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第3節
何とも空前絶後な出来事が起こってしまった。
家に帰り、部屋のベッドの上で寝転がりながら、今日あったことを反芻する。
信がアイドルデビューするなんて、今でも信じられない。
小さい頃からずっと近くにいた信が、このままどこか遠くへ行ってしまうような、不安と焦燥感に煽られた。
応援したい気持ちと、遠くに行って欲しくない気持ちが入り乱れ、胸が苦しい。
舞台の上で光り輝く信と、大勢のファンの1人に成り下がる私。いつか信の瞳から私の色がなくなり『その他大勢』になってしまうのだろう。
そんなの嫌だ。私を『永峰 皐』として見て欲しい。けど、こんな自己中極まりない我儘なんて絶対に言えない。言えるわけがない。
ループする考えに、ふと視線を上げると、自分の姿を映す姿見が目に入った。
まだ成長途中の身体。中より少し上な顔立ち。胸元まで伸びた長い髪。
何が最善かは分からない。
けど、“その時”の私にとってはこれが一番の最善の策だった。
私は机の引き出しの中から鋏を取り出し、そしてーーー。




