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血濡れた恋  作者: つよちー
11/15

第十一話「想いは一つに」

【前回のあらすじ】

グレイドの誘いを受け、四人で夜中に飲み明かした。そこでジャックとエミはグレイドとアイリスの過去を知る。

翌朝、アイリスさんの部屋を訪ねた。

「どうしたの?ジャックくん」

「あの、相談したいことがあって」

「相談?お姉さんに任せなさい。何でも聞いてあげる」

彼女にお礼を言い部屋に入れさせてもらった。部屋はとても綺麗だった。

「それで相談って?」

質問をしながら彼女は俺に飲み物を出してくれた。俺はそれを一口飲んで話を始めた。

「エミに対してある思いを抱くんですけどそれが何なのか分かんなくて」

「ある思い?」

「ずっと側にいたいとか、離れたくない、守りたいっていう思いです」

そう答えると何故か彼女はニヤついた。

「へーそうなんだー」

そう言って彼女は俺の額を指で叩いた。

「そういうのは自分で気付きなさい」

少し痛む額を手で撫りながら首を傾げる。

「それだと相談しに来た意味が....」

「全く鈍感だね。まあ仕方ないか。今までそういうのと無関係に生きて来たからその概念が頭にないんだろうね」

「概念?」

「本読むんでしょ。いろんな本いっぱい読んで自分で気付くんだよ?何なら貸してあげるよ?」

一方的に話を進められ戸惑う。とにかく俺は彼女のその親切さに首を縦に振り、さっそくその本を受け取った。

「それ読めば分かるよ、きっと」

「わかりました」

俺は彼女に頭を下げて礼を言い部屋を出た。これを読めば分かる。俺は早く読みたい衝動に駆られ、少し急ぎ目に自分の部屋に戻った。扉を開け中に入ってすぐに閉めた。エミはまだベットで眠っている。一瞬彼女と一緒に読もうと思ったが、それだと意味がないのだろう。彼女を起こさないようにアイリスさんから貰った本を読み始めた。まずはアイリスさんが言っていた概念が何なのか、それからだ。

「ジャックさん....?」

突然声を掛けられ驚く。エミの方を見ると彼女はまだ寝ていた。寝言か。そう思い再び本を読もうとしたら彼女の寝言は続いた。

「私を置いていかないでください....私を見捨てないで....お願い....独りにしないで....もう寂しいのはいや....」

彼女の目には涙が流れていた。俺と別れるのはそんなに辛いことなのか。彼女の頰を伝う涙を拭い手を握った。

「俺はどこにも行かないよ。ずっとお前の側にいる。絶対独りにしないよ」

そう言うと彼女は心なしか笑ったように見えた。そして静かになった。微かに俺の彼女を握る手を握り返したように思えた。彼女は俺と同じことを感じているのか。離れたくない、そういう思いを互いに抱いている。早くこの気持ちの正体に気付こう。そう思い俺は読書を始めた。


ずっと側にいたい、離れたくない、そういう感情の正体は、読み進める内に段々と分かってきた。でもそれを何と呼ぶのかまだ分からない。この本を読めばきっと分かるはずだ。物語の内容など頭に入らず、ただひたすらページをめくってその気持ちの名前を探していた。

「ジャックさん、おはようございます」

エミに声を掛けられ我に返る。

「あぁ....おはよう」

「随分と本を早くめくってましたけど、ちゃんと読んでるんですか?」

彼女にそう言われやっと冷静になれた。言葉を探したってその本当の意味は理解できない。

「すまん、読んでない」

「もう、ちゃんと読みましょうよ」

そう言うと彼女は俺の隣に座った。

「せっかくですし一緒に読みましょ?」

彼女の顔を見ると可愛らしく笑った。その笑顔を見て胸がドキドキした。顔が熱い。

「そ、そうだな....」

彼女から目を逸らしてそう言った。彼女は本を開き読み始めた。しばらく読んでいると彼女は読むのを止めた。交代と思い続きを読もうとしたら

「ジャックさん....」

と名前を呼ばれた。

「な、なんだ?」

「これって....恋愛の小説ですか?」

彼女のその質問を理解出来なかった。恋愛、とは一体何なのだろう。

「恋愛....?アイリスさんから貰ったからよく分からないんだ」

この様子だと、彼女は恋愛について何か知っていそうだ。

「エミは知ってるか?恋愛ってやつについて」

そう質問すると彼女は何故か俺から顔を逸らした。そして突然本を閉じて立ち上がった。

「ど、どうした?」

「ちょっと出掛けてきます」

そう言うと彼女は颯爽と部屋から出て行った。一体どうしたのだろう。彼女の後を追おうと立ち上がり扉を開けると目の前にアイリスさんがいた。

「あ、アイリスさん....どうしたんですか」

「中に入ってもいい?」

「あ、はい....」

扉から一歩下がり彼女を部屋に入れる。扉を閉めて振り返ると彼女は座らずにただ立って俺と向き合っていた。

「それで、何の用ですか?」

エミのことが気になって気付かなかったが、アイリスさんは俺のことを睨んでいた。彼女の俺を睨みつける猫のような鋭い目付きに圧倒され少し後ずさりする。

「ジャックくんは本当に鈍感だね。こんなにも鈍感だとはさすがに思わなかったよ」

「えっと、鈍感ってどういうことですか」

訳が分からずそう訊くと彼女はさっきより一層俺を睨んで溜め息を吐いた。

「自分で気付けって言ったけど、こんなんじゃ一年でも無理だなー」

俺に背を向け、机の上に置いてあったあの小説を手に取った。

「これも無意味だったね。仕方ないからもう教えてあげるよ」

そう言うと俺の胸を手に持った本で押し当ててきた。

「貴方はエミちゃんのことが好き。そしてエミちゃんも貴方のことが好きなんだよ」

「え....っ?」

彼女が発した言葉を理解するのに時間が掛かった。俺はエミのことが好き。好きという言葉は知っていたが、まさか人に向かって言う場合はこんなにも大事な言葉になるなんて想像だにしなかった。

