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勇者

カクヨムでも投稿中の作品で、こちらでも投稿を始めました。

読んで頂けたら幸いです。

 いつも夢を見る。

 『君』の夢だった。

 『君』はいつも俺の前を歩いていて、後ろ姿が俺にとっては当たり前で、日常だった。

 ある時、俺は『君』の名前を呼んだ。振り返った姿に、俺は緊張して、

 それでも必死で声を震わせながら、

 『君』に言った。


 「好きだ」と。


 『君』は目を見開いて、俺に何かを言いかけた。

 あの時、『君』が何を言いかけたのか。

 俺はその夢の続きを知らない。


* * *


「――ってば。勇者ってば!」

「!」


 びくりと目を開ければ、至近距離には、一人の少女がいた。

 十二、三歳といったところか。

 幼さが残る顔立ちで、むくれれば、ますます子供っぽさが際立ってしまう。


「勇者、今、絶対失礼なこと考えてたでしょ?」

「あ、いや悪い」

「そこは否定してよ!」

「いや、それは……それよりどうしたんだ、魔法使い。俺に何か用があったのか?」


 露骨な逸らし方に、少女はじとりと睨んだものの、「まぁいいわ」とため息を吐いた。


「何回呼んでも、返事しないんだもの。どうかしたの?」

「いや、悪い。寝てた」

「ふうん。立ちながら?」


 そこでようやく『勇者』は、自分が立っていることに気が付いた。


「いや、なんかその修行だ、修行」

「立ちながら、寝るのが?」

「いつ敵に襲われていいようにな」

「敵なんかもういないじゃない」


 そこで少女――魔法使いは誇らしげに胸を張った。


「だって、私達が倒したんだから」


 魔法使いの言う通りだった。

 勇者たちがいる世界はかつて、ドラゴンに支配され、恐怖と絶望を繰り返す世界だった。

 それはドラゴンと人間の戦いは数千年も及び、言い伝えでは世界が生まれた時はドラゴンが人間を食料としていた時期もあったと言う。


 その戦いに終止符を打ったのは、勇者(俺)が率いる仲間達だった。

 以来、勇者達は世界で英雄として崇められており、世界に平穏が齎されたのだ。


 目の前にいる少女もまた、勇者と共にドラゴンを滅ぼした魔法使いだった。


「言い訳でも何でもいいけどさ。勇者はもっと平和になれるべきだと思うよ」

「いや、まぁ正直戸惑っているんだ」


 戦いに明け暮れた日々を思えば、今の平和は得難いものだと理解できる。

 それでも長年の癖はそうそうなくなりはしないものだった。


「早く剣を持たなくなるのも慣れたらいいよ」

「それこそ癖だな」

「もう、そんなこと言ってたら聖女様を不安にさせちゃうよ」


 ぎくりとした。勇者の変化に、魔法使いはにやにやし始めた。


「今日も会いに行くんでしょ?」

「……ああ、まあな」

「ついて行ってもいい?」

「……聞きたくないんだが、なんでだよ」

「勇者があたふたしてるところが見れるから」


 悪趣味だ。魔法使いに引っ張られながら、勇者は密かにため息を吐いた。

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