遥、触れ合う
「監督、今、良いこと思いつきましたぁ!!」
「うん。先ほとも言ったけど、全部手探りなの良いも悪いも、やってみないと、わからないわ」
私は山本くんを立たせると、そっと手を握る。
「男の子の手、運動会とか体育の授業以外で、触ったのは初めてかも。硬いんだね」
「俺だってそうだよ。柔らかくて温かいね」
「なるほど。そういうことですか、ちょっと手を放してね」と大山監督は席を立つと、鞄からタブレットを取り出す。
「遥かも山本くんも授業で習っていると思うけど…。念のために説明するわね。私たち国民は、戦勝国からの完全支配として<ナノサイズの監視用チップであるIoT ver.78>を体内の両手両足、脳、脊髄、生殖器に埋め込まれているわ。これは体調管理、感情検閲、移動履歴、売買の支払い履歴、視聴履歴、性行動の履歴、強制心停止機能をネットワークにて管理するためよ。そしてあなた達がやろうとしていることは、性行動の履歴として記録されるの。だから、ちょっと待っててね。首都戦のパートナーを探すための検証許可を承認してもらうから…」
承認とやらを待つことにする、手を触るのもダメだったなんて、驚きだった。
「いいわ、もう一度、お互い両手を触れてみて」
特に問題はなさそうだ。満足したから、次は、ぎゅっとハグする。
「私、大胆になってきた。体も硬いんだね。筋肉だらけだわ。でも弾力が凄いよ」
「柔道で鍛えてたから。やっぱり俺より背が高い。女の子って、全身柔らかいし良い匂いがする」
「山本くんって、話しやすいし、昔からの友達みたい」
「あ、ありがとう。何か照れるよ、そんな事誰にも言われたことないし」
「ねぇ、太ももに当たってるのって」
「うん、勃起しちゃった」
「いいよ、全然」
「ごめんって言わないよ。こんなの気にしてたら、首都戦出れないもんね」
「うん、じゃ、いよいよ、着てみますか?」
私は、山本くんの頭部にチャックを付ける。
「わっ、ま、待って。これ開けたら、脳みそとか内蔵出ちゃったり、しないよね?」
「大丈夫と思うけど、気になるなら、掌からやってみる?」
掌にチャックを付けて、開けてみる。
「お、おぉぉっ? 中身が空洞になってるっ!?」
「大丈夫そうだね。じゃ、監督、山本くんを試着?してみます」
山本くんの見ている目の前で、堂々と服を脱ぐ、恥ずかしがったら駄目だ。
下着になって山本くんをみると、恥ずかしそうに下を向いていた。
「山本くん」と呼んだ。
「は、はいっ!?」
「ちゃんと全部見て」
「う、うん…」
私は、遂に山本くんの前で全裸となったのだ。
「………」
山本くんは絶句していた。