遥、苦戦する
不定期に投稿します。
遥は、追い詰められていた。
まさか前橋代表が、スケートフォームなどという、レア男子ウェアを着用してるなんてっ!
ランダムに決まる会場だが、選ばれたのが陸上競技場というのも劣勢の原因だ。
どんな原理のカスタムかわからないが、氷上でない場所でも滑走できるってチートよね。
超接近用の柔道フォームを着用する遥は、トラックを縦横無尽に走る前橋代表を捕まえられないでいた。
遥は、野球フォームへのチェンジ指示を出すと、自軍のベンチが慌ただしくなる。
6年2組 久保島くん、ポジションは勿論ピッチャーで、武器は高速で繰り出す鉄球だ。
「なんで、この状況で、用意してないのよ」
遥は苛立つが、冷静さを失ってはいけないと気持ちを切り替え、前橋代表の出方を伺う。
周囲を回っているだけで、攻めてこない?
柔道フォームである、6年1組 山本 大志くんを恐れている?
山本くんは、全国小学生学年別柔道大会で、全国3位を獲ったのだ、捕まえられれば勝負は決まるだろう。
ベンチにフォームチェンジはなしとサインで伝えた。
常に前橋代表に向かって走り続ける遥、逃げる前橋代表…。
もうすぐ前橋代表側に2度目の戦意なしの警告が出るだろう。
2度の警告後は、前橋代表側へ5秒間ランダムに10丁のライフルから発砲されるのだ。
掲示板で、警告までのカウントダウンが始まった。
それに合わせ前橋代表は、一直線に向かってくる。
こちらの監督が何か叫んでいるが、目を離す訳にはいかない。
前橋代表は攻撃範囲外でジャンプした。
また視界ギリギリのところには、前橋代表の交代フォームが走り込んでくる。
まさか…空中でフォームチェンジ?
スケートフォームを空中で脱ぐと、合わせるように空手着を着た男の子が走り込みながらジャンプ。
空手着を着た男の子は、空中で自分の頭部からジッパーをお臍まで下ろす。
前橋代表の女の子は、スケートフォームから空手フォームへ華麗に空中でフォームチェンジすると、そのまま飛び蹴りを繰り出してくる。
私は全神経を山本くんとリンクする。
今の限界、山本くんとは70%までだが。
リンク率が高いと肉体、精神、思考、記憶、すべてが共有化されてしまうのだが、私には夢がある。
全国大会を制覇して、群馬県を首都にするという夢がっ!!
”飛び蹴りの裾だ。”
山本くんの声が響く、裾を掴むと、そのまま一本背負いの態勢に持ち込み、前橋代表を投げ飛ばす。
前橋代表は地面に激突した。
リンク率を限界まで上げたため、意識が薄れる…もう、立ち上がらないで…。




