決心
蘭はすみれの悲しい過去を知り、自分だけが不幸なのだと思っていた過去をより一層恥じた。
「死ぬ前にすみれさんの話を聞けて良かったです。出来る限り思い残す事がないようにしたいので。」
「そうかい。やっぱりあんたは私とは違うよ。私は人々を恨み、世界を憎んだ。でも、あんたは違う。ちゃんとこの世の理を理解して、それに適応していく。凄いやつだよ。」
すみれさんは少し宙を見ながら言った。それは涙が出そうになるのを堪えているようだ。
「いえ、私も自分ばっかり不幸になる、とか思ってましたから。一時は世界中全てが腹ただしかった。でもそんな事考えても仕方が無いなって。どれだけ恨んでも世界は何も変わらない。私は世界にとって取るに足らない存在なんだって。だったら私を大事にしてくれる周りの人間をより一層大事にしたい。そう思ったんです。」
「は〜。立派だよ。あん時の私はそんな事全く考えずにただ暴れるだけだった。許されざる行為だ。償っても償いきれないんだよ。」
「少しずつ償えばいいんです。私みたいにすみれさんによって救われる人が必ずいますから。」
「ありがとう。」
そう言いながら、すみれさんは涙をポロポロとこぼしていた。そして、思い出話をしながら、寝床につき、朝を迎える。
一刻も早く、彼に思いを告げたい。ほんの一瞬でもいいから、結ばれたい。自分の欲である事は分かっているが、どうにもやり切れない気持ちがあった。
寝床で携帯を見ると、メールが1件入っていた。
響也からのメール。
「今日は一日空いてますよ。じゃあいつものファミレスでいいですか?」
私は了解のメールを送信し、準備を始める。いつも以上に気合が入ってる事は誰の目にも明らかだった。
そして、私は様々な決心を胸に彼の元へと向かう。