絵
画家を目指す若者、田中響也に絵のモデルになってくれと頼まれた数日後、彼から電話がかかってきた。
「もしもし、小宮さん?こんにちは。田中です。」
「もしもし、どうも。こんにちは。」
「あ、よかった。携帯の使い方教えてもらえたんですね?」
そう。電話がかかってくる前にある程度の操作をすみれさんに教えてもらっていた。
「はい。電話がかかってきても、扱えなきゃ出れないと思ったので、、。それで今日は?」
「なるほど。えと、今日はいつにしようかっと思って電話したんですけど、、」
いつでもいいと言ったのに、わざわざ電話で確認する律儀な奴だなと思ったが、声には出さず、また前回と同じように、いつもでもどうぞと伝えると彼が明後日を提示してきたので、それを了承。
「えーと、モデルをするって事ですけど、服とかはどうすればいいんですか?」
気になっていた事の1つだ。
「あー、いや普段着でいいですよ。ありのままを描きたいんで。」
そして、もう一つ気になっていた事。
「わかりました。じゃあどこへ向かえばいいでしょう。」
「そうですね。前回のファミレスでどうですか?あそこなら、僕の作業場も近いですし、、」
なるほど。まぁ実際、今はあそこしかわからない。
「わかりました。ではまた明後日ご連絡します。」
お互いそう言って電話を切った。その後、私はいつも通り、妖の達と過ごし、すみれさんに人間の世界の事を教えてもらっていた。
そして、約束の今日、私は絵のモデルになるべく、響也と初めて出会ったファミレスへ向かう。絵のモデルになるためとは、なんどか変な話だが、実を言うと私は一度だけモデルになった事があった。
それは江戸時代の後期にお偉いさんの愛人をしていた時の話。彼は私と過ごした日々を残すため、絵師達に私の絵を描かせた。現代で言う浮世絵である。その現物は恐らく今は残っていないだろうが、あれが最初だった。
しかし、今回は浮世絵というものではなく、西洋風の絵になるにだろう。そういうのを見た事がない私にとって、どんな絵に描くのかが楽しみな部分もあった。
あれこれ想像を膨らませるうちに、ファミレスに着いた。店内には彼が既に座っていた。彼は相変わらず、奇抜な格好をしている。私は店内に入り、彼の席へと向かった。
「遅れてすみません。今日よろしくお願いします。」
「いえいえ、時間ぴったりですよ。こちらこそ。よろしくお願いします。」
彼は深々と頭を下げた。
とりあえず、お互い飲み物を注文し、話を始めた。
「響也さんは、どういった絵が好きなんですか?」
「あー、そうですね。」
そう言いながら、大きなカバンをごそごそと漁り始めた。そして、そこから大きな本を取り出した。
「こういうのですね。」
それはピカソという人物が描いた絵の本だった。彼の服装と同じようにかなり奇抜で子供の落書きのように感じたが、すごく味のある絵だった。
「これすごいですね。」
「子供の落書きみたいでしょ。でも何となく、気になる。それにこの人、本当はめちゃくちゃ絵上手いですからね。」
「そうなんだ。こんな風な絵を描く描きたいんですか?」
「いや、僕にはまだ早すぎる境地です。感じたものをそのまま絵にするのが、限界です。そこからが勝負なんですけどね。」
絵にもそのような世界がある事を知り、私は凄く興味深いジャンルだ感じた。
「あ、ごめんなさい。語っちゃって、、」
「あ、いえそんな事ないですよ。頑張って下さい。」
そんな話をしながら、2人は飲み物を飲み切り、
「じゃあ、そろそろ行きましょうか。」
そう言って、2人は店を後にした。




