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最弱の勇者は、最強の魔女に世界を壊される。  作者: ぺんぎん
帰還世界編
46/53

完全否定

 ――ああ……。


 教会がまるでパズルのように、

 粉々に分解されていく。


 代わりに別の建物を構築していく。

 それは見覚えのある場所だった。


「ゆうしゃ、さま」


 動揺する聖女様の姿が、半分変わっている。

 それが別人の姿に見えた。


 ――そうか。


 なんで気付かなかったのか。


「どうして、」

「俺は勇者ではありません。聖女様」


 真っ直ぐに、聖女様を見た。


「それと、」


 同時に切っ先を向けた。


「貴女は九条梓じゃない」


 ()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()

 彼女だけじゃない。


 教会が、学校の廊下へと姿を変えていく。

 だが、定まらない。


 廊下になったかと思えば、夕焼け色の教室にも変化する。

 おそらく、迷っているのだろう。


 どちらの光景が、どちらの姿が、


 如月勇人に、壊されない世界なのか。

 

「俺、気付いたんです」


 だからこそ、この世界の真相に気付けた。


「この世界は俺の為にあるわけじゃない」


 この世界はこの上なく都合が良い。魅力的でもある。

 だけど、その魅力的な世界は、『如月勇人』にとってではない。


 この世界は、


()()()()()()俺の為の世界だったんですね」


 『如月勇人』は自分の名前を嫌っていた。

 自分には不釣り合いな名前に、息苦しさを覚えていた。


 そんな息苦しさをなくす世界を欲していた。


 その為の勇者としての役柄だったのだ。


 勇者になって、敵となる対象を排除し、世界を救い、

 仲間もいて、好きな人もいる。


 その為の世界。

 同時にこの世界は、勇者には壊せない。


 自分が強く在れる世界を、壊したいと思うわけがないのだから。


「名前がないのは、俺が名前を嫌っていたから」


 村人だとか、勇者だとか、魔法使いだとか、剣士だとか。

 役柄ばかりを呼んでいたのは、


 名前を呼ばれたくない。

 魅力的な世界ですら、息苦しさを覚えたくない。


 そんな幼稚な我が儘だった。


「ある意味、『如月勇人』にとっても都合がいいですね」


 思わず笑ってしまう。

 名前に固執するあまり、名前のない世界を構築させてしまうのだから。


 滑稽としか言いようがない。

 それが、どうしようもない真相の一つ目。


 あと一つは、


「どちらが好きか」

「え……?」

「九条梓と聖女様」


 一歩踏み出した。


「ずっと考えていたんです」


 頭の片隅で燻り続けていた、疑問。

 

 ――梓と聖女様。


 鏡に映したように、瓜二つの少女。

 なのに、性格はまるで違う。


 そんな二人の少女に、どちらに対しても想いを寄せていた。


「どちらが好きか、そうじゃないか」


 最低だが、そんなことを考えていた。

 だけど、


「そんなことを考える自体、そもそも間違っていたんです」


 最低だと思うなら、最低な自分をもっと理解すべきだった。


「聖女様」


 もう一歩踏み出した。


「……っ」


 聖女様は怯えたように、一歩下がった。


「貴女を好きなのは、俺じゃない」

 

 構わず、俺は断言した。


()()()()()俺が、貴女を好きだったんです」

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