色色、コーチする
色色は、音音のチームメイトと共にミーティングルームにいた。
旧式のLEDの光彩は目にきつく、弟の顔も青白く見えた。
「お姉ちゃんは、戦略とか作戦とか全然立ててないでしょ?」
図星を指され慌てるチームメンバー。
「そ、そんなこと…」
いきあたりばったりな戦いは今思い出しても恥ずかしい。
「言い訳はなし。時間の無駄」
色色は、優勝候補の一角である、北条 奏を例に上げ、その戦法を伝授する。
「みなさん、ここまで、いいですか?」
緊張感のない音音たちに少し苛立ちを思える。
6日目の24チーム組み合わせ抽選会(前回優勝校含む)にて、決勝まで色色と音音が当たらないとわかるや否や、色色は音音にコーチを申し込んだ。
「決勝まで、お姉ちゃんの対戦相手には強敵はいません。良いですか? 決勝は、北条 奏、お姉ちゃん、俺か石田のチームです」
目には敗北感が漂っていたが、奮迅するように興奮した色色だった。
「石田は強敵です。正直、僕では勝てないかもしれない。ですが…決勝は毎回、必ず北条と残り2チームの共闘になります。今までもそうでした」
ミーティングルームに重い雰囲気が充満する。
「もう一度言います。僕を倒した石田だとしても、必ず共闘してください。北条は別次元の強さなんです」
「話がそれました。次は個別のフォームへアドバイスを送ります」
ミーティングは夜遅くまで続いた。
「ありがとう、色色」音音に抱きつかれる。
色色は、また出会えたことに心から感謝していた。
「音音お姉ちゃん…絶対に生きて…」
何故こんなに胸が締め付けられるだろうか?
今夜このときが、姉と自分の最後の時間だからだろうか?
「感がてみれば、北条と北村って、両方、北が付くのね、キタキタ対決」
音音にかかれば、緊張している自分など、馬鹿みたいに思える。
「そうだね。またね」
自然とまた会えるような気がしたのだ。
どんな手を使ってでも、石田に勝つ。
姉のために、自分のために。




