐに開けた。


「あ、これは?」

「外です。マスター」


 機体の中のコックピットとおぼしき空間には、ディスプレイに映し出された外の景色を背景にして一人の少女が立っていた。


「お、女の子?」


 少女は銀髪に紫の瞳という現実離れした容姿をしている。ついでに言えば、めちゃくちゃ可愛い。


(敵ではなさそうだが……)


 優がそんなことを考えていると、目の前の少女は優に一礼した。


「私はこの第十五世代型高速詠唱機(スペルランナー)、ハルシオンのガイドです」


 彼女は非常に整った顔をしている上に、表情が変わらないこともあって、まるで人形のような印象さえ受ける。


「ガイド?」


「私はこの機体についてマスターにお伝えしたり、メンテナンスを行ったりします。まだ同期させて頂いていないので、マスターにとって分かりやすい説明が出来ず、申し訳ありません」


 そう言うと銀髪の少女は再び優に一礼した。


「ですが、今は緊急事態です。脅威としては低いですが、攻撃をうける可能性があります。緊急同期による半自動セミオート起動を推奨します」


 銀髪の少女の言う“緊急事態”とは仁とその高速詠唱機スペルランナー、リスパのことだろう。


「分かった。そうしてくれ」

「マスターの承認を確認」


 銀髪の少女はそう言うと、急に優に近づく。予想外の動きに対して優が出来たのは僅かに半歩後退することくらい。だが、それも壁に阻まれ、中途半端に止められてしまう。結果、少女の顔は優の顔に覆い被さり……


「っ!!!」


 唇と唇が接触していたのは数秒だが、優にとっては無限に近い時間だ。大体、少女はわざわざ(と優には思えた)のしかかるように体を密着させてくるので、体中のあちこちに未知の感覚があって忙しい。


「同期は完了しました」


 少女はキスを終えると体を離し、最初にいた位置に戻る。今の行為も彼女が口にした『同期』という言葉も優にとってはよく分からない……はずだったのだが、疑問を感じた瞬間、優の頭の中にそれに対する答えが浮かんだ。


(同期とは俺とこの機体を繋ぐための手続き)


(この()は魔法で作られた魔道人形(ゴーレム)。この機体の言わばOS。ただし、それ以外の機能は人間とほぼ同等か)


高速詠唱機スペルランナーは決められたスーツを着て乗り込むことで、手足のように動かせる。だが、この機体、第十五世代型高速詠唱機(スペルランナー)ハルシオン同期によりそうした行為は不要になる)


(更に完全に同期すれば、ハルシオンは俺に合わせて機能を最適化するが、今は緊急同期なのでそこまでには至っていない)


(同期にはバイタル、メンタルを含めた俺についてのデータが必要。そのため、身体接触がかかせない……だけどな)


 それ以外の同期方法等についても情報が出てきたが、優は頭を目の前の問題に切り替えた。何故なら再び仁のリスパが攻撃態勢を取ったからだ。


「どうした、動かせないか? やはり出来損ないだろ! 装甲だけ硬くてもな!」


 機体内に仁の声が響く。それを聞き、少女の目は僅かに細くなった。


「看過出来ない侮辱です。マスター、破壊の指示を」


 コックピットに敷きつめられたディスプレイには片足を上げるリスパが映る。手を失ったので今度は蹴りを放つつもりなのだろう。


「ああ、やられたらやり返さないとな」


 優が中に据え付けられた座席に座り、そう言った瞬間、リスパの蹴りがハルシオンの頭部目がけて放たれた。再び辺りに轟音が鳴り響くが、やはりダメージを負ったのは仁のリスパの方だ。その衝撃でバランスを崩した仁のリスパは尻もちをついたままで立ち上がることが出来ない。


「こ、こいつ! 許さんっ!」

「奇遇だな。俺もそのつもりだよ」


 仁の叫びに優は底冷えのする声でそう応える。それと同時にハルシオンが仁のリスパを殴りつけた。


「がはっ!」


 優のパンチは仁のリスパが最初に打ったパンチとコースが酷似していたが、結果は大違いだ。仁の機体は大きく吹っ飛び、自身を生んだ詠唱機創造陣(マザーランナー)にぶつかった。


「くそっ、俺のリスパが」


 仁のリスパはもはや酷い状態になっていた。具体的には、右手を失い、左足は体を支えきれないくらいに損傷。そして、肩のつけ根辺りはハルシオンのパンチで大穴が空いていた。


「くそはお前だろ、仁」

「言わせておけばっ! 次はボコボコにしてやる!」


 仁は何とかリスパを立ち上がらせようとするが、どうやっても足が動かず、もがくような動きしか出来ない。


「次ね。しかし、仁、まだ一発残ってるんだが」

「は?」


 何を言われているか理解できず、仁は間の抜けた声を出す。そんな仁を見ながら、優は思わず口角を上げた。


「お前には二発やられたからな。もう一発残ってる」

「ひっ!」


 リスパが怯えたように手足を振るわせる。優は中にいる仁に見せつけるようにゆっくりハルシオンの足を上げた。


「やられたらやり返す。それがこの世界、アールディアでの俺のモットーだ」


「そ、そんな。もう一発くらったら俺のリスパは」


「機体を愛してるんだな。見直したよ。だが、理解力は足りないか? お前は機体よりも自分の身を心配すべきだな」


 ハルシオンは威嚇するように駆動音を上げた。それと共に足にマナが集まっていく。


「き、【機動強化魔法(フィジカルエンチャント)】。何て出力……」


「お前だけ高速詠唱機(スペルランナー)がないのは格好がつかないが……まあ、しばらくベッドで過ごすんだから気にするなっ!」

読んで頂いてありがとうございました。


次話で消えていたら申し訳ありません。



………大丈夫かな?

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