作家女王と萌え豚魔王(その2)
「ばーーばかな⁉」
空より舞い降りた天馬車をその目にして、ケリーは驚愕し、思わず声を漏らした。
希少な浮遊石を使用して作られる天馬車は、高貴な身分の者を乗せている証。
しかも、その天馬車の御者は、カーラーン最強の騎士である剣聖セシリア・フィリスが勤めていた。
まさかーーカーラーン王が乗っているのか⁉兵も連れずに天馬車ただの一台で、敵総大将たる魔神王の御前に現れたというのか⁉
ケリーがその信じられない光景に唖然としていると、天馬車のドアが内より開かれた。
「お初にお目にかかります。私、カーラーンを統べる、フィオーナ・レイ・カーラーンと申します」
天馬車から出てきた少女はそう名乗り、自身のスカートの端を軽くつまみ優雅な所作でお辞儀をした。
「すーー素晴らしい‼まさか私が数百年魔王城に引き篭もっている間にカーラーン王がロリ女王になっていたとは‼しかも美少女!しかもしかもロリィちゃんと同じ美しい桃色の髪‼ツインテとか似合いそうですね!!!」
「あ……貴方が魔神王殿ですか?」
「如何にも。私こそが四神将を従え、全ての魔物を支配する魔神王」
「もっと怖そうな方かと思っていました」
そう言って、フィオーナはにこりと微笑んだ。
「もーー萌〜〜‼‼‼」
きもっーーと、魔神王の奇声に思わず口に出してしまいケリーは慌てて自分の口を抑えた。
「くすっーー面白い方ですね」
面白いか⁉怖いだろう、いろいろな意味で!ーーと、カーラーン王の反応にセシリアはそう言いたくて仕方がなかったが、この場はグッと堪えた。
「……魔神王殿。城にお招きする前に、聞いていただきたいことがあります」
そう言ったカーラーン王の表情からは笑顔が消え、なにやら神妙な面持ちである。
「ふむ。なんですかな?ひょっとしてロリィちゃんとリザどんの感想ですか⁉読んでいただけたのでしょう、あの名作を‼いや、人間の創作能力には関心致しました!しかも人間と魔物の共存を描くとは!きっとあれを描いた者は「あれを描いたのは私です」」
「ーーは……?」
「あれを描いたのはーー私なのです……」
頬を赤らめながら、カーラーン王フィオーナ・レイ・カーラーンはそう言った。