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スリーナイト  作者: 海埜ケイ
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第1節

この物語は一人称小説になります。とても短い物語なので、少しの間お付き合いください。

【登場人物】

永峰ながみね さつき 主人公、女、長髪、癖っ毛。

あずま しん 幼馴染み、男、短髪ストレート


昔からマイペースだなぁと思っていた。

自分のやりたいことをやって、やりたくないことはそれとなく受け流す。

要領が良いのかな? 人から頼まれ事をすることなく、自分の時間を満喫しているように見えた。

私とは正反対だ。


「永峰、これ数学準備室まで運んでおいてくれ」

「分かりました」

先生に頼まれて、私は教卓の上に置いてあった約40人弱分のノートを持ち上げた。

「永峰さん、手伝いますよ!」

「ありがとう。けど、これくらい大丈夫だよ」

クラスメイトが手伝いを申し込んでくれるが、そこまで量がある訳じゃないので断ったがーー。

「永峰さん、大丈夫ですか? 半分持ちますよ」

「永峰さん。それ俺が持っていきますよ!」

「永峰さん、途中まで一緒なので隣を歩かせてください!」

廊下を出た辺りから複数の男子生徒に声を掛けられた。

当たり障りないように断りながら歩くので、歩幅が非常にゆっくりになる。

(段々、顔が引き攣ってきたかも……。少し疲れたな)

そう思っていると、ふいに腕が軽くなった。

「あ・・・」

「こんなところで、ちんたら運んでいたら次の授業に遅刻するぞ」

教室で寝ていたはずの信が、ノートを半分以上持ってくれた。

「おい、東! 俺が永峰さんの手伝いをしてあげようとしてたんだぞ! 邪魔するなよ!」

「はいはい、次手伝えばいいだろ。ほら、行くぞ」

「う、うん。みんなごめんね。けど、気持ちは嬉しかったからありがとう」

「な、永峰さん・・・」

みんなに笑顔を向けて軽く手を振った後、私はすぐに信の元へ駆け寄った。

運ぶのを手伝ってくれるのはありがたいが、歩幅は合わせてくれない。

流石はマイペース。小走りでようやく肩を並べることができた。

「手伝ってくれてありがとう、信」

「別に。たまたま目に入っただけだから」

「へぇ? 寝てたのにたまたま目に入ったんだ」

「そう、たまたま」

妙に強く主張してくるので、単なる照れ隠しだとすぐに分かった。

クスクスと笑い声を立てると、信は眉間に皺を寄せて「笑うなよ」とふてくされる。

「ごめん、ごめん。けど、本当に助かった。あのままだったら次の授業に遅れるし、もしかしたらノートを落としていたかもしれない。だから、ありがとう」

信は口をへの字にしたまま長く息を吐いた。

(え、何? 私なにか変なこと言った?)

不安になり顔を覗き見するが、相変わらずの仏頂面に内面が見えてこない。

沈黙の中、数学準備室に辿り着き、空いている机の上にノートを乗せた。

「これで良し、と。早く教室に戻ろうか、あら・・・」

振り返った瞬間、信が目の前に立ち私を見下ろしていた。

「え、あ、・・・何? 信、どうかし」

言葉を続けられなかった。

信が盛大な溜息と共に、私の肩に顔を埋めてきたからだ。

「おまえなぁ~~。誰もいない準備室に男子と二人きりなんて格好の餌だぞ? 少しは警戒してくれよ」

「何で、信相手に警戒しなくちゃいけないの? わけ分かんない」

「俺相手じゃなくて、さっきの連中のこと! 明らかにおまえ目当てのヤツばっかりだろ。お父さんは心配で仕方ないんだからな」

「お父さんw。・・・心配しなくても大丈夫だよ。信が心配するほど、私は弱くない」

「皐・・・」

「それに、みんな親切で言ってるだけだからさ。モテるわけでもないし、私なんかに気がある人なんていないって」



「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!!! そこっ! その無防備なところが心配なのっ!! 男子高校生の欲求舐めんなよ! 言っておくけどな、皐! おまえみたいなふわふわ頭なんて格好の餌食だからな!」

「ふわふわ頭・・・。やっぱりアイロンとか掛けた方が良いのかな? この癖っ毛」

「ボケるなよ! 基本、俺がボケでおまえがツッコミなのに、その法則を壊すなよ!」

「あははっ。信ってば、自分でボケって言ってる」

「皐~~」

恨めがましげに睨んでくる信を見て、私は短く息を吐いた。

「分かったよ。校内では絶対に男子と二人きりにはなりません」

「・・・本当か?」

「本当、本当。・・・あ、でも」

「でも?」

「今のこの状況はノーカンでいい?」

尋ねると、信はようやく顔を上げて、微笑を浮かべた。

「二人きりになるのは俺だけにしなさい」

「はーい」

私は笑って返事をした



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