和平と四神将(その2)
魔王城最上階に位置する玉座の間。
砕けた紫の同命珠が示したその場所に、屍魂導神デスレイブはできうる限りの速さで駆けつけた。
ーーのではあるが、それは他の四神将も同じことのはず。しかし扉を開いたその先の光景は、彼にとって予想外のものだった。
「屍魂導神デスレイブ、只今参上致しました。……。四元法神と天獄界神は、まだ来ておらぬのですか?」
床面積にして八百平方メートルもある荘厳な玉座の間には、玉座に座る魔神王と、その横に控える無双闘神の只二体のみしかいなかった。
イルリムより魔王城に近い位置でリオウと戦をしていた四元法神と、この魔王城に待機していたはずの天獄界神が、何故イルリムとの国境で戦をしていた自分より遅いのか?
もしや、それこそがこの度の緊急招集の理由なのかと、デスレイブは思考の根を伸ばす。
「彼等とは既に話を済ませた。イルリムとの国境にいるお前は、彼等より大分遅れるのは分かっていたのでな」
その魔神王の返答にデスレイブは安堵した。
彼等の身に何かが起こったなどという予想は、どうやら杞憂だったようだ。
それはそうだ。
デスレイブは知っているーー如何なる人間の兵器も、技も、たとえ天変地異であろうとも、四神将をどうにか出来ようはずもない。できるとすれば、それは唯一魔神王のみであると。
「そうでしたか。上質な飛竜の骨がもう少し手に入れば、魔神王様をお待たせすることも無くなるのですがーー。もう暫く、御容赦願います。して、此度の緊急招集は如何なる御用ですかな?不謹慎ながらこの屍魂導神、滅多に起こらぬこの緊急招集という事態に、胸が高鳴ってしまっております」
「ほほう。お前はそんなにも刺激に飢えていたか。では、これを読み更に胸を高鳴らせるがよい。高鳴りすぎて気を失わぬように気をつけよ、クフフフ」
そう言って、魔神王はデスレイブに木箱を差し出した。
『ロリィちゃんとリザどん』の収められた木箱をーー。