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血濡れた恋  作者: つよちー
14/15

第十四話「思い出を忘れないように」

【前回のあらすじ】

謎の男が殺人鬼だと知ったジャック達。そしてその男はエミとも関わっていることを知り、彼女に男の正体を話した。

「あいつ、もう店に来なくなったぞ」

ある日グレイドにそう告げられた。

「本当ですか?」

「ああ、もしかしたらまた来るかもしれないから来週まで待ってみる。それで来なかったら来週から復帰だ」

俺はその知らせを嬉しく感じた。彼に了解の返事をし、俺は部屋に戻った。

「ジャックさん、どうしました?嬉しそうな顔をしてますけど」

そう言われ俺は咄嗟に彼女から顔を逸らした。顔が熱くなっていく。

「耳が真っ赤ですよ」

彼女にそう笑われながらからわれた。横目で彼女の顔を見ると小悪魔のような笑顔で俺を見ていた。

「う、うっさい....」

「ジャックさんがこんなに恥ずかしがってるの初めて見ました」

突然彼女は俺に抱きついてきた。それに驚くと彼女は俺の手を握ってきた。

「明日、一緒にデートしましょう」

少し赤くなった頰で微笑む彼女の笑顔をとても可愛らしく感じる。彼女の頭を撫でてその誘いを受けた。すると彼女は無邪気な子供のように笑った。


翌日、約束通り彼女と一緒に出掛けた。俺はいつもの服を着ていたが、彼女はお洒落をしてきた。時々家に居ないのはこのためだったのだろうか。

「どうですか?ジャックさん」

彼女は俺の目の前でひらりと一回転する。

「似合ってると、思う」

そう言うと彼女は嬉しそうに喜んだ。俺の手を繋ぐと

「行きましょうか」

と言った。俺はそれに頷き一緒に歩き始めた。俺はあまり外を出歩かないからこの町に一体どんな物があるのかは全くわからない。なので今回のデートのプランは殆ど彼女任せだ。彼女に手を引かれて俺はただただ彼女について行く。今度またデートに行く機会があれば、俺がプランを立てて彼女を楽しませたいな。彼女に案内され辿り着いた場所はあるレストランだった。彼女の説明を聞くと、東国の料理の文化を体験できるらしい。他の国の文化という概念を初めて知り、俺はそれにとても興味が湧いた。


東国の料理はとても美味しかった。珍しい料理ばかりで飽きずに楽しめた。

「次はどうします?」

彼女にそう訊かれたが俺は何も考えずに彼女に任せていたので

「お前に任せるよ」

と言った。彼女は首を傾げて考え出す。どうやら彼女もあの店に行くこと以外は考えていなかったようだ。彼女は苦笑いをして俺にこう言った。

「ぶらぶら歩きましょうか」

その答えと笑顔に俺は笑った。彼女は恥ずかしいのか俺の肩をポカポカと叩いて怒ってくる。その子供のような反応が何だか可愛らしく感じ、俺は彼女の頭を撫で手を取った。

「それじゃ、歩こうか」

俺は彼女の手を引いて歩き出した。ふと空を見上げると、雲が一つもない快晴だった。頭上に青い綺麗な空が広がる。こんな空を見たのは初めてだ。顔を下げ彼女の顔を見ると、太陽の光に照らされ一層綺麗に見えた。まじまじと見つめる俺を不思議に思ったのか

「どうかしましたか?」

と首を傾げてそう言った。俺は首を振って何でもないと言い再び前を向いて歩き出した。心が幸せに満ちていくのを感じる。これを忘れないように、思い出の引き出しに大切に仕舞っておこう。


日も暮れて宵闇が迫る。空は夕日に照らされて赤く染まっている。ずっと彼女と手を繋いで歩いていた。どれくらい歩いたか分からないくらいに俺たちは歩いていた。ふと辺りを見渡すと人は居なかった。

「さすがに疲れました」

そう言って彼女は俺に少しもたれかかってくる。

「もう帰ろうか」

彼女は笑顔で頷き、家へ向かった歩き出した。殆ど歩いているだけだったが、とても楽しかった。今度は本屋に行って彼女と一緒に読みたい本を探すのもいいかもしれないな。彼女の手を強く握る。彼女も微かに握り返してきた。幸せだ。その感情が心を満たす。


血塗れた手が綺麗になっていく。俺は遂に、普通の人間になれたんだ。


後頭部に強い衝撃を受ける。平衡感覚を失いその場に倒れる。エミの叫び声が微かに聞こえてくる。朦朧とする意識の中で俺が最後に見たのは、誰かに連れ去られる彼女の姿だった。そのまま俺は気を失った。


目を覚ますと、俺は何処かのベットに寝転んでいた。激しい痛みが襲いかかる。

「ぐっ....」

悶えると誰かが俺の名前を呼んだ。

「ジャック!」

声の主はグレイドだった。

「大丈夫か!?」

遂に意識がハッキリとした。エミが誰かに連れ去られた。絶対奴の仕業だ。俺は慌てて立ち上がり扉を開けようとしたしたが平衡感覚は完全に回復しておらず、俺はまた倒れてしまった。

「無理するな。一旦落ち着け」

「エミがあいつに連れ去られた。今すぐ助けに行かないと....」

「分かってる。今のお前じゃ駄目だろう」

そう言うと彼はそっと俺の肩を掴む。俺はそれを払いのけ、引き出しの奥に仕舞ってあったナイフを取り出す。

「自分のことなんかどうでもいい。エミを助けに行くんだ....!」

「まずはこれを見ろ!」

彼はそう叫ぶとある紙を差し出した。俺は差し出された紙を読み上げる。

『俺はジャック、お前と殺し合いがしたい。お前が勝てば少女は渡す。俺が勝てばどっちも殺す。日が昇る前に来なければ少女は殺す。警備隊を呼ぼうなんて考えるな』

紙の一番下には場所が記されてあった。俺はその紙を粉々に破り扉を打ち開けた。怒りでどうにかなってしまいそうだ。出口へ向かうとグレイドに腕を掴まれて止められる。

「離せ!時間がねえんだよ!」

「落ち着け!日が昇るまではまだ時間がある!まずは作戦を考えよう」

そう言うと彼は俺が握っていたナイフを取った。

「とにかく警備隊を呼ぼう。俺と外で待機する。お前は奴と死なない程度に戦って時間を稼いでくれ」

一旦深呼吸して心を落ち着かせる。俺はその要望に頷いて承諾した。彼の言う通りにした方がいい。奴は何年も人を殺し続けてきた殺人のプロだ。俺が敵う相手ではない。日が昇るまであと一時間だ。グレイドは警備隊を呼びに行った。後は俺次第だ。指定された場所へ向かう。そこは古い倉庫だった。扉を開け中に入るとナイフを研ぐあの男と、椅子に縛り付けられたエミがいた。奴は俺に気付くと、あの時見せた気味の悪い笑顔で笑いかけてきた。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

「東国」というのは日本のことです。まあ詳しくは描写してないので別に言わなくてもいいのですが。あの殺人鬼は殺しに快楽を感じている狂人。常識など通用しない気紛れな人間です。エミを攫ったのも、ジャックと殺し合うため。彼がジャックに何を求めいるのかは理解できませんが、酷く狂っていることは確かです。

感想や指摘など頂くと嬉しいです。

続きを楽しみにしてくれると更に嬉しいです。


これらに登場する人物、地域、団体は全てフィクションです。

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