愛
私の人生は理解し難いものだろう。
そして、彼は今それを聞いて、どう思っているのか。
沈黙が生まれ、私はそれ押しつぶされそうであった。ゆっくりと時間が過ぎ去り、彼は少しずつ脳内で今、自分が聞いた夢物語のような事実を理解していく。その行程を私はただ待つことしか出来なかった。
「未だに信じられない。もちろん、蘭さんを信用していないという訳では無いです。でも、こんな事が現実にあるなんて、、、」
心境を吐き出すかのように言った彼の気持ちを私は十分に理解していた。
人魚が私を助け、唐突に生まれた半人間で半妖の私。自分でも未だに完全にこの仕組みを理解しておらず、ただ受け入れているだけであった。私ですらそんな状態であるのに、会って数回の知人の友人であった者に突然告白され、そのような話をされ、簡単に理解が追いつくわけが無い。
でも理解して欲しい。私はあなたが好きだ。初めて私の心境を包み込むように理解してくれた人間。その証拠に今も私に気を使って言葉を選んでくれている。そんな彼が好きでたまらなかった。
容姿などをなしにして、等身大の私を絵に映し出した彼の力は紛れもなく本物である。私はその力が愛おしい。彼にこの気持ちを受け入れてもらいたい。
「わかってます。そうですよね。そんな事、簡単に受け入れられるはずないですよ)。でも気持ちだけは伝えておきたい。後悔は残したくないなって思ったんです。私はあなたが好きです。初めて感覚的であったとしても、私の心境を理解してくれた人。長い歴史の中で、1番あなたに惹かれました。本当はもっと時間をかけて、ゆっくりと説明がしたかった。でも世の中、そう上手くいかないものです。あなたが好きだと思った時に私は死期がきた。それは受け入れなければならないもので、あなたはそれにどう答えてくれるのかが知りたい。無理なら、答えてくれなくてもいい。気持ちを伝えれただけでも幸運だから、、、」
「そんな、、、。確かに今でもその事実が何かのドッキリなんじゃないかと思うくらい突拍子もないなと思っていますよ。でも妙に必死で、そして何より僕もあなたが気になっていた。だから、余計受け入れたくないのかもしれない。はは。人の心は手に取るようにわかるのに、自分の事は理解出来てないなんて、本当にダメですね。」
彼はぽつりぽつりと心境を吐露していく。
「僕、幼い頃から、人の顔色ばかり伺って生きていたんです。だから、人の感情は手に取るようにわかる。あなたを初めて見た時も何か得体の知れない闇を感じました。それはすみれさんも同様で、長い歴史を感じるものだった。そして、あなたとすみれさんはすみれさんは人間ではない。そいう言われるとその雰囲気が納得がいく。でもドラマとかなら、ここから物語が始まる。そんな時にどうしてヒロインが消えてしまうのか。色々、驚いていて、頭がパンクしそうですよ。でもこうやって口に出すと何か理解が追いつきますね。少し落ち着きましたよ。」
やはり彼は本当に才覚のある人間だ。すみれさんや私の事を初対面で理解する。大抵の人間は私達の容姿しか見ない。誰もその中に隠された本当の人格を見ようとはしなかった。それを知っても理解はしてくれなかった。だから、彼に惹かれたのだろう。またそう実感し、彼の心の中でも確実に私という存在がいるということに嬉しさが溢れた。
「答えを出さなきゃならないですよね。僕も。蘭さん。」
いよいよ来る。私はどうな答えでも受け入れる。そして、未来へ世界を動かすために死ぬのだ。




