宗助、逮捕される
シード権のある奏でを一回戦から参戦させてしまいました。
訂正して、2回戦以降の話からに変更させて頂きます。
全国大会前に、山下との交際を戦勝国へ申請した宗助であった。
首都戦出場者ということもあり、半年はかかる手続きも即日に完了する。
今日は山下が記念にと、手料理をご馳走すると言い出したため山下の家に来ていた。
両親は不在のため、この家には俺と山下の二人きりだった。
「宗助くん、何か不思議な気分ね」
嬉しすぎて子供のようにはしゃぐ山下は新鮮だった。
「手料理と言えば、肉じゃがかなと思ったけど、まさかのおでんとは…」
夏だがクーラーの効いた部屋で、微かに漂うおでんの香りに食欲が出る。
両手の怪我も完治し、自分の手で食べられるのも気分が良い。
「鰯のつみれとか、はんぺんとか、私の手作りなんだからね」
具を選ぶ俺に、熱のこもった声で、それ以外を選ぶなと言っているようだ。
半強制的にはんぺんを食べさせられるが、歯切れがよく素材と染み込んだ汁の味が味音痴の俺にも美味いと思わせる。
「美味しいよ、これ。俺、おでんで美味いと思ったの初めてかも」
山下は絶賛のうちに終わった手料理の評価に満足したようだ。
二人で後片付けをしていると、夫婦ってこんな感じなのかと思った。
横に並んだ山下は、すらりとして細く身体の曲線は触らなくても柔らかい印象を与えていた。
俺はたまらず、山下の息が泊まるほど、力強く抱きしめてしまった。
「宗助くん、苦しいよ」
そのまま山下を押し倒すと、<ナノサイズの監視用チップであるIoT ver.78>が生殖器に埋め込まれていることを思い出す。
だが山下と性行為がしたかった。子供を作りたかった。俺が死んだとしても何かを残したかったのだ。
それは快楽を求めた元のではなく、純粋な遺伝子の伝達であった。
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宗助が目を覚ますと、ベッドの上で固定されていた。
ここは何処だ? あれは…山下との行為は夢だったのだろうか?
「石田 宗助。君は覚えていないと思うが、現行犯逮捕されたんだ」
その言葉に重苦しい空気になった…俺だけが。
複数の白衣を着た男女が俺を取り囲む。それがとても恐ろしかった。
「本来ならば処分されるのだが。君は首都戦出場者であり優勝候補だ。優勝すれば上級国民となり、性行為さえ自由だったのだ。後少しの辛抱だったのだが順番を間違えるとはね」
これだから敗戦国の国民はといわんばかりの露骨に蔑む表情であった。
「君が首都戦で負けた場合、山下も処分対象になる」




