風花ちゃん、遥と逢う
私は、北村 音音ちゃんにどうしても会いたくなって、高崎市まで来てしまったのだ。
一応、特別に連絡先を北村さんの学校の先生から教えてもらえたのです。内緒です。
「風花ちゃん?」
先に声をかけてきたのは、音音ちゃんだった。
TVで観た音音ちゃんと違い、私よりも背丈が低かった。
「どうして、私のこと知っているの?」
「私の中に、少しだけ、遥ちゃんがいるの」
「この左腕は遥ちゃんの左腕なの。勝者の特権だって。私が寝ている間に移植されたんだって」
音音ちゃんの差し出した左腕を両手で受け止める。
「遥ちゃんの…」
「うん、いずれは、どのぐらいかな? わからないけど、私の細胞で置き換わっていくらしいけど、今は、間違いなく遥ちゃんの左腕だよ」
「本当だ…2つ並んだほくろ。幸運のほくろだって、遥ちゃんが言ってたよ」
「そうなの? 嬉しいな。それでね、質問の答えだけど。遥ちゃんの左腕に慣れさせるために、少しだけ遥ちゃんの記憶が私の中にあるの」
私達は歩きながら話を続けた。
「会いたくて、会いに来たのだけど、実際会うと、頭ゴチャゴチャで何話していいかわからなくなるよ」
「遥ちゃんと一緒にいると思うようにしてみて?」
「うん」
「じゃぁ、聞いちゃうね。遥ちゃんは、私と音音ちゃん、どっちが好きだったの?」
「えっと…」
「本当のこと言ってください」
「う、うん…。 遥ちゃんは、ずっと私のことを怖がっていたの。でも、最後は…殺されるなら私の手で…と思っていたわ。最後は心から愛してくれていたわ。でも風花ちゃんに告白して振られた記憶があるわね」
「えっ!?」
「小5のときの夏休みのプールの帰り、遥ちゃんは、風花ちゃんに告白してるわ」
「覚えてるわ。でも…本気だったなんて」
「もし、全国大会で優勝できたなら、私達、付き合いましょう?」
「えっ!?」
「私の中には、遥ちゃんの思いもあるの、それは自然と私と融合しているのよ。私にとって、遥ちゃんは、他人じゃないの」




