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北関東にある目的の駅に着くと、文は電車を降りて、駅の改札に向かった。
文と一緒に降りた乗客は三人だけだった。
文はゆっくりとした足取りでホームの上を歩いていたので、その三人は文よりも随分と先に、駅の改札を抜けてしまったようだった。
文が駅の改札を通ると、その先に加奈はいた。
奥山加奈。
小学校のときに転校して離れ離れになって以来、初めて会う自分と同じ十六歳の高校生になった加奈が駅の待合室に用意されたプラスティックの椅子に座って、じっと文のことを待っていてくれていた。
文はそんな自分の空想の中でしか会ったことのない、成長した加奈の姿を、少しの間、ただぼんやりとその場に立ったまま、じっと眺めていた。
加奈は文と同じように、約束通りに学校の制服を着ていた。
文の着ている紺色のブレザータイプの制服とは違う、シックな黒いセーター服。
文の空想する加奈はいつも文と同じ、文の通う都内にあるお嬢様学校の制服を着ていたので、その黒色の制服を着ている加奈の姿に(すごく似合ってはいたのだけど)、なんだか不思議な違和感のようなものを文は感じていた。
「……文ちゃん?」
加奈が誰かがそこにいる、と言う雰囲気を感じて顔をあげた。
加奈はじっと文の顔を見つめた。
一瞬、加奈はそこに立っているのが、小学生のころの自分の一番の親友である牧野文だとは、わからなかったようだった。




