結果
「勇者」
塔を降りていけば、魔法使いに声をかけられた。
「お師匠様は?」
「……」
「勇者?」
魔法使いの声が素通りしてしまう。
――彼女は、君の為なら、世界を壊す。
――君が望んで叶わないことなんてない。
――試しに望んでごらん? 結果は後から付いてくる。
錬金術師の声が幾度も頭の中で繰り返される。
「なんで……」
世界を滅ぼすことが何故勇者の為になるのか。
何故、『魔女』は、
「勇者?」
心配げに顔を覗き込んでくる魔法使いに、勇者は『大丈夫だ』と言いかけて、
――君が望んで叶わないことは、
魔が差した。
「魔法使い、剣士って生きてるよな?」
もし、本当に願いが叶うなら、死んだ筈の剣士に会いたい。
「逃げろ」と言ってくれて、非業の死を遂げた友に。
会って話したい。
「勇者、何言ってるの?」
怪訝な顔をした魔法使いに、勇者は苦笑いを浮かべた。
「だよな、悪い。変なこと言って……」
「剣士なら隊員の中にいるじゃない」
「……え?」
時が止まった。
勇者の変化に、魔法使いは尚も話を続けた。
「一緒に魔女を倒そうって、怪我も治っていないのに、無理矢理――」
「その言い草どうなんだよ」
人懐っこそうに笑いながら、現れたのは、
「けん、し……」
「どうだ? 錬金術師と話せたか?」
「私じゃなくて、勇者に聞いて。お師匠様は勇者と何か話してたから」
「そうなのか?」
剣士はきょとんとしてから、勇者に笑いかけた。
「どうだった、勇者。何か収穫があったか?」
「……で」
「?」
「なんで、剣士が、お前が……」
「お前まで『なんで』とか酷くねえか」
若干傷付いた様子でありながら、剣士は頼もしい言葉をかけてくれる。
「俺がいた方が安心だろ」
「……」
剣士が生きている。生きて、話しかけてくれる。
嬉しい筈だ。望んだ筈だ。
なのに、
「勇者?」
ゾッとした。




