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雑音
――音が聞こえる。
『 』
それはノイズ音に近く、音や声にすらならない。
そんな、雑音。
ただ、その雑音が酷く心地よく聞こえる瞬間がある。
ずっと耳を傾けていたい。
そんな感情に流されそうになる。
『 』
音が『声』に聞こえる瞬間がある。
何故だろうか。
耳を澄ませようとして、それをぎりぎりのところで踏み止まる。
理性が言っている。
耳を傾けていけないと。
それを聞いてはいけないと。
でないと、帰ってこれなくなってしまう。
その理性に引き留められ、いつも音が聞こえないふりをする。
だけど、何故だろうか。
ひどく眠くなってしまうのは。
逆に理性のほうがうるさく感じてしまうのは。
聞いていけない。
きいてはいけない。
キイテハイケナ――
「――梓?」
ポツリと名前を呼ばれた。
我に返れば、≪彼≫が心配げにこちらを見つめている。
その度に、私は、
「何? ――勇人」
笑って相槌を打っていた。




