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親愛なる未練  作者: 紅ト
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3.2 貴方に差し上げます

 

「……どちら様ですか」


 唾すら飲めない状況に、精一杯の平常心を保ちながら問い掛けた。


「おや、お嬢さんだけではなく僕ちゃんも知りたがりですね。そうですね、いずれ国中に知れ渡りますしね。いえ、もう広まっていますか」


 二人の隙間から手が伸びてきた。綺麗に整えられているがそれは男の手だった。


「次の土地神になられる導き手の偶像(アイドル)ゲン様ですよ。ほらここです」


 トントンッと指を差した。確かにそこにはゲンという名前が書かれている。しかし職業のところには降霊術士とある。


「ふふふ、幸運ですね。誰より早く新たな神を崇めらますよ。良かったですねぇお二人さん」


「拝める相手の姿も見られないんじゃ意味ないのでは?」


 首には未だに手が添えられている。その手の人差し指がちょんと爪をたて皮膚に食い込んだ。


「……ホテリ様。貴方、まだ自分が売られた事分かっていないのですか?」


 触れるだけの、跡が付かない触り方に背筋が凍る。ティアナにこの男、ここ数日であった奴ら、一部ではあるが俺の能力を理解して対策していたように思えた。

 俺の能力はお互いを認識しなければ使えない。相手をどれだけ知っているかで精度も変わる。それなりの情報量がいるのだ。しっかりと目に焼き付けなければいけない。大量の情報を一瞬で読み解くにはやはり見るのが手っ取り早い。こうして背後をとられ相手の存在がはっきりしないのは致命的なミスだ。


「貴方様の武器は一昨日壊されたと報告があります。この国では登録された武器を使わなければ能力は発動しない。

壊された後、一週間ほど能力を使えません。再申請には時間が掛かりますものね。(わたくし)の今の行動は万が一の為……。あとはお嬢さんが何者か調べても出てこないからですねぇ。ホテリ様は人質なのですよ」


「ゲンさん、でしたっけ。じゃあ教えて下さいよ。俺の情報を売ったのはどこのどいつですか?」


 要らないことをペラペラと話すゲン相手に無性にイラつく。だが短剣はないです、なんて正直に話すとどうなるだろうか。予告通り首と胴体が離れるか……。けれども俺の武器は壊れた、という情報で助かった。タイミングを図って精神を入れ替えれて拘束すればなんとかなるだろうか。


「貴方様の同級生です。ホテリの武器は鈴が付いた杖だ、そう教えてくださいましたよ。それといつも一緒にいたお友達の事も――」


「あのっ!」


 ゲンの言葉を遮りイブが叫んだ。少し離れた人達が一瞬こちらを向いたがすぐに元に戻った。後ろの奴は笑顔でも作っているのか?


「わたしの持ってる短剣をお渡しします。なのでホテリさんは見逃して頂けませんか」


 横目でイブを見ると右手を胸に当て深呼吸をしていた。向こうも俺に気づき、口角を少しあげた。何も知らされていないだろうイブは武器を持っていないと思っていたが違うのか?それとも言葉通りなのか。記憶の短剣ではない別の短剣、命乞いのために持たせているのか?


「賢明な判断です。ありがたく受け取ります。しかし、短剣を全て回収しなければいけないのですよ。この男の短剣も頂けますかお嬢さん?」


「ホテリさんの短剣はティアナが持っています。武器もないホテリさんに短剣を渡す理由はないでしょう?」


 ごもっともな理由付けでイブは誤魔化してくれた。


「まあそうですよねぇ。お嬢さんの短剣は頂くとして……。もう一人のお嬢さんにすぐ短剣を持って来るよう伝えてください」


「いつ来るかは分かりません。なので、先に貴方に差し上げます、受け取りなさない!!」


 そう言い叫ぶイブは懐から短剣を取り出し後ろに振りかざした。


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