Ep.5《熊退治》
『グアァア”アア”ァ”!!!』
「うおおぉぉぉおおぉ!!!!」
森の昼下がり、小鳥が鳴き、動物たちが日向ぼっこに心血を注ぐこの時間。
俺は家の仕事の合間、今日も魔物を倒す。
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クリムゾンベアー...
森に棲む熊型の魔物。全長はおよそ5メートルあり、赤と黒の毛並みが特徴的。
摂氏四百度を超える高温の爪を主な武器とする
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『アア”ッ!ア”ッ!!アア”!!』
クリムゾンベアーの灼熱の連撃が俺に放たれる。
「うお!わっ!あぶな!」
スレスレの所で連撃をよけたが、四百度もあると避けても近くにいるだけで火傷しそうだ。
それに...
__くそっ 重りのせいで体がうまく動かない!
そう。この超重量肌着、著しくスピードが落ちる。
「なっ!!」
愚痴のような思考に頭を働かせていると目の前にクリムゾンベアーの熱爪が映った。
身体が死の危険を感じて周りが遅く見える。
__っ!死...
「なない!」
俺は咄嗟に体をねじり、熱爪をよける。
渾身の一撃をよけられたベアーに少しの隙が見えた。
今だっ!!
後ろ腰に装着していた斧を素早く手に取ると、
避けた時の勢いを利用して大きく斧を振りかぶった。
「でやぁあああああ!」
斧の刃が勢いよくベアーのうなじに向かい、
_いける!
「がっ!!」
ベアーの裏拳に吹き飛ばされた。
バキィッ!
数十メートル先の大樹に打ち付けられる。
その何かが砕け折れるような音の正体が樹なのかはたまた自分の体からの音かは分からないが、
俺は衝撃でくぼんだ樹の幹からはいずり出る。
その時、
「っ!?」
ベアーが熱爪を振り上げた状態で俺の目の前にたたずんでいた。
__速い!
『アア”ァッ!!』
俺は体を横によじり攻撃をよける。
先刻俺の頭が存在していた場所に熱爪が突き刺さり、
『ア”?』
そのまま食い込んだ爪が抜けなくなっていた。
_攻撃を当てるなら、いまだ。
そう悟ったオレは、目の前の割と細い木へと走った。
(体のダメージと肌着の影響から、もって後15秒...
主には肌着の重さの影響が強いが、それなら)
細めの樹に差し掛かった途端、その目の前で俺は跳んだ。
身体をねじり空中で横向きになると、伸ばした手を木に引っ掛ける。
「ふンッ!」
自分の重量と勢いをそのまま生かし、つかんだ木を中心として
横回転をかける。
勢いをつけつつ横向きの前回りを数回やり、さらに強い勢いをつける
_自分の重量を、遠心力に変えろ! もっと速く!速く!
血流が足先へ下り、意識が跳びそうになる。
『ア”ア”ッ!!』
爪を地面から抜き、前かがみだった姿勢からベアーが急に頭を上げる。
_今度こそ、今だ!
タイミングを合わせてつかんだ木を離し、総重量172キロの人間弾丸がベアーに放たれる。
すぐさま気づき、防御をとろうとしたベアーだが
『アァア”ッア”!!!』
「ああアあぁぁあああっっ!!!!」
勢いをつけた人間弾丸の圧倒的な速さにより、
『ガア”ハァ”ッ!』
俺の踵がベアーの頭蓋骨に大きなひびを入れた。
ちなみにこれは後に《人間踵弾》ととして俺の正式な技として入れることとなる。
「ハァっ!!ハアぁっ!ハァっ。」
倒れたベアーの横であおむけとなり、俺は息を切らしていた。
もう指一本、動かせない。
「倒したか」
師匠の声だ。
木と空しか見えない俺の視界にひょっこりとしわしわの顔が映る。
「あ痛っ!」
師匠が持っていた杖で俺の頭を小突く。
「今 儂の要旨に関してとても失礼なことを思ったじゃろ」
__読まれてる!?この変態糞ジ...
バコッ
「ごめんなさい」
「はぁ、たかが熊にどれだけ時間をかけておるんじゃ、
ほれ立て。あと49匹じゃ」
「え」
_うそでしょ
師匠の言葉に耳...いや、鼻から目から皮膚全体でもその言葉を疑った。
師匠はきょとんとした俺の顔を見て
「なにを『え、うそでしょ』みたいな顔をしておるんじゃ?
【一日50体は自分より体の大きい魔物を倒すこと】
規定を忘れたか?」
この時俺は、師匠が一番の魔物なんじゃないかと疑った。
それはもう、魔王とかそういうレベルではなく
それ以上のもっとすごい方向の...
やっぱりこの老人。
変態糞ジ___
バコッ!!
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