色色、驚く
群馬県・決勝をTVで観た色色は、轟く。
「何で、音音のお姉ちゃんが…」
音音は、色色の双子の実の姉である。
両親が反逆罪で死刑になったとき、里子として山形県に住む若い夫婦に引き取られていたのである。
あまりのショックに四日間も学校を休む。
夕方、俺のパートナーである倉沢 杏奈が、宿題のプリントを持って見舞いに来てくれた。
「いらないのに、プリントなんて」と俺はムッとした顔となる。
「ご、ごめん…でも、先生が…」
杏奈は、こんな性格なのだ、とても首都戦などに出れるようなタイプではない。
「あの…TV観たよね? あの子、お、音音ちゃんは…」
「俺の双子の姉だよ」
「やっぱり、似てるから、もしかしてって…」
「杏奈さ、これって国が俺達姉妹を殺そうとしてるのかな? 偶然じゃないと思う」
「わ、私も…思った…」
杏奈はそっと手を出す。俺はその手を握る。
「誰が来ても、勝とうな、杏奈」
「うん」
翌日から、全国大会に向けて、調整とは言い難いほどの練習をする。
「杏奈、まだまだだ。リンク率、70%なんて、全国じゃ普通だ」
「うん、もっと上げよう」
俺だけじゃない、バスケの木村も、ゴルフの山口も、体操の小林も全員が、夜遅くまで杏奈と練習する。
「よし、今日はここまでにしよう」と監督が言う。
「このまま風呂入って寝たい」と山口くん。
実は、監督を入れて6人で合宿をしているのだ。
「コラ、みんなのために、夕食を作ってくれているんだぞ」
「はーい」と全員が返事をした。
みんな元気なふりをしている。
布団に入れば、各々、死への恐怖と戦っていた。
小林くんは、毎晩のように泣き崩れ、寝れば小6にもなって、おねしょをしているのだ。
みんな心を保つだけで精一杯なのかもしれない。




