人物画
午後2時。
約束の時間の10分前。午後1時50分にファミレスの前へと到着。すると、彼はもう既に来ていた。
「こんにちは。先日はどうも。」
私は軽く会釈をしながら、彼に言った。
「あ、こんにちは。こちらこそ。じゃあ、立ち話もなんなんで、入りましょうか。」
そして、平日の昼間の閑散としたファミレスへと入り、コーヒーと紅茶を頼み、絵の話へとうつる。
「あの絵を描いてから、もっと色々挑戦しようと思って、色んな絵を描いたんです。これがそれなんですけど、、」
そう言って彼は私にスケッチブックを手渡す。
中には風景画や抽象画など様々なジャンルの絵が描かれていた。
確かに上手いが、あの時のような不思議な感覚へ導く力はなく、小手先で描いている印象を受けた。
「どうですかね、、」
彼が恐る恐る聞く。
「うーん、どれも上手なんですけど、なんと言うか小手先で描かれているような、、
あ、素人目なのでこんな事言うのなんなんですけどね。」
「やっぱり。」
彼は落胆したようだ。
「正直、自分でもあの絵とは違う。何か秘められた力がどれも感じられなかった。ただの絵だって感じなんですよね。何故かあの時は自然と絵に入り込む事が出来た。でもこれを描いていた時はどれもそうはならなかった。何が違うんだろう。」
ここで私はある事を思い付いた。
「思ったんですけど、やっぱり響也さんは人物を描く方がいいんじゃないですか?すみれさんの絵を見た時も、私の絵の時もですけど、響也さんは秘められた力がある絵を描く時って人物画のような気がするんです。」
彼はハッとした表情で私を見つめ、こう言った。
「やはり、そうですか。まさか同じ事を思っていたとは、、
薄々気付いてはいてて、、
でも考え過ぎかなって思ってたんですけど、蘭さんに言われて、確信に変わりました。」
「そうですか。私、響也さん、人を見る力が凄くあると思ってて、それが関係してるんじゃないかと考えているのですが、、」
少し控えめに意見を述べた。
「なるほど。確かに人間観察は好きですからね。
よし。こうなるといてもたってもいられない。早く絵が描きたい。もし良ければ、またモデルをやってくれませんか?もちろん、お礼はします。」
彼の顔がみるみるうちに明るくなり、モヤが消えていく。
私はお礼はいらないと言い、その代わりいくつか聞きたい事があるから、それを答えてくれと頼んだ。
すると、少し不思議そうな顔をしたが、その後すぐに彼は快く引き受けてくれた。
そして、私達はファミレスをあとにした。




