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確信
「梓」
「何? 勇人」
「大丈夫か?」
「何が?」
切り返し方も、笑い方も、いたって普通に見える。
だけど、どこか辛そうだった。
「体調、まだ治らないのか?」
梓の様子は変わらない。
変わらない筈なのに、時々虚ろな目をしていることがある。
遠くを見ているような、そんな目だった。
「勇人が気にすることじゃないから」
言いながら、何度か目を擦る。
眠そうな姿は誰かと重なる気がする。
「なあ、梓」
「何?」
「眠れないのか?」
梓はきょとんとして、首を振って笑う。
「眠れてるから大丈夫」
「そうか。なら――」
『俺』は梓に向かってこう言った。
「今が一体、いつか分かるか?」
「え? それは――」
梓はなんてことのないように西暦を口にする。
「――でしょ?」
梓の様子は変わらない。
仕草も声も、至って普通に見える。
だけど、『俺』は反射的に梓の腕を摑んだ。
「勇人?」
「――行くぞ」
引きずるような形で、梓を連れて行く。
「行くってどこへ――」
「鬼頭先生のところだ」
困惑する梓に、『俺』は振り返らずに口にする。
途端、梓が息を呑むのが分かった。