「貴方のその鈍感さ故にエミちゃんを傷付けた。大好きな人が恋愛という概念を知らないなんて思ってもいないからね」

「俺は....エミを傷付けたんですか」

「そうだよ。だから早く行きなさい。そして想いを伝えるの」

俺の胸に押し当てていた本で軽く叩いてきた。少しだけ勇気を貰ったような気がして気持ちが落ち着いた。

「ありがとうございます」

「礼なんて後にしてよ。早く行って」

俺は彼女の言う通りにし部屋を出て行った。俺は何てことをしてしまったんだ。今までにこの気持ち、そしてエミの気持ちに気付く機会は幾らでもあった。なのに、俺は本当に馬鹿だ。今までにそういう生き方をして来なかったから何て見苦しい言い訳だ。俺は店を飛び出て走り出した。エミに謝らないと。そしてやっと気付けた彼女へのこの想いをを伝えるんだ。町にあまり出掛けたことがなかったせいで何処に何があるのか全く把握出来ていない。エミをなかなか見つけられずにひたすら探し回っているとグレイドと鉢合わせた。

「ジャック、どうしたんだ?」

「エミを見ませんでしたか?」

「エミちゃんならさっきあっちの湖の方へ行ったぞ」

俺はそれを聞いて彼に礼を言い、その湖の方へ向かって走り出した。辺りは建物の影で薄暗く、空はとても夕陽で赤く染まり明るかった。湖に近付くに連れ、太陽の光は傾き地面を照らすようになっていく。やがて夕闇が濃くなり街灯が光を発し出した。足を止めずに走り続け、ついに湖に着いた。エミはすぐに見つかった。地平線に微かに顔を出している太陽が湖の水面に映り、それが彼女の存在を主張しているように感じた。呼吸を整え彼女に静かに近付く。彼女の間近に寄って気付く。彼女の啜り泣く声が聞こえてきた。微かに肩を震わせて泣いている。それを見て、俺は自分を今までにない程罵った。好きな女の子の気持ちに気付いてやれない自分の鈍感さを悔しく思った。涙を流す彼女を後ろからそっと抱き締めた。彼女の泣き声は止んだ。

「やっぱり、来てくれたんですね」

そう言うと彼女は抱き締める俺の腕をそっと触る。

「ごめん、エミ....本当にごめん....」

罪悪感が心に無数に募り謝らずにはいられなかった。

「謝らなくていいです。仕方がないですから」

「いや、仕方なくなんかない。お前の気持ち、俺の気持ちに気付く機会は幾らでもあった。なのに俺は....」

そこで言葉に詰まる。言い訳を言っているようにしか思えなかったからだ。

「私こそごめんなさい。早くジャックさんに気持ちを伝えれば良かったのに。何故か、怖かったんです」

そう言うと彼女は俺の手を掴み、そっと抱き締める俺の腕を解いた。そして後ろに振り返り、俺と見つめ合う。

「今なら、大丈夫ですよね....?」

照れ臭く笑う彼女が何を言おうとしているかは一目瞭然だった。俺は彼女の口を咄嗟に手で塞いだ。

「俺が言う....」

小さな声でそう彼女に呟き、俺は手を彼女の口から離した。たった二文字の言葉を彼女に告げる。簡単なことなのに....なかなか口に出ない。

「俺は....お前が....」

そう言ったところで彼女は俺にキスをした。突然の出来事で呆気に取られていたが、唇が暖かくなっていくのは分かった。そっと彼女の唇が離れていくと

「焦れったいですよ」

と言って照れ臭く笑った。

「大好きです、ジャックさん」

その言葉を聞いて俺の心に暖かい何かが募る。そして何故か涙が流れた。この涙は、そうか、俺は嬉しいんだ。彼女とやっと結ばれたことに。俺は涙を流す顔で微笑み

「俺も大好きだ」

と彼女に愛の言葉を告げた。彼女も涙を流し俺と同じように微笑んだ。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

彼女いない歴年齢の僕が書く恋愛小説を恋愛経験が豊富な人が読んだらどう思うのだろうといつも思っています。やっぱり気持ち悪いんですかね?恋愛経験ゼロの僕が書く小説は。知り合いからは「お前飢えてんな」と言われましたし。それでも僕は書きますけど。人からどう思われているのか気になりますけど本人が楽しんでることが一番だと思いますからね。

あ、皆さんお気付きかと思いますが、この小説は"タイトル詐欺"です(笑)全然血濡れてませんからね(笑)タイトルを決めるのって語彙力とセンスがいるので大変ですね。

感想や指摘など頂くと嬉しいです。

続きを楽しみにしてくれると更に嬉しいです。


これらに登場する人物、地域、団体は全てフィクションです。

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