音音ちゃん、目立つ
1日目、1回戦46チーム組み合わせ抽選会が終わった後、全国大会出場記念祝賀会が催された。
選手代表として、北条 奏が文句のつけようのないスピーチで場を盛り上げる。
私は会場の隅で、記者たちからインタビューを受けていた。
「また群馬県・決勝のような戦いができると思いますか?」
「はい。全国大会に出場するチームは、どこも素晴らしい実力を持っていますから…」
スピーチする北条さんと、何度か目が合う。睨まれているのだ。
私だって好きであなたのスピーチ中にインタビューを受けているわけじゃないのよ、と言いたい。
監督が記者たちの質問をさえぎり、やっとインタビューが終わる。
ビュッフェスタイル、好きなというか、人生最後の食事になるかもと思いながら、高カロリーな食べ物を優先的に選ぶ。
「音音のお姉ちゃん…」
その懐かしい呼び方に振り向くと、色色がいた。
「色色、どうしてっ!」
「それはこっちのセリフだよ。なんで首都戦に参加しているのさ」
「それは…」
「音音のお姉ちゃん…誰にも負けないで、せめて僕がお姉ちゃんを殺すから」
二人の緊迫した雰囲気も知らずに、また一人声をかけてきた。
「私は、富山県代表、清水 レイラ。明日の対戦相手よ」
「あっ、わざわざ、ありがとうございます」
「俺は行くから」
色色はそれだけ言うと立ち去った。
もっと話したかったが、何を話せば良いかもわからなかった。
レイラの監督が慌てて駆け寄ってきた。
「駄目だよ、レイラ、対戦相手同士は、トラブルのもとだ」
「平気よ、ね? 音音さん」
「は、はい」
大声をあげるレイラにほぼ全員が注目すると、その中から聞こえてきたのは、”音音”、”音音”、”音音”、”音音”、”音音”だった。
レイラも、奏も、あらゆる女性が、音音に嫉妬するのであった。




