第五節
舞台袖で、最後のマイク調整を行っていると、横に立つ信が肘で突っついてきた。私は声を潜めた。
「何?」
「おまえ、本当に舞台に立つのか?」
「当たり前でしょ。何の為に今日の日まで練習してきたの?」
「そりゃあ、そうだけど」
煮え切らないシンの態度に、私は苦笑を漏らした。
「まだ納得してないの?」
「納得するわけないだろう。おまえなぁ、せっかく伸ばしていた髪を男みたいに切って、かずじぃのところに単身乗り込んで、OKされるとか、行動力ありすぎ。ついでにかずじぃ無謀すぎ」
半眼で睨まれた所で、私には特に効果はない。笑って流した。
「だって、シンに言ったら止められるでしょ? だから、今日まで黙ってたんだよ」
「・・・最後のメンバーの顔合わせが初披露当日って言うのが意味分かんなかったけど、まさかこうなるとはな。お天道様がひっくり返る思いがしたわ」
「ふふっ。けど、合わせる自信ならあるよ。シンとは小さい頃から一緒だったしね」
「俺だってある。けど、舞台は俺たち2人のものじゃない。もう一人のメンバーとも息が合わなきゃダメなんだぞ?」
「そこは、オレがシンの動きに合わせるから、シンがそれっぽく誘導してよ」
「おまえ、いつからオレっ子になったんだ?」
「アイドルのサツキが生まれた時から。君の幼なじみの長峰 皐は、ずっとシンの隣にいられないから、オレが代わりにシンの横に立とうと思ったんだ」
「さよで」
ブザーが鳴り響き、スタッフさんたちが慌ただしく行き交いはじめる。
ようやく出番だ。
「これから、よろしくね。シン」
「こちらこそ、よろしくな。ナツキ」
肩の辺りに手の平を上げ、同じように持ち上げたシンの手の平、目掛けて振り下ろす。
―――パンッ
乾いた音が響き渡る。
スタッフさんの合図で、私はシンと、もう一人のメンバーの三人で舞台へと走り出した。
ここから始まる、私たち『スリーナイト』の活動がーーー。
END




