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78.5代目大魔王の後日談  作者: 塩乘馬 異状
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初代大魔王 鐘白百合臼

「行動力のある馬鹿ほど恐ろしい存在はいない。」

この言葉は魔界で子供達が真っ先に教わる教訓の一つである。何故このような教訓が生まれたかは彼女が原因である。

初代大魔王ユリウス。彼女は限りない極悪非道の策略から、正々堂々バックアタックやはめ技を行い魔界を初めて武力と恐怖、トラウマで統一した魔族である。

別名最悪最凶の腐れ外道としても知られているユリウスは、自分の姪を二代目大魔王をとして公表すると魔界から忽然と姿を消した。

その後この初代大魔王失踪事件は魔界七不思議として後世に語り継がれた。


5000年後、鐘白家の最も広い和室で一人の和服ゴスロリの幼女が布団の寝転がり目の前の巨大なディスプレイでテレビゲームを満喫していた。

鐘白家の大黒柱及び自宅警備員を担っている鐘白百合臼(かねしろ ゆりうす)は楽しいことが一向に見つからないため今日も1日自室待機を決め込んでいた。

しかし、そんな彼女の思惑は一人の魔王により阻まれた。


「叔母さん起きてますか?もう、昼食出来ていますよ。」


「なんじゃ、白式か。(われ)は今日は自室待機をつもりじゃ。だから、飯はいらんと幼霧に伝えておいてくれ。」


「いや、貴方昨日も自室待機でしたよね。一昨日も先週もそうだったですよね。そろそろ自室から出てきてください叔母さん。」


白式の言うとおり、百合臼は3週間前から自室待機を継続しており食事どころか睡眠すらしてない。

短気の百合臼は白式の説教が鬱陶しく、思わず手に持っていたリモコンを白式の顔面にストレートで投げつけた。

白式の顔面に命中したリモコンは百合臼の豪速球に耐えられず粉々に粉砕した。


「貴様、よくも吾のリモコンを。」


「いや、投げた貴方が悪いでしょ。僕じゃ無かったら死んでましたよ。」


「煩い、煩い。ガミガミ説教するでない。吾はお主の叔母じゃぞ。年上として少しは敬え。」


「叔母設定にしたの貴方ですよね。それに誰が見たって叔母さんが年上になんて見えませんよ。」


「お主の方が5cmばかりデカイだけじゃろ。」


「5cm違えば大きな違いですよ。」


ここでも140cmの甥と135cmの幼女のような叔母とで行われている不毛な争いを百合臼の昼食を持った幼霧は遠目で眺めていた。



「百合臼さんもたまには外に出てはいかがですか。」


それは幼霧の些細な提案から始まった。

現在百合臼の自室はゲームや漫画、ライトノベルなど溢れおり、正に塵屋敷同然なのである。

綺麗好きの幼霧はその現状を見逃すことが出来ず百合臼の自室の大掃除を行うことにした。

この場合この部屋に生息する自宅警備員が邪魔となり、自宅警備員を追い出すために提案をした。


「と言われても吾に外への用事などないぞ。白式は何か予定はないのか?」


「予定ですか。特には...あ、そういえば最近墓参りに行ってないのでご一緒にどうですか。」


「お主先週も行ったではないか。また、行くのか。いつまで昔の事を引きずっておるんじゃ。まあ、別にそれでも構わんが。」


行き先が決まると白式は彼岸花を片手に百合臼と墓地へ向かった。

ちなみに幼霧には3時になるまで帰ってくるなと言われた。


「幼霧のやつ家主である吾を追い出すとは初代大魔王の尊厳など影も形もないではないか。」


「その外見では尊厳なんてありませんよ。ところで何故髪色を変えたのですか?」


本来百合臼の髪色はくすんだ銀色のはずだが何故か鮮やかな琥珀色に変色していた。


「銀髪では目立つじゃろ。吾は目立つのは嫌いなんじゃ。」


「その派手な和服ゴスロリで十分目立つと思いますが。破壊と強奪を司る魔王とまで呼ばれた貴方の口からそんな言葉が出るとは思いませんでしたよ。」


今何気にカミングアウトしたが鐘白百合臼は初代大魔王ユリウスと同一人物である。

最も行動力のある馬鹿とまで言われた大魔王ユリウスが現在自宅警備員を勤めているなど誰が予想するだろうか。


「まあ、初代大魔王になったのはただの副産物に過ぎんからな。本来なら遊んで暮らせる印税生活を目指していたのじゃ。」


「魔界に印税なんてありましたっけ?」


勿論魔界には印税など存在するはずがない。なぜ初代大魔王になってしまったかは本人ですらわからないのである。

ちなみに百合臼は自分が魔界でなんと呼ばれているか待った知らない。もし、自分が行動力のある馬鹿なんて言われていると知ったら魔界など既に消滅していただろう。


自宅から徒歩10分に存在する鐘白家が所有する広大な土地。そこは大量の墓石で埋め尽くされた巨大な墓場となっていた。それら全て白式の親族や勇者との戦いで戦死した魔族達の墓である。

