出会い
人魚の肉を食らって、永遠の命と永遠の美を手に入れた私は、小宮蘭という偽名を使って、数百年ぶりに人間の世界へやってきた。
理由は人間の世界で生活している親友のろくろ首が仕事を手伝って欲しいと頼んできたからだ。ろくろ首はいわゆる姉貴肌の女性で、容姿も私に負けず劣らず綺麗だ。妖の世界に来た当初も彼女には凄くよくして貰ったし、500年間に色々相談してり、されたりもした。彼女のおかげで世の中、全てを恨むという事をやめられた。この世界で唯一の私の親友。そんな彼女の頼みだ。断る訳にもいかない。私は少し戸惑いを見せたが、承諾した。それに江戸時代の頃に比べて、すっかり様変わりした現代社会を私もこの目で見ておきたかったから丁度いい。殿様連中から巻き上げた金を使って、妖の世界でろくろ首に服装や髪を現代風に整えてもらい、現代社会について教えてもらった。そして、彼女の仕事先の人間とファミレスという場所で会う事となった。
数日後、久々に人の世界へやって来たが、聞いてはいなものの驚いた。私がかつての江戸の姿はどこにもなかった。堅そうな鉄で覆われた巨大な建物群と鉄の塊が走ったり、飛んだりしている。呼び方も江戸から東京に変わっていた事にも驚いた。江戸の頃しか見た事がない私にとっては新鮮味でいっぱいだった。
しかし、あいも変わらず人は変わらないもの。男達や女までも私に見惚れている。でも芸能だか何だかで使いを使わず、自分から声を掛けてくる男が増えたのは少しの進歩と言えよう。
そして、そうこうしている内に目的地であるファミレスと呼ばれるものに着いた。
外観は茶色いレンガに覆われ、ピカピカと光るアルファベットの形をした鉄が店名と思われるものを形どっていた。
「いらっしゃいませ」
小綺麗なウェイターのおじさんが笑顔で応対してくれた。
店内は赤とオレンジのタイルに少し薄暗めの黄色い照明。いわゆる西洋風であった。
「何名様でしょうか?」
「先に来ているはずなんですが、、」
どうすればいいか分からず、少し戸惑っていた時、奥の席からろくろ首が顔を出し、声をかけた。
「こっちこっち!」
ろくろ首は笑顔でこちらに手を振っている。
私はそのままウェイターに会釈をし、彼女の席まで向かった。席は彼女1人だったので、どうやら仕事関係の人間はまだ来ていないようだ。
「いや〜助かった。あいつ、私じゃダメだって言うんだよ。知ってる人紹介しろってうるさくてさ。」
何の話かわからないが、私の助けを必要としてるのは間違いない。
「で、何の仕事なの?私は漁とか農作業しかわかんないよ?」
「あはははっ!今時、そっちの方が珍しいよ。大丈夫。そんな面倒な事は頼まないよ。まあ、私が説明するより、あいつの説明の方がいいと思うから待ってね。」
結局よく分からないまま、彼女の仕事相手を待つことにした。
すると数分後に目つきが鋭い長身の男が店内に入ってきた。
「おーい。こっちだ。」
彼女がその男を呼ぶ。どうやら彼が仕事相手のようだ。のしのしとこちらにやって来る彼はオーラが歪で見た事がないタイプだった。
これが彼との最初の出会いだった。




