嫉妬
どうしても言えない。
そんな感情を持て余していて、
「言えよ」
友人に言われた。
「言って楽になれよ」
「自白を強要するなよ」
「するだろ。普通に」
友人に真っ直ぐな眼に射抜かれて、『俺』は言葉を窮してしまった。
「楽になりたいんだよ。もう……」
「……」
「オレなんか秒だぞ、秒」
泣きそうな顔で、友人は言った。
「好きだったんだよ、こっちは」
知っていた。友人が『俺』と『君』が歩いていたら、
からかいながらも、辛そうな顔をしていたことを。
上手く行けばいいと思っていた。
『君』と友人ならお似合いだし、何より、友人相手なら諦められる。
言わない理由ができる。そんなことを考えていた。
最低、そのものだ。
「お前が何考えてるか分からないけどさ」
「……」
「言えば良いだろ」
「俺は……」
「言えばいい」
友情と嫉妬がごちゃ混ぜな目を向けられた。
「オレは、お前が羨ましい」
「……っ」
羨ましいのは『俺』のほうだ。
人気者で、明るくて、真面目で、気さくで、
そんな友人を誇りに思う一方で、妬ましさも感じていた。
彼のようだったら、
『君』に好きだと言えたのに。
* * *
「勇者?」
「けん、し……」
「良かった、目が覚めたんだな」
剣士はほっとした様子で息を吐いた。
「びっくりしたぞ、急に倒れたから」
「倒れた……?」
「ああ」
宿か何かだろうか。天井が見える。
どこだろうか、ここは。
「……剣士」
「?」
「聖女様のこと、好きか?」
「は!!?」
驚くほど、剣士の顔は真っ赤になった。
「なんだよ、急に……」
「……」
黙って見続ければ、観念したらしい。
「まぁ、お前には悪いとは思ってる」
「じゃあ、」
「けど勘違いするなよ? オレはお前と聖女様の仲を邪魔するつもりはないし、上手く行けばいいと思っている」
剣士は聖女を想いながら、勇者のことも大事に思っていた。
「『魔女』を討って、早く幸せになれよ」
純粋に思っている表情に、誰かの表情が重なった。
『オレはお前が羨ましい』
割り切れない感情をぶつける友人の姿。
その姿が今、無性に懐かしく思えた。




