山本くん、試着される
裸になった佐藤さんをしっかりと見る。
見なければ先に勧めない。
大きい胸、うっすらと弱々しくも、大事な場所を隠そうとしている色が濃くなり始めた産毛。
大人になりかけている佐藤さんだ。
大事なところが熱くなる。
近づいてくる佐藤さんに、頷き、目を瞑る。
頭上のチャックが下ろされていくのがわかる。
チャックを下ろされてしばらく経つと、体と心が離れていくのがわかる。
完全に俺の中に入ったのかな?
チャックが閉められる感覚がする。
というか、佐藤さんの方が背が高いはずなのに、俺伸びてるのかな?
今では、目も開けられない。
本当は体の内側だと思う。でも外側に触れられている感覚だ。
脛と脛、太ももと太もも、腕と腕、お腹とお腹、背中と背中、唇と唇、鼻と鼻…。
まるで裸同士が抱き合っているような感覚だ。
不意に、目が開く。僕は自分の掌を見ている。
佐藤さんが俺の体を試着しているのだろう。
「監督、問題なく動きます」
「最初だから支えますね…これで……歩けますか?」
ぎこちなく、一歩進んだ。歩くということは感覚、つまり佐藤さんは、自分の体の感覚で歩こうとしているのではないか、間違っていると教えようとするが、声が出ない。そうだ喉も佐藤さんの者となっているのだ、当たり前だ。繋がり…そうだ、心の声で」
”佐藤さん聞こえる?”
”あっ、山本くん?”
”うん、佐藤さんの記憶で歩こうとしたら駄目だよ、俺の記憶を探ってみて…”
”わかった”
俺の中の記憶…触られたのか? くすぐったいような、何とも言えない感覚だ。
今度は、自分の体と同じように、自然と歩き始める佐藤さん。
”同じ人なのに、こんなにも違うんだ…”
”そのうち慣れるのかな?”
”どうだろうね”
歩き始めると、佐藤さんの体と、俺の体が擦れる。
大事なところも擦れる。
”ご、ごめん。き、気持ちよくなってきちゃった、ちょっと止まって”