その数はかるく1000を越えており全てを墓参りするものなら丸一日あっても足らない。


「お主まさかこの墓全てを回るつもりじゃないだろうな。」


百合臼は目の前に広がる墓石の数々を指で数えながら白式に質問した。

もし、「はい。」だったら彼女は直ぐ様回れ右して自宅に逃げていただろう。初代大魔王が怖じ気づくほど、目の前の光景が異常だったのである。


「まさか、お盆でもありませんし、無垢季だけですよ。」


「お盆の日はお主が一人でやっておるのか。」


「はい、そうですけど。速くしないとおいて行きますよ。」


大量の墓石に怖じ気づいている百合臼を無視して白式は一人で先を急いだ。そんな白式を百合臼は慌てて追いかけた。


「これ程の墓を一人とは白式もはかり知れんの。」


ほとんど部屋から出ない百合臼にとって、白式の驚くべき習慣を知ったことは、ゲームで新しいバクを見つけるより大きな衝撃を受けた。


いつもの様に適当に選んだ花を無垢季の墓に供えるだけのつもりでいた白式としては目の前の惨劇か正直目を背けたかった。

鐘白家の墓場には招かれざる客が来ていた。一つの墓石が荒々しく破壊されており、その墓石の前には一人の青年が立っていた。彼の右手には彼の身長ほどある漆黒の大剣が握られていた。


「久し振りですね、デルゲリア兄さん。」


白式の目の前にいたのはあの時死んだはずの兄だった。

デルゲリアと彼の部隊の死亡は彼の使い魔からの報告であったが持ち帰られた物は彼の装備の破片だけで彼の部下の装備や肉片は無かった。

いくら勇者が相手だとしても肉片が一つも残らなかったことや部下の装備が無いことに白式は疑問に思っていた。

しかし、目の前にいる鬼の形相の顔でこちらを睨んでくる兄を見て全てを察した。


「部下に裏切られたのですね。」


勇者達に圧倒的に力を目撃した魔族の中には勇者側に寝返り魔族も少なからず存在。デルゲリアも部下と使い魔に裏切られ、勇者と対決する前に殺されかけたのだろう。現にデルゲリアの左腕は存在していなかった。


「だまれ、魔界を裏切った愚弟が。」


「別に僕は魔界を裏切ってなんていませんよ。どちらかと言うと魔界を救ったはずですが。現に今は僕のおかげで魔界から地球への侵入のみ可能になっていますし。」


「人間のふりをして生活をしているだけで十分裏切りに値する。何故父上や兄弟達の仇を撃とうとしない。俺は違うぞ。俺を裏切った奴等全てに復讐する。無論貴様もだ。」


「そうですか。なら僕は兄さんを殺すだけです。」


「笑わせるな。そんな物でどうやって俺に勝つ。無駄な悪足掻きなどよせ。」


白式が取り出したのなんの改造も施されていないただのカッターナイフだった。白式があの忌まわしき呪いを施すまでは。


無限強化(アンリミテッドオーバーエッジ)。」


突如カッターナイフは白銀の長刀に変形した。変形した長刀はデルゲリアは動くよりも速くデルゲリアの右腕を切り裂いていた。

そしてデルゲリアが右腕が切り裂かれたことを認識した時には白式は彼の両足を切断していた。

戦況は誰がどう見ても明白だった。デルゲリアは両腕両足を切断されて仰向けに倒れ、白式は倒れたデルゲリアの心臓に長刀を突き立てていた。


「何故だ。何故貴様が忌まわしき子供の瞳を持っている。」


風によって前髪が靡き露になった白式の両目には十三画の紋章が刻まれていた。その内片方はあの「無限強化」を持つ少女の瞳の紋章と全く一緒だった。


「迷惑なんだよ。魔族も勇者も、もう僕たちには関わるな。神偽 反命拷問器。」


白式がカッターナイフの本名を一時的に解放すると長刀から深紅の大剣へと変形すると、大剣から大量の短針が溢れだしデルゲリアを飲み込んだ。

カッターナイフに形状を戻した時にはデルゲリアの姿は何処にも無かった。


「よかったのか。其奴はお主の実の兄ではないか。」


「別にいいですよ。僕、デルゲリア兄さんのこと嫌いでしたし。それに僕はもう勇者や魔族に振り回されるのはうんざりですから。さあ、速く無垢季の所に行きましょう。」


白式が早足で向かった「鐘白無垢季」と書かれた墓は他の墓と比べてひときわ異彩を放っていた。墓の周りには統一性のない様々な花で溢れており、墓の前には大量の写真が供えてあった。


「お、お主どれだけの頻度で墓参りに訪れておるのじゃ。」


「週に一回ですよ。この花に劣化秒針(タイムリープ)を施しているだけですよ。」


「たかが花程度に目を使うでない。無垢季の二の舞になりたいのか。」


「無垢季の約束を守れないなら死んでも構いませんよ。」


急に白式が自殺を宣言したため、百合臼は慌ててあの約束のことを問いだした。


「お主まだ駄目なのか?」


「ええ、まだ無垢式のことを嫌ってしまう時があるんです。心の何処かであの子が産まれてこなければ無垢季は死ななかったと思うんですよ。あいつがいなけば...。」


「黙れ小僧。」


白式の発言は父親が言っていいものでは無かった。 その発言にキレた百合臼は魔力を過剰放出させて白式殴り飛ばした。

本来厚さ5mの鋼鉄の壁さえ貫通するその一撃を受けた白式は傷一つついて無かったが放心状態になっていた。


「貴様がそんなのでどうする。母親のいない無垢式を誰が守るんだ。そんなままでは無垢式はまた巻き込まれるぞ。吾は先に帰る。」


百合臼は白式を置いて一人で自宅へ帰ってしまった。



「分かってるよ。僕が無垢式を守らなきゃいけない事は、一番僕が分かってんだよ。」


墓場に一人取り残された白式の叫びに答える者など一人もいなかった。

戦闘シーンがかなりお粗末な感じになりましたがこれが私の限界でした。

アドバイスなどありましたらコメントしてくれたら幸いです。

